高市早苗新首相とトランプ大統領の初会談が、日本でまもなく開かれる。トランプ大統領がどのような要求を突きつけるのかは予測が難しいが、これまでのディールの常套手段を踏まえれば、米側が新たな貿易交渉や防衛負担、さらには「価値観テスト」にも踏み込んでくる可能性は高い。
トランプ大統領から更なる貿易交渉が求められる可能性
高市新首相とトランプ大統領の初会談がまもなく日本で開催される。トランプ大統領が初見の高市首相に何を求めるかを予測することは非常に難しい。しかし、本稿ではあえてトランプ大統領が日本に求める内容を幾つか想定して提示した。
第一に考えるべきは、更なる貿易交渉である。
トランプ大統領は前任の石破首相との間で巨額の貿易交渉を取りまとめた。そのため、現状の貿易交渉内容について着実な履行が求められることは当然だ。しかし、その上で、日本側はトランプ大統領から更なる貿易交渉が求められる可能性を認識すべきだ。
日本人の多くは前回の貿易交渉がまとまったことで一安心しているかもしれない。それどころか、トランプ大統領との間で結んだ貿易交渉の一部を見直せると思っているフシすらある。しかし、これは商売が何たるかを知らず、同じポジションに数年しかいない無責任な官僚の発想だ。
自らが動く時には必ず新たな仕掛けを行う人物
トランプ大統領はディールメーカーである。そして、自らが動く時には必ず新たな仕掛けを行う人物だ。当然であるが、トランプ大統領は新首相との会談の成果を強調するために新たな貿易交渉内容を提示することになるだろう。
大統領が自国の利益を追求し続けることは、社長が自社の利益を拡大し続けることと同じだ。一度合意が得られた貿易内容であったとしても、相手の顔や状況が変われば更なる利益の拡大を試みることは自然なことだ。
日本側の前回の貿易交渉の最大のミスは、手持ちのカードをほぼ出し切った点にある。特に米国の安保関連産業にする投資約80兆円を約束した行為は軽率であったように思う。
これは米国側が想定していた同盟国に対する安全保障提供の代わりにゼロクーポンの国債購入を義務付ける案の変型版であるが、米国側も日本が最初からこのカードを自分で提案してくるとは思っていなかったはずだ。
ベッセント財務長官らが日本に圧力をかけ始めている
日本側が一時しのぎのために虎の子のカードを最初から切った行為は、トランプ大統領側からの新たな交渉を想定していないように見える。仮にトランプ大統領から追加貿易交渉を求められた場合、日本側は代わりに差し出す有力な代替案は残っていない。
そのため、将来的に現状のスキームから投資額をズルズルと引き上げられていく姿が容易に浮かぶ。
既にトランプ政権が求める新たなディールの一部は報道されている。たとえば、ロシア産エネルギーの購入停止だ。
日本はサハリンからのエネルギーを輸入しており、これは日本のエネルギー資源調達先の多様化に寄与している。しかし、米ロ関係の悪化によってベッセント財務長官らが日本にサハリンからのエネルギー資源購入をやめるように圧力をかけ始めている。
日本がサハリンから購入しているLNGは全体の約1割、仮にこの購入を停止した場合、日本はその代替として米国からのエネルギー資源の追加購入を迫られることになる。
筆者は調達先多様化の観点から米国からのエネルギー資源購入を増やすべきという立場だが、米国に言われた通りに実行することは話が異なるものと考える。
新たな要求として投資額引き上げも
また、追加の農産物購入や米国製品の購入も提示されることも想定すべきだ。米国は自動車関税等の強力なセクター別関税を有しており、日本に対していつでも圧力をかけることができる。
つまり、日本側はこの問題に対しては常に受け身の立場に置かれるため、トランプ大統領と直接面会する度に新たな要求が待っていると思ったほうが良い。交渉とは一度まとまったら終わりではなく、そこから新たな交渉が始まっているものだ。
