「もののけ姫」なぜいまIMAXとなり映画館で再上映? 配給会社東宝が明かすスタジオジブリへの想いとその背景「もののけ姫は特別な作品」
「もののけ姫」なぜいまIMAXとなり映画館で再上映? 配給会社東宝が明かすスタジオジブリへの想いとその背景「もののけ姫は特別な作品」

スタジオジブリを代表するアニメーション作品『もののけ姫』が、2025年10月24日より4Kデジタルリマスター版としてIMAX上映される。オリジナル版の初公開は1997年7月12日。

28年以上の歳月を経て、なぜ今、4Kデジタルリマスター版が上映されるに至ったのか。配給を担当する東宝の執行役員 映画本部 映画営業・宣伝担当である吉田充孝氏に話を聞いた。

「もののけ姫」なぜいま映画館で?

宮崎駿監督(※)が原作・脚本・監督を務め、1997年に公開されたスタジオジブリの長編アニメーション作品『もののけ姫』。当時の興行収入は193億円(興行通信社調べ)で、それまでトップだった『E.T.』を超えて日本歴代興行収入第1位の記録を樹立した。(※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記)

その後、コロナ禍の2020年に映画館で再上映され、興行収入は201.8億円に達している。そしてこのたび、豊かな色彩表現や臨場感あふれるサラウンドシステムを使ったIMAXで上映されることになった。

日本を代表するスタジオジブリの作品がなぜ今になって、IMAX上映されることになったのか。吉田氏は「今回の4Kデジタルリマスター版のIMAX上映は、北米での公開を契機として始動したプロジェクト」と話す。

北米での配給を担当したGKIDSは、東宝のグループ会社。GKIDSがスタジオジブリに対して、強い働きかけを行ったのが企画のスタートだった。

「スタジオジブリ側も、『もののけ姫』に限らず、フィルムで制作された過去の作品をアーカイブの観点からデジタル化する必要性があると感じていらっしゃっていたと聞いています。そうした背景のもと、GKIDSからの提案を受けて、取り組む価値があると判断されたようです」(以下、吉田氏)

スタジオジブリ作品では、2023年公開『君たちはどう生きるか』でIMAX版が同時公開されたが、旧作品におけるIMAX版公開は『もののけ姫』が初めて。『もののけ姫』が選定された理由について、吉田氏は「技術的なことはあるとは思いますし、あくまで推測の域を出ませんが」と前置きした上で、次のように語った。



「なぜ数ある作品の中から『もののけ姫』が選ばれたのか、正確な理由は伺っておりません。ただ、2020年のコロナ禍において、スタジオジブリ作品4本を再上映したのですが、私どもがスタジオジブリを訪問し再上映のお願いをした際に、『もののけ姫』は特別な作品とおっしゃっていました。200億円近い興行収入を記録し、スタジオジブリが大きく飛躍する契機となった作品であると。今回のIMAX版も、同様の意味合いで重要視されたのではないかと思います」

北米では、2025年3月26日(現地時間)よりIMAXシアター約350館にて公開。約350スクリーンでの上映にもかかわらず、週末3日間で約380万ドルの興行収入を記録し、同週末のランキングで6位に入った(「Box Office Mojo」調べ)。

「IMAX版は1週間限定で上映され、2週目以降は通常のシアターにて4K版が上映されましたが、10億円近い興行収入を達成する大ヒットとなりました。改めて、スタジオジブリ作品および『もののけ姫』の持つ力を認識しました」

今だからこそ「映画館で」

日本での上映は、北米での成功を受け、東宝がスタジオジブリに相談を持ちかけたことで実現。今回のIMAX上映に関して、吉田氏は「映画館での鑑賞体験を提供することが何より重要」と強調する。

テレビなどでジブリ作品を目にする機会は多いと思いますが、映画館での鑑賞体験は全く異なるものだと思っています。これは2020年の再上映時にも実感したことでした。

コロナ禍により映画館が休業を余儀なくされ、営業再開後も新作映画がなく、客足が戻らない状況が続きました。そんな中、私どもは藁にもすがる思いで、スタジオジブリに再上映の相談を持ちかけました。



上映して気づいたのは、時間が経過したことで、スタジオジブリの過去作品を映画館で鑑賞したことのない層が増えていたこと。また、過去に鑑賞した方々も含め、映画館で『再び観たい』という需要が非常に高かったことです。以降、何らかの機会があれば映画館での上映を実現したいという思いを持ち続けていました。

今回の4K、そしてIMAXという映像のアップデートを最も体感できる場は映画館。その価値をぜひ多くの方に感じていただきたいです」

 近年、過去の名作を4Kデジタルリマスター版として再上映する動きが続いている。東宝では、今年2月に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版』および『イノセンス 4Kリマスター版』を上映した。吉田氏は、これらの動きも2020年のジブリ作品再上映が契機となったと語る。

「これだと思える作品があれば、積極的に取り組んでいきたいという意欲を持っています。スタジオジブリ作品についても、他作品で同様の取り組みがある場合には、ぜひご相談させていただきたいです。

ちなみに昨日、北米でGKIDSの首脳陣と面会し、『他のジブリ作品はどうなっているの?』と尋ねたところ、詳細は教えてもらえませんでした(笑)」

「#一生に一度は、映画館でジブリを。」というコンセプトで2020年に再上映されたジブリ作品。あれから5年の歳月を経て最先端の技術で蘇る。吉田氏は取材の最後に「私もやっぱり映画館でジブリを観たい」と笑顔で語っていた――。

「もののけ姫」4Kデジタルリマスター
原作・脚本・監督:宮崎 駿
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:久石 譲
主題歌:米良美一
声の出演:松田洋治石田ゆり子田中裕子 ⋅ 小林 薫 ⋅ 西村雅彦上條恒彦美輪明宏 ⋅ 森 光子 ⋅ 森繁久彌

(C) 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

取材・文/羽田健治

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