2025年10月10日、政界に激震が走った公明党の連立離脱。1999年の小渕恵三政権以来、26年間にわたって日本の政治の中枢を支えてきた自公連立の、あまりにも唐突な幕切れであった。
「本当に、去年から追い詰められていました」
インターネット上の言論空間、特にSNSでは、この離脱劇を巡って様々な意見が飛び交った。自民党支持層からは「足枷が外れた」「高市総裁が本来の政策を推し進められる」といった歓迎の声が上がる一方、公明党に対しては厳しい批判も少なくなかった。
しかし、こうした喧騒の裏側で、当事者である公明党とその支持母体・創価学会の内部は意外にも穏やかで、むしろ安堵と歓迎の空気に包まれていた。お通夜のような雰囲気に包まれた自民党とは、実に対照的な光景が広がっていたのである。
本稿では、関係者の証言や信頼できる報道、データを組み合わせ、この歴史的な政治決断の深層に迫りたい。表面的なイデオロギー対立の物語の裏で、何が起きていたのか。そこには、組織の存亡をかけた生々しい危機感と、原点回帰への強い意志があった。
「本当に、去年から追い詰められていました」
ある創価学会幹部は、自公連立離脱の話題に触れた際、静かに、しかし切迫した口調でそう漏らした。これは、決して公には語られることのない、偽らざる本音であった。
今回の決断は、突発的な感情論によるものではない。
「今回の事態、これ以上自民党と一緒に進むことは、もはや我々にとって自殺行為に等しいのです。自民党も選挙で議席を減らし、大きな打撃を受けてきました。しかし、我々が受けたダメージは、それとは比較にならないほど深刻で、質が全く異なります。
それは単なる選挙の敗北ではなく、党の存在意義が失われることを意味します。まさに、自民党以上に、我々の組織が根底から『潰れてしまう』という強い危機感がありました。これは誇張ではなく、本当に現実的な、存亡の危機なのです」
裏金自民候補も我慢して応援してきた
この言葉は、連立継続が公明党・創価学会にとって、もはや利益ではなく致命的なリスクになっていた現実を物語っている。その矛盾が臨界点に達したのが、自民党派閥をめぐる「政治とカネ」の問題である。
公明党は、党の綱領にも「クリーンな政治」を掲げる。その支持者たちは、政治の腐敗に対して極めて厳しい目を持つ。
にもかかわらず、連立パートナーである自民党の裏金問題が次々と発覚し、その対応も後手に回る中で、最前線で有権者と向き合う学会員や地方議員は、筆舌に尽くしがたい苦境に立たされていた。
AERAの取材(10月11日)に対し、ある学会幹部は<「選挙のときには、嫌だなと思う自民党候補も我慢して応援してきたんです。自民党の裏金議員の選挙も手伝わなくちゃいけなかった」「私たちまで『何で裏金議員を支援するのか』と絡まれるんですよ」>と、現場の疲弊を吐露している。
党勢の低迷も、危機感を加速させた。2022年の参院選比例票は618万票だったが、直近の選挙では521万票へと約100万票も減少した。
これは単なる数字の変動ではない。組織の生命線である集票力の低下であり、党の存続そのものを脅かす危険信号であった。故・池田大作名誉会長という精神的支柱を失った後の組織にとって、自民党のスキャンダルに引きずられる形で支持を失い続ける状況は、「じり貧」以外の何物でもなかったのだ。
「潰れてしまう」という言葉には、こうした背景からくる、現実的な恐怖が凝縮されていた。
「だから、この結果見て、みんなほっとしているよ」
こうした鬱屈した空気を一変させたのが、「連立離脱」という決断であった。実際に、連立離脱直後の2025年10月12日に行われた地方選挙では、その効果が表れた。
例えば長野県安曇野市議選では、公明党候補が前回を上回る得票数で当選。三重県志摩市議選でも、候補者2位で当選を果たし、絶対得票率が上昇傾向だ。
先の幹部は、内部の空気をこう代弁する。
「だから、この結果見て、みんなほっとしているよ、きっと」
これは何を意味するのか。自民党との連携に嫌気がさし、投票所から足が遠のいていた、あるいは公明党から離れていた支持層が、「私たちの公明党」が戻ってきたと感じ、再び積極的に支援する姿勢に転じた可能性を示唆している。
自民党は50議席以上を失う可能性
SNS上では批判に晒される一方で、公明党の足元である地方組織では、確実に士気が上がり、それが結果となって表れ始めていたのだ。
一方で、連立の相手方であった自民党、そして高市早苗総裁は、厳しい現実に直面している。高市氏の掲げる「愛国」や保守理念にかける情熱は、深く敬意を表すべきものだ。しかし、政治は理念だけで動くものではない。
政策を実現するためには、異なる意見を持つ人々との対話と調整、そして信頼関係という名のパイプが不可欠である。今回の離脱劇は、高市氏とその周辺に、この最も基本的な政治技術が欠落していたことを冷徹に暴き出した。
連立離脱による自民党のダメージは計り知れない。次期衆院選では、公明党の協力票(小選挙区で1万~2万5000票とされる)を失うことで、50議席以上を失う可能性があると試算されている。
特に、公明党の組織力が強い都市部では、壊滅的な影響も懸念される。高市氏の理念がどれほど高潔なものであっても、それを実現するための議席という土台そのものが崩れ去ろうとしている。
高市氏の路線を真っ直ぐ進めば、党内リベラル派からの抵抗が強まり、変節すれば保守層から見放される。理念と現実の狭間で、自民党は出口のない迷路に迷い込んだかのようだ。
公明党も間違いなく国政では議席を減らす
理念を掲げることは容易いが、それを現実の政治の中で血肉化させる作業は、泥臭く、困難を極める。
自公連立の解消は、巷で言われるような「熟年離婚」に喩えられるかもしれない。長年の同居生活で溜まった不満が爆発し、互いの価値観の違いが浮き彫りになった末の決別。
しかし、重要なのはその先である。公明党にとって、この離脱は後ろ向きな決別ではなく、未来に向けた新たなスタートを意味する。
自民党という大きな存在に遠慮することなく、独自の政策を打ち出し、是々非々の立場で他の野党とも連携する道が開かれた。それは、党の原点に立ち返り、国民の中に深く根を張る政党へと生まれ変わるための、またとない好機となるだろう。
もちろん、選挙協力を失うことによる議席減のリスク、というか間違いなく国政では議席を減らすだろう。斉藤代表も「(自身の)落選覚悟の決断」と語っているように、その道は決して平坦ではない。しかし、組織が生き残るためには、時に痛みを伴う外科手術が必要となる。
一つの時代が、確かに終わった。しかし、それは新たな時代の始まりでもある。
公明党の連立離脱は、イデオロギーの対立という単純な構図では語れない、組織の存亡をかけた指導者たちの苦悩と決断の物語なのである。そして、その決断が日本の政治にどのような変化をもたらすのか、我々は固唾をのんで見守る必要がある。
これから自民党と公明党はどんな運命を歩むことになるのだろうか。目が離せない。
文/小倉健一

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