10月に公表された「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2024」報告書によると、日本の教員の勤務時間は小学校52.1時間、中学校55.1時間(1週間あたり)で、参加国中最長だった。なかでも特に激務と言われているのが「副校長・教頭」だ。
「副校長・教頭の過労死につながる恐れもある」
OECDで加盟国等55か国・地域の中で勤務時間が最長を記録した日本の学校教員。校長の補佐役である「副校長・教頭」は特に激務と言われている。全国公立学校教頭会の調査によれば、深刻な教員不足のなかで副校長・教頭が担任の代替となるケースも多く、1日の勤務時間が11時間を超える割合が75%を超えているという。
都内の公立小学校でPTA会長を務める40代の父親は、その多忙ぶりを目の当たりにしていると話す。
「うちの学校の副校長を見ていて、本当に大変そうだなと思います。モンペ(モンスターペアレント)の保護者対応や地域との交流に加えて、教員が休んだときに代理で授業を行なうのも、外部の業者さんが来たときも副校長が対応しています」
学校教育法では、副校長の職務は「校長を助け、命を受けて校務をつかさどる」、教頭は「校長(副校長を置く小学校にあっては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる」とされている。
全国公立学校教頭会の稲積会長と井部事務局長は、副校長と教頭について次のように説明する。
「教頭は『原則必置』、副校長は『任意設置』とされています。学校によっては校長、副校長、教頭がいるところもあり、自治体によっては教頭職をなくして副校長と呼び替えているところもあります」
その業務は「教育委員会からの調査の対応」「対外的な窓口業務」「児童生徒の対応」など多岐にわたり、「管理的な業務が目に見えて大変なのか、『副校長・教頭になりたくない』という人はいます」と稲積会長らは話す。
校長との連携が学校経営のカギ
副校長・教頭の多忙化の実態について、神奈川県の公立小学校で教頭と校長を務めた経験があるという60代の男性は次のように話す。
「校長が積極的にいろいろな職務を担当する場合もあれば、教頭にほとんど任せてしまう場合もあります。10校あれば10通りの運営・補佐の仕方がありますが、あまりに教頭に仕事が集中するときつくなります」
この男性は、教育委員会から来る調査の対応や保護者からのクレーム対応などに加えて、「交通安全についても、勤務時間前に管理職が横断歩道に立つことも多かった」と話す。
千葉県の公立中学校で教頭を務める40代の男性は次のように話す。
「教頭は部活の大会の応援に行くので、土日も稼働します。加えて地域のお祭りなどは基本的にすべて回ります。さらに、そこで生徒が参加するような場合は、参加希望者を募ったり、当日の早朝に点呼をとったりするのも教頭の業務です。『働き方改革』で、逆にこういう業務をほかの教員に振れなくなってしまったんです」
精神疾患で休職する教員が過去最多となったが、副校長・教頭も例外ではないという。稲積会長によれば、休職している副校長・教頭もかなりいるそうだ。
「休職の理由としては、小さな範囲だと『仕事が終わらない』というものです。あとは人間関係です。職員同士の関係が悪くなると、その間に立つのは副校長・教頭なので」
前出の60代の男性は、教頭時代に校長からパワハラめいた言動を受けたこともあると打ち明ける。
「地域と校長の折り合いが悪く、板挟みになったことや、指導・監督が難しい職員に対して自分が対応することがあったのですが、なかなか改善が見られないばかりか反抗的な態度をとられることもありました。その際、校長から教頭の立場を理解しアドバイスをいただけることもあれば、厳しい言葉を言われることもあり、『自分のことを思ってくれている』とわかっていてもつらいときがありました」
「『一極集中』の構造を変える手段が必要」
学校現場では目下「働き方改革」が進められているが、稲積会長らによれば「管理職は余計に仕事が増えた」のが実態だという。
そうした現状を踏まえ、文科省主導のもとで昨年から始まったのが、副校長・教頭の業務を専門的に支援する『副校長・教頭マネジメント支援員』の配置だ。
しかし、簡単には進まないようだ。
「先行実施している東京都はかなり配置が進んでいるものの、全国的にはまだほとんど進んでいません。必要な予算の3分の2を自治体が負担するのですが、自治体によっては予算がなかなか回ってこないという実情があります」
書類仕事などのDX(デジタルトランスフォーメーション)化も進み始めているが、「もともとの書類の量が膨大」だったと稲積会長らは話す。
「以前は学校に1ヶ月で300通以上の文書が来ていました。それが減ったところや、自治体によってはメールに変わったところもありますが、いまだに紙の文書のところもあります」
業務の考え方を明確化し、役割分担や適正化を推進する目的で文科省から示された「学校・教師が担う業務に係る3分類」では、事務職員や専門スタッフらの活用を進める方針だ。
稲積会長らは「今後、専門職が増えていくことで、副校長・教頭が本来の学校業務に専念できるようになるのでは」と前置きしたうえで、「構造的に変える手段」が必要だと話す。
「そもそも、一般的な会社や行政組織だと一人の管理職がマネジメントできる人数はせいぜい10人程度ではないでしょうか。それが学校の場合だと、一人で数十人の職員、数百人の児童生徒を見ますので、構造的にどうしても一極集中になってしまいます。その構造を変える手段があれば、と考えています」
副校長・教頭の「やりがい」とは?
国や行政は動いているものの、まだ十分に改善しているとはいえない副校長・教頭の勤務実態。そうした仕事に「やりがい」は感じるのだろうか? 稲積会長らは次のように話す。
「当会の調査では、『副校長・教頭としてやりがいを感じる職務』という設問に対して、『教職員の育成』という回答が最も多い結果となりました。副校長・教頭は『職員室の担任』とも言われますが、やはり職員の成長にやりがいを感じる副校長・教頭が多いようです。
次いで『職場の人間関係』、『児童・生徒指導上の課題への対応』です。
前出の千葉の現役教頭は、「忙しいけれども、面白さもある」という。
「副校長・教頭の仕事は忙しいですが、逆に言うと学校のことをさばけます。職員に指示がどんどん出せて、それでみんなが動くので、そういった点では面白いですね。すぐに結果が見えるので、そこはやりがいになります」
前出の60代男性も「教頭が元気な職場は活気がある」と話す。
「教頭は大変ですがやりがいがあり、職員の要として学校を動かしているという実感があります。教頭が元気な職場は活気があり、目的を持って教育活動を行なっていく集団になります。教頭先生は、若い職員にとって、自らの将来の姿を重ねる存在であると思います」
副校長・教頭は校長のイスに座るうえでの“通過点”ではないようだ。日本の未来を担う教育現場に活気を取り戻すべく、改革がさらに進んでいくことを期待したい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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