子13人「家族マネジメントがすごい家」の秘密……漆山家の母が明かす“怒らない・任せる・見守る”子育ての極意
子13人「家族マネジメントがすごい家」の秘密……漆山家の母が明かす“怒らない・任せる・見守る”子育ての極意

テレビの密着取材からYouTubeなど、さまざまなメディアで注目されている15人家族の漆山家。13人の子どもを育てながら、家庭を仕組みで回す“スーパーマネジメント母ちゃん”は、どのようにして笑顔あふれる大家族をつくり上げてきたのか? その秘密は工夫された子育て術にあった。

(前後編の後編) 

15人大家族、漆山家の子育て術

フジテレビの密着取材でもおなじみ、15人大家族、漆山家の母・佳月さん。著書『15人大家族 うるしやま家のママ流 笑顔がたえない36の家訓』では、子育てで強く怒ったり叱ったことがないと書かれている。

これだけたくさんの子どもがいたら、怒りたくなる場面も多そうだが、そこには佳月さん流の工夫があった。

佳月さん(以下略)「子どもが増えていくたびに怒り方とか注意の仕方を学ぶようになりました。長男の時はよく怒っていましたから(笑)。あとはできるだけ子どもが自ら考えて取り組んでいることには、なるべく口出しをしないようにしています。

子どもが失敗や不自由なく親がなんでも手をかけるより、自分でなんでもやれるようになったほうが私は良いと思っています。本人たちが物事を考えて行動してみる。それを見守ることも大事なことかなって」

家事や掃除、お手伝いなど子どもたちが自ら進んで取り組む漆山家。佳月さんの「家族マネジメントがすごい」と評判だが、その仕組みを作るのも上手だ。その一つに、チェック表を作って習慣化させるというものがある。

「いちいち言いたくないので、自分のやるべきことは自分でやってもらうようにしています。毎日やることを1か月分のリストにして、学校から帰ってきたら自分でチェックする。



たとえば洗濯ものを洗濯機に入れるとか、靴を脱いだらそろえるとか。それが寝るまでにできてなかったら、わたしが片付けてバツをつけます。それをひと月ごとに集計してお小遣いを決めるのが我が家のシステム。自分で決めたことをやらないと、決まったお小遣いから1項目につき10円ずつ減ります」

漆山家ではまるでキャプテンのような立ち位置の佳月さん。一方で、思春期の子どもたちからの反発もありそうだが…。

「授業参観とか体育祭とか子どもから『来るな』って言われるお母さんもいるみたいですけど、うちではそういったことは今までないです。クソババアとか言われたことも一度もないです。

どれだけ忙しい日でも、子ども達全員それぞれと時間をつくるようにしていて、どんなささいな悩み事も受け入れて聞くようにしています。自分がその歳の頃の事を思い出しながら、子どもたちとなるべく同じ目線で話すようにしているので、恋愛の話から仕事の話までいろいろ相談してくれますし、私も子どもたちによく相談しています」

フジテレビで10年弱密着取材を受けているが、撮影班からも子どもたちが思春期でも悪態をつかず優しくて礼儀正しい。そして兄妹、家族の仲の良さをすごく言われるそうだ。その理由は、「親の働く姿を小さい頃から見ているからかもしれない」と佳月さんは話す。

「子どもたちはお店にいることが多いので、私達が接客業をしている姿を間近で見てきています。

親が働く姿を常に見ているので、自分たちで考え行動する力や、まわりの方への感謝や礼儀が自然と身についてるのだと思います」

やりたいことを見つけたら取り組んでほしい

子は親の背中を見て学ぶ――。だからこそ、一人の女性として自分なりに一生懸命でありたい。そんな彼女が忙しく働くのには理由がある。それは子どもたちがなにか挑戦したいと思った時に、金銭面であきらめてほしくないと願うからだ。

「子どもの頃から本当にやりたいことを見つけられるって少ないと思うから、いろんなことに挑戦してほしいと思っています。やりたいと思ったことは取り組んでみてほしいし、そこに投資するお金は無駄じゃない。経験しないと見られない景色や想いは絶対にあるから。

今も子どもたち7人のダンスに週6日通っていますが、ダンスをやりたいと思った気持ちを全力で応援したいし、見守っていきたいです」

子どもたちの日々の努力が実り、漆山家から2人も日本発・世界初のプロダンスリーグ『SD.LEAGUE(SDリーグ)』にスタジオ代表で選出され、賞を受賞するという結果を残した。そのことを謙遜しながらも、柔らかな表情で嬉しそうに語る。

やりたいことはなるべくサポートしたい。ただし、自分の頭でよく考えることが大切だと言う。現在は長男の葵くんも同じ店舗で一緒に働いているが、子どもにはいち早く”自立してほしい”と考えているそうだ。

「よくお客さんから『息子さんと一緒に働けていいですね』と言われますが、私は早く独立して自分のお店を持ってほしいので、常に本人にも伝えています。

経験しないとわからないことはたくさんあると思っていますし、それは葵のためでもあると心から思っています。

いつかは自分のお店を子どもの代に渡すケースもあると思いますが、今経営してる美容室は、私たちの夢を実現した場所であると同時に、これからも新しい夢を叶えていく場所でもあります。なので、葵には自分の力で自分のお店を持つ夢を叶えてほしいです」

「子育ては親育て」

最後に、佳月さんにとって子育てとはなにかと聞いた。

「13人の子育てをしても、ひとりひとり持って生まれた性格が違う。ひとりとして同じ子育てはなくて、親が子どもを育ててるというよりは、子どもに親が育ててもらってる感覚が大きいです。

子どもが新しいことを始めるたびに、わたし自身も新しい経験をさせてもらってる。自分だけでは見ることのできない景色を見せてもらっているのは、全部子ども達のおかげです」

どんな関係性であっても礼儀と気遣いだけは忘れない。自分で考える力を身につける。やったことには責任をもち、決めたことはやりきる…。全力でサポートする一方で、子どもたちのことを愛情深く見守る佳月さん。その根底には「子育ては親育て」という、子ども達への感謝とリスペクトがあった。

(前編はこちら)

取材・文/桃沢もちこ

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