党内きっての保守派として知られる自民党の高市早苗新総裁。今月末には米国のトランプ大統領の来日も調整されており、早々と外交手腕が問われることになる。
石破前総理に米国側から意外な高評価
9月23日(現地時間)の国連総会、ガラガラの会場で演説をした石破茂氏。すでに退陣が確定した首相の演説を聞く価値があると思っている国がほとんどいないのも当然だ。
本来であれば日本の新しい首相が新外交方針を打ち出すための最高の場を、去り行く首相の思い出作りに使うこと自体が国益に反する行為であり、ガラガラ現場写真を公開してしまう石破氏、そしてそれを許す日本政治の感覚は最後までズレ切っていたと言える。
日本の一部では石破氏のスピーチ内容を党派的に褒め称える人々もいたが、はたして聞いている人がほとんどいないスピーチに意味があるのかは分からない。
これまでのトランプ大統領との面談も含めて、各国首脳との会談時の身なり・振る舞いもおよそ礼を失するものが多く、一国の総理として非常に恥ずかしく思う点も多々あったが、石破氏にそのような羞恥の感覚があるのか、筆者は与り知るところではない。
しかし、そのような哀愁漂う終幕を迎えた石破氏が、米国側から意外に高く評価されていたとしたら、読者諸氏は驚くかもしれない。
筆者の米国共和党系の友人らから側聞すると、石破氏はそのスタート時の評価は非常に低いものだったようだ。当初の石破氏の印象は、トランプ大統領と関係が良かった安倍元総理の政敵という程度のものだったからだ。
その上、石破氏が米シンクタンクに寄稿したアジア版NATO構想などの荒唐無稽な話はそもそも相手にされず、しかも日本側も真剣に検討することもなく自民党内の検討事項となり、今となっては事実上、雲散霧消したに等しい状況になっている有様であった。
米国側からは石破政権は何がやりたいのかよく分からない政権であり、「日本は1年で首相が代わる元通りの国になった」という感想をたびたび耳にした。
「また日本人が来たよ。どうせ…」
ところが、その後、石破氏の実際の評価は実は地道に高まっていった。あまり期待されていなかった生徒のテストの成績が上がると、周囲の大人に非常に頑張った印象を与えるケースと同じだ。
まず、今年2月頭のトランプ大統領との会談では、日米貿易交渉について米国側の関心事項に見事にヒットしたようであった。
当時の日本側の関心事は日本製鉄によるUSスチールの買収問題であったようだ。筆者が同時期に米国の共和党系シンクタンク・支持団体を訪問すると、「また日本人が来たよ。どうせUSスチールの話だろ」という反応を受けたことからも分かる。
米国側の主な反応は、日本製鉄のUSスチール買収については明確には回答せず、日米関係は良いという建前のような話が多かったが、このことは同案件について最後はトランプ大統領の一存にかかっているという状況であったことを示唆する。
米国側にとってまさに「してやったり」
日本製鉄はトランプ政権から干されていたポンペオ元国務長官を顧問に採用する迷走ぶりであったため、この問題の顛末はどうなるものかと思っていたが、結果として日本製鉄のUSスチールへの巨額投資及び黄金株付与という形で落ち着いた。
9月にトランプ政権側は黄金株の権限を早速行使し始めており、イリノイ州の製鉄所の鉄鋼製品の生産中止計画を撤回させる介入を行ったと報じられている。
これによって、製鉄所の閉鎖が撤回され、約800人の社員の雇用が維持された。今後も事あるごとに米商務省が同社の経営に介入することが明白となり、事実上米国政府が経営権に強い形を持つことが確認された。
この経営介入に関する日本側の評価は不明であるが、米国側にとってまさに「してやったり」という取引であり、米国側の満足度は極めて高いものと言えよう。
日米貿易交渉の本丸については、その手堅さと大胆さが米国側に好印象を与えたようだ。
具体的には、EU、カナダ、インドのような国々とは違って、最初から「対抗関税」という選択肢を捨てたことがプラス評価されたようだ。
対抗関税のような反抗的な政策を世界有数の経済大国の日本が取らなかったことは、トランプ政権にとって他国との交渉を有利に進められるカードとなった。
日本とEUが協力して対抗関税を講じた場合、トランプ政権の貿易交渉の障害が極めて大きくなった可能性があり、石破政権の従米姿勢・忠臣ぶりは米国有利の流れを作ったと言えよう。
米国と無駄に戦うこともなく、粛々と合意に至る
筆者が米国側にヒアリングしたところ、米国と無駄に戦うこともなく、粛々と合意に至る道を作ったことについて、米国側には軽いサプライズがあったようだ。そして、この辺りから石破政権は実は賢い行動が取れるのではないか、という評価のきっかけが生まれたと示唆された。
また、アラスカ開発・パイプラインの建設投資は、エネルギー輸出国であることを売りにしているトランプ政権にはクリティカルに刺さる提案だった。
トランプ大統領が既に大統領令でアラスカのエネルギー資源開発等に取り組む意欲を示していたこと、連邦議会議員にとっても重要なアピールになること等、この巨額の投資案件は政治的にシンボリックな事案であった。
実際には同開発計画は採算性リスク・政治的リスクが高い案件であるが、2月の初会談後にアラスカで既にエネルギー開発に関するフォーラムが開催されるなど、日本側の政治的なパフォーマンスとしては米国側に前向きなイメージを与えている。
トランプ政権に対する忖度の極み
さらに、他国のモデルになったという意味では、日本からの米国への80兆円の投資の確約は重要である。この巨額の投資スキームは、ラトニック商務長官らの発言によると、日本側からの提案であったとされている。
同投資スキームはトランプ大統領の腹心であるミランFRB理事(前CEA委員長)が提示したマルアラーゴ合意の内容の変型版である。
マールアラーゴ合意とは、米国が同盟国に安全保障を提供する代わりに、利子ゼロの米国債を購入させるという構想である。この合意が公表された際、その実現性については若干疑問視されていたものだ。
石破政権がトランプ政権と結んだ米国への直接投資(そして、米国側が投資案件を選べる)という合意は、米国債という形式ではないものの、実質的にこのマールアラーゴ合意が実現されたことを意味する。
日本側から本当にこの提案が行われたとするなら、トランプ政権に対する忖度の極みであり、彼らが諸手をあげて喜んだことは確実である。
そして、防衛費増額も含めて日本側から米国側への安全保障面の協力については緩やかに進みつつある。日本の保守派から見ると生温いように見えるだろうが、両国の行政レベルで進められることについては粛々と進んでいる。
もちろん劇的な変化が表面的にも起きているわけではないが、それは日本の政治の常であるために特段落第しているわけでもない。
米国側から側聞すると、駐米日本大使館職員の中に優秀な人材が配置されており、米保守派の考え方を理解できる方がいるという話もあった。米国に配置されていた日本人スタッフも優秀であったようだ。(具体的なお名前は聞いたけれども本稿では控えておく)
トランプ政権に全面的に忖度したことで、石破政権はおよそ1年ほどの短い政権としては、当初の低い期待を裏切り、米国側の評価は高かったと言えるだろう。トランプ大統領は石破総理に関して常に一定の評価をするコメントを繰り返していたこともその証左だ。
石破総理の対米交渉が日本の国益に資するものであったかは将来において実証されていくことになるだろう。そして、トランプ大統領が安倍元総理との思い出のように、石破総理との思い出を語るかどうかは誰も知る由もない。
文/渡瀬裕哉

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