いずれにせよ、石破政権が米側から見て何時でも金額を引き上げられる対米投資スキームを作ってしまった以上、トランプ大統領からの新たな要求は常に投資額引き上げという結論に帰結するリスクがあることは認識されるべきだ。
第二に安全保障関連の協議が想定される。
この点については日本側も予め準備が進んでおり、経済安全保障、サイバーセキュリティ、インテリジェンス、サプライチェーン強化など日本側もしっかりと対応できるだろう。
そのため、一見すると、日米ともにポジティブな協力関係を強化できるバラ色の未来が待っているかのようだ。
日本に求める防衛負担増と核戦略
ヘグセス国防長官が公開した暫定の国家防衛戦略指針の優先順位は、米国本土の次に対中国が位置付けられている。
中国の現実な脅威に対して、日米の協力関係が進むことは良い事だ。しかし、トランプ政権側から重い宿題を突き付けられることも同時に覚悟するべきだ。
一つは日本の対GDP比の防衛費負担の拡大だ。コルビー国防次官は日本側にGDP比3.5%までの防衛負担を求める旨を度々言及している。
また、日本は核戦略を持っておらず、この点も日米の安全保障協力を強化する上で課題となる。日本が自ら核を持たないにしても、日米でどのように核の傘を機能させていくのか、日本としてはこの問題にどのように考えているのか、を示すことは必要だ。
小泉進次郎防衛大臣は原子力潜水艦導入の可能性に言及しているが、軍事製品を購入する以前にどのような枠組みで、それらを機能させるのかを示すのが常識だ。
そのため、高市政権では安保関連文書を米国側の国家防衛戦略の改訂に合わせて見直し、日米の安全保障に関する協議枠組みを強化することで合意が得られることになるだろう。
トランプ氏が求める高市氏のポリコレ対応
さらに、インド太平洋地域での日本の役割拡大も議論されることが予測される。トランプ大統領の周辺は台湾防衛強硬派が揃っているように見えるが、米国全体の対台湾政策の方針はまだ不透明感がある。
台湾自身もどこまで対中戦争の覚悟が決まっているかも真意は測りかねる。そのため、善後策として日本側はOSA(政府安全保障能力強化支援)を通じたインド太平洋諸国への後押しを求めることになる。
日本とインド太平洋諸国との軍事的な協力関係の強化に関して、戦後の日本の在り方を払しょくして防衛外交を展開する好機である。
第三に、ポリティカル・コレクトネスへの対応だ。
トランプ大統領はこの点に関しては、日本に対する要求としては具体的に言及しないかもしれない。しかし、トランプ政権にとって相手国の指導者が「馬が合うか合わないか」を占う上で重要な試金石となる。
岸田・石破両氏が間違った「対トランプ対応」
9月に暗殺された米保守系活動家のチャーリー・カーク氏の死は、米国だけでなく欧州の保守派にも大きな影響を与えた。
カークはリベラルなポリコレ思想に対するアンチの代表格だったからだ。ポリコレ思想に染まった日本の政治家にはピンと来ないかもしれないが、現在のトランプ政権とうまくやっていくには、反ポリコレの時代風潮を踏まえることが重要である。
仮にチャーリー・カーク氏の死についてコメントを求められた際、しっかりとした対応ができるように準備しておくべきだろう。
岸田・石破などの過去の首相が口にしているエリート主義に基づくポピュリズムへの嫌悪などは間違っても口に出してはいけない。高市新首相は前任者らよりも上手にこなさせそうなので心配が杞憂に終わることを願っている。
トランプ大統領と高市首相の初会談、そのケミストリーは基本的には良好な形となるだろう。しかし、その上で、トランプ大統領は米国大統領として更なる国益を追求することは当然だ。その中で、高市首相がトランプ大統領から何を勝ち取っていくのか、その初手に注目したい。
文/渡瀬裕哉 写真/shutterstock

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