生放送で「大物女優やアイドル」のスキャンダルをイジる…“放送事故スレスレ”から笑いが生まれた──『オールスター感謝祭』と『後夜祭』
生放送で「大物女優やアイドル」のスキャンダルをイジる…“放送事故スレスレ”から笑いが生まれた──『オールスター感謝祭』と『後夜祭』

テレビはまだまだトガっている。その週に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。

テレビウォッチャー・ノブユキ氏が、生放送の「予測不能な面白さ」を語る。

「ある結果について、心の底からホッとしてます」

10月4日に放送された『オールスター感謝祭2025秋』(TBS)の事前番組枠でのこと。MCの今田耕司が「小泉孝太郎くん、何かしら言いたいことありますか?」と振ると、小泉は一瞬の間を置いてこう答えた。

「ある結果について、心の底からホッとしてます」。

この日は自民党総裁選の投開票日。弟・小泉進次郎が立候補し、決選投票の末に敗れた直後の放送だった。ニュースではなく“生の反応”で時事を感じる、まさに生放送の醍醐味を味わう瞬間だった。

そしてそのまま始まったのが、春と秋の恒例行事『オールスター感謝祭』。TBSが誇る5時間半の長丁場で、今回が通算68回目となる。スタジオには世界陸上東京大会で活躍したアスリートたちが登場し、秋の新ドラマ勢に負けない存在感を放った。

その中で最も印象的だったのは、芸能人が“天才卓球少女”のサーブを返して賞金100万円を狙う企画だ。ダイアン・津田篤宏の挑戦前、今田が「これ返せたら――?」と振りを入れる。直後、津田が「ゴイゴイスーです!」と決めギャグを放った——が、カメラがうまく津田に切り替わらず、声だけが空しく響く。

まるで放送事故のようなミス。しかし、これが番組を一変させた。今田はその後も何度も津田にギャグを振り、津田が叫ぶ――が、スイッチングは間に合わない。映らないたびにスタジオは爆笑、津田は声を荒らげ、現場は“生きたコント”と化した。

最後の総合成績発表。「ゴイゴイスーです!」にようやくカメラが追いついた——と思いきや、映ったのはクレーンカメラが撮った引きの津田の横顔。ミスから生まれた笑いが結局、5時間半の大番組の軸となったのだ。それを即興で構成に変えてしまう今田とスタッフの連携。そこにこそ、生放送の魔法があった。

『感謝祭』終了から約1時間後。スタジオをそのまま使い、お笑い芸人たちが2時間の延長戦に挑む——『オールスター後夜祭』の時間だ。
 

『後夜祭』に流れる名プロデューサー“藤井健太郎イズム”

こちらはバラエティファンにはおなじみ、『水曜日のダウンタウン』や『クイズ☆正解は一年後』(ともにTBS系)で演出・プロデューサーを務める鬼才・藤井健太郎の独断場。本家では廃止された予選落ちやボーナスクイズのほか、深夜ならではの毒気が全開になる。

たとえば、「時速165kmを出したことがないのは?」という問題。大谷翔平、佐々木朗希、伊良部秀輝、そしてなぜか広末涼子。「出したことがないのは伊良部」という正答よりも、野球選手の中に交通事故を起こした広末を並べるブラックユーモアに笑う。

お次は『ゴチになります!』のクビになった順番を当てるクイズ。国分太一、田中圭、江角マキコ、中島知子――の4人を並び替えるのだが、この4人について番組上では特に言及しない。それでも、“芸能スキャンダル史の記憶”を刺激するこの並びが、無言のブラックユーモアとして視聴者に突き刺さる。

オープニングでは、わざとスタッフが「本番です」と呼び込みを行なわず、最後まで席につかなかった芸人が即帰宅というイス取りゲームを開始。番組が始まったのに、まだ始まっていないような静寂。徐々にスタジオがざわつき、やがていつもの“番組の顔”になっていく過程そのものが、生放送のゾクゾクする瞬間だった。

生放送といえば、同じ週の平日朝、『ラヴィット!』(TBS系)でも異例の展開があった。MCをつとめる田村真子アナウンサーが夏休みを取り、代わりに日替わりで“ラヴィットファミリー”が進行を担当した。月曜から鶴崎修功、宮舘涼太(Snow Man)、小島凪紗(櫻坂46)、中村仁美——そして金曜日、オープニングに現れたのはまさかの和田アキ子だった。

『アッコにおまかせ!』の40周年記念特番のPRで、MCの和田と峰竜太が『ラヴィット』にゲスト出演することは告知されていたが、和田がMC席に立つ光景はさすがに予想外である。

“予定調和じゃない朝”『ラヴィット!』の代打MC

そして出てくるいなや、「悪いけど(『ラヴィット!』を)見てないのよ」と、早朝のスタジオにアッコ節が炸裂。その後も、スタッフから当日朝の打ち合わせの場でMCを打診されたことを明かし「誰に言うてんねん」と愚痴をこぼす。

さらにパネラー席を見渡し「みなさんを紹介するんでしょう? 生意気な…」と大御所らしい毒舌をかました。と言いつつ、土曜早朝に放送されている『夜明けのラヴィット!』でも、和田は代打MCとして登場。和田の気前のよさ、そしてそんな大物にぶっつけで依頼するスタッフの度胸を、つい褒めたくなった。

『感謝祭』も、『後夜祭』も、『ラヴィット!』も。どれも“予定通りではないこと”が面白さの中心にある。ニュースより速く、台本より自由で、編集よりも嘘がない。テレビの前で日本中が、同じ話題、同じ時間、同じ呼吸を共有する。その瞬間にしか起きない笑いと空気の共有こそ、テレビの生放送の強さだ。

文/ノブユキ

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