「まだ既婚者だった…」“独身偽装男”が増殖中…被害女性が探偵を雇って知った彼のウソと地獄の結末「私は出産を一人で決意しました」もらえた慰謝料の額
「まだ既婚者だった…」“独身偽装男”が増殖中…被害女性が探偵を雇って知った彼のウソと地獄の結末「私は出産を一人で決意しました」もらえた慰謝料の額

SNSで出会った既婚者の男性(51)から独身と偽られたまま交際していた仙台市の女性(50)が男性に275万円の損害賠償を求める訴えを起こし、仙台地裁は9月下旬の判決で男性に約100万円の支払いを命じた。この事例の他にも、最近、相手が独身だと思って交際していたが、だんだんと違和感が芽生え始め、じつは既婚者だったことが発覚するケース(独身偽装)が増えているという。

実際に被害にあった女性の体験を聞いた。 

「彼の戸籍を取ってみたら、籍は抜けていなかったんです」

笹本優未さん(仮名・40歳)は、2015年、転職先で出会った彼と、ごくふつうに距離を縮めたという。

「入社したとき、相手は半年前から在籍していて、同じ歳だったこともあって、すぐに打ち解けたんです。終業後に飲みに行ったり、仕事の愚痴を言い合ったり。自然に仲よくなっていきました。当時、彼からは奥さんとうまくいかなくて…と相談をよく受けており相手からの好意も何となく感じていましたが、既婚者と知っていたため彼とは一定の距離を保っていました。

『離婚が成立したので結婚を前提に交際してほしい』と言われた時も、「私は絶対に不倫はしたくない」と伝えた上で離婚済であることを再三確認し、養育費の額など離婚条件も聞き、悩みに悩んだ結果、交際を決めました」

ところが、交際が進むにつれて違和感が積み重なっていく。そして妊娠を告げた後、彼の態度は一変した。

「『親は離婚に反対していたからまだ話せない』『前妻との子どもが不安定だから今は刺激したくない』と、話をはぐらかすばかりで……。その頃から、連絡も急に取りづらくなったんです」

不信感を抱き、興信所に依頼した笹本さんは、調査の結果、衝撃の事実が突きつけられた。

「彼は既婚者だったのです。もう、頭が真っ白になりました。何度も『離婚したんだよね?』と確認して『ちゃんと離婚した』と言われていたのに、周囲にも『離婚した』と本人が言っていたのに、すべて嘘だったんです。

怒りを抑えきれず、彼の家に突撃したところ、奥さんらしき女性が出てきて、『離婚したって聞いてますけど、本当なんですか?』と問い詰めたら、奥さんが『帰ってください、警察呼びますよ!』って」

修羅場の末、彼とその両親を交えた話し合いが行なわれた。

「彼は土下座して謝罪してきました。震えながらお茶をこぼすくらい動揺していて……。でも、その後も話し合いは平行線で、私は一人で子どもを産んで育てていく決意をしました」

笹本さんは弁護士を立て、慰謝料と養育費を請求。最初は「50万円で」とふざけた提案をされたが、彼が独身と嘘をついていた証拠を揃えて裁判所に提出し、粘り強い交渉で条件を引き上げた。

「結果、慰謝料220万円と出産費用の一部を受け取ることができました。養育費も強制執行条項をつけて調停を成立させ、今もきちんと支払われています。産後1か月だけ実家に頼って、その後は子どもと二人暮らし。児童館に通ったり、副業を始めたり、とにかく“閉じこもらない”を意識しましたね。怒りだけでは前に進めないから……。

父親が居なくてもこの子と二人で絶対に幸せになる、そう決めました。最初は裏切った彼へ怒りで苦しかったけれど、その気持ちはやがて、『結果的に大きな嘘をつかれたけど、私は本当に全力で彼を好きだった。

その想いに嘘も後悔もない』と怒りを手放して気持ちを昇華することができました」

最後に、同じ境遇にある女性たちにメッセージを送る。

「泣き寝入りだけはしないでほしい。慰謝料、養育費、認知――取れるお金は必ず取ってほしいです。専門家を頼って、証拠をそろえて動けば、必ず道は開けます。そして、たとえ相手が何もくれなくても、自分の人生は自分のもので自分の覚悟次第。子どもと自分の幸せを最優先に、強く賢く生きてほしいと思います」

独身偽装はマッチングアプリが流行り始めた時期と重なるように増えてきた

「法律事務所Z」の溝口矢弁護士(東京弁護士会)によると、独身を名乗る既婚男性に騙される女性からの相談は年々増加傾向にあるという。

「マッチングアプリが流行り始めた時期と重なるように増えてきた印象です。それも、単に女性に独身を偽って接触するだけではなく、女性に婚約指輪をプレゼントしたり、両親に挨拶をしたり、不妊治療にまで付き合う事例も少なくありません。

おそらく、そこに至るまでに『実は妻がいて……』と言い出せない、中途半端で無責任な男たちが招いた結果だと捉えています」

こうしたトラブルに巻き込まれた場合、争点のひとつになるのは男性の妻から、不貞関係による慰謝料請求をされるかどうかだという。

「女性側が、相手が既婚者であることを本当に知らなかったのか、あるいは男性側の家に入れない、連絡のとれない時間帯があるといった怪しげな行動を察していたのに真実を問い詰めようとしなかったのか、などが問題となります。

要は、女性側の身の潔白。相談に来ていただいた女性には、LINEで『独身だ』と言わせるなど、騙していたとわかる強い証拠が握れれば、十分に戦えます。

ただ、弁護士に相談する前に、男性の妻から詰められて謝罪や慰謝料を払ってしまうと、不貞を認めてしまうことになるため注意が必要です」

未婚だと偽った男性への法的処置はどうなるのか。

「関係性の深さにもよります。たとえば結婚を前提とした真剣交際だと思わされていた場合、婚約破棄の事例と同等の扱いになるため、損害賠償を請求することができる。その相場は大きいもので数百万円程度です。

また、示談で終わるケースも多いものの、いっぽうで証拠が出そろっているのに男性側の往生際が悪く示談ではまとまらないというケースも一定数あります。『あなたのしていることは偽装ですよ』と指摘しても、『そんな犯罪者呼ばわりするな! 俺だって苦しかった』と謎の訴えをする方が多いですね」

独身と偽る男性の意図はわかりかねるが、被害女性が少しでも減ることを願ってやまない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/PhotoAC

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