「AI家電は役に立たない」「労働の価値はもっと低くなる」家電マニア・勝間和代が語る、最新テクノロジーを“味方”にするコツ
「AI家電は役に立たない」「労働の価値はもっと低くなる」家電マニア・勝間和代が語る、最新テクノロジーを“味方”にするコツ

新刊『仕事と人生を変える 勝間家電』(ダイヤモンド社)を刊行した経済評論家・勝間和代。2,000点以上の家電を自腹で試してきた彼女は、「得意分野を持つメーカーがおすすめ」「AI家電は使えない」など具体的な提言で家電について語る。

私たちは何を基準にテクノロジーを選び、暮らしに家電をどう取り入れていくべきか。進化する家電・ガジェットを使いこなすコツと、変わりゆく“労働の価値”の関係を聞いた。〈前後編の後編〉

現代の最重要ガジェットはイヤホン

––––勝間さんの「推しメーカー」や「信頼しているブランド」はありますか?

勝間和代(以下同) やはり専業メーカーは信頼できますよ。ダイキンのエアコン、象印の炊飯器のように、得意領域が明確な企業は作り込みが丁寧です。

メーカーごとに得手不得手はやっぱりあって、たとえばパナソニックは洗濯機はとても良いのですが、炊飯器はあまり合わなかったのでやめました。「その製品がどれだけ専門性を持って作られているか」は大切な要素ですね。

––––書籍内で、買ってよかった家電ナンバーワンとして「スマートウォッチ」を挙げられていましたね。

私はこれまで、Apple Watch、HuaweiのGTシリーズ、そして今はPixel Watchと、いろいろなスマートウォッチを使ってきました。

Apple Watchは便利ではありますが、電池の持ちが悪く、毎日充電しなければならないのがストレスでした。一方、HuaweiのGTシリーズは1週間ほど充電しなくてもよく、そこは非常に快適でしたね。ただ、電子マネー機能が使えなかったのが最大の弱点でした。

その後、Pixel Watchが3代目くらいでようやく実用的になってきたので、乗り換えました。バッテリーの持ちも改善されて、1日半~2日くらいは余裕で使えるようになった。

毎日必ず身につけるものなので、「充電のしやすさ」や「電池持ち」は本当に大事なんです。

私はスマホよりもスマートウォッチのほうが使用頻度が高いくらいで、今では生活に欠かせない存在ですね。

––––新視点だったのですが、「イヤホン​はシーンによって使い分ける」とも書かれていました。「イヤホンはパソコンやスマホより重要」というのは、どういう意味なのでしょうか?

今のコンテンツって、ほぼ全部が音付きなんですよ。だから、音をいかに自由自在に操るかがすごく重要。仕事でもオンラインミーティング、移動中は動画や音声コンテンツ、自宅では映画や学習など――どの場面でも「音の制御」が欠かせません。だから私は、イヤホンやスピーカーを“情報を扱うための基本装備”として捉えています。

自転車で移動するときは法律もあるので、耳をふさがないイヤークリップ型イヤホンやネックスピーカーを使います。ソニーやシャープなど、3~4機種を持っていて、状況に応じて使い分けていますね。

一方で自宅では、マイクもヘッドセットもすべて有線です。やっぱり有線が一番速くて安定している。無線は便利ですが、遅延や接続の不安定さが仕事の質に直結するので、使い分けを徹底しています。

デザインは“行動を導く設計”であるべき

––––書籍の中で印象的だった言葉に、「バッテリー家電は不経済」というものがありました。これはどういう意味でしょうか?

一番の理由は、出力が弱いからです。とあるメーカーのコードレス掃除機なんて、出力が足りなくてゴミを全然吸わない(笑)。それに、「家の中で使うのに、なぜわざわざ無線にするの?」と思うんですよ。ルンバのように“動かすことが前提”の機器なら別ですが、固定して使う家電までバッテリー式にするのは合理的じゃないと思います。

有線のほうが安定していて、パワーも強いし、壊れにくい。バッテリー式は、交換のたびにコストも手間もかかります。だから「バッテリーだから便利」という思い込みは一度疑ってみたほうがいいと思いますね。

––––家電の「デザイン」については、どのように考えていますか? 最近は見た目の美しさを重視した“デザイン家電”も人気ですが。

私はデザイン家電が嫌いなわけではありません。ただ、「意匠のための意匠」は嫌いです。意匠デザインと機能デザインがごっちゃになっている製品が多いんですよ。本来、意匠は機能と一体になって初めて意味がある。

デザインは人の行動を導くための設計であるべきで、ここで大事になるのが「アフォーダンス」という考え方です。見ただけで「どう操作すればいいか」が自然に分かる形や配置になっているか。ボタンを減らして見た目を整えても、誤操作が増えたり手順が複雑になったりするなら本末転倒です。

––––ズバリ、日常生活で家電を使いこなすコツは何でしょうか?

「説明書をちゃんと読むこと」です(笑)。多くの人は読まないまま「使いづらい」「壊れた」と言うんですが、メーカーが一番効率的な使い方を丁寧に書いているんですよ。たとえばホットクックの場合、「スパゲッティを茹でるとき、お湯は1000ccだけ」と説明書に明記されているのに、なみなみ水を入れて壊してしまう人が本当に多い。

私は買う前に説明書を読むこともあります。特に「お手入れが面倒かどうか」は必ず確認します。そこを読むと、製品が自分の生活サイクルに合うかどうかが見えてくるんです。

それと、導入したあとは、“使わなくなる理由”を徹底的に潰していきます。充電が面倒ならスタンドを買う、取り出しづらいなら場所を変える。そうやって使うハードルを下げて、自分の生活動線に組み込んでいく。

これが、家電やテクノロジーを使いこなす確実な方法だと思います。

期待するのは「人間にはできないことをやる家電」

––––昨今はAI技術がますます生活に入り込んでいます。勝間さんは、こうしたAIの本質をどのように捉えていますか?

まず「AIが何でもやってくれる」と考えるんじゃなくて、何をどう処理してくれているのかを理解することが大事です。

たとえばChatGPTなどの生成AIサービスは、LLM(大規模言語モデル)です。私は「言語の計算機」と呼んでいますが、「言語と数字で処理できるもの」は得意なんですよ。だから私は毎日、会話の相手としてChatGPTやGeminiを使っています。

一方で「AI家電」と呼ばれる製品は使っていません。あれは実際にはAIじゃなくて、画像処理アルゴリズムがメイン。たとえばルンバがやっているのは部屋をマッピングして、最適なルートを導き出す“掃除アルゴリズム”ですよね。

機能を見れば、「これは使えるAIなのか、そうでないのか」がちゃんとわかります。冷蔵庫のAIなんて、言語を処理できるわけないですよね(笑)。

––––AIや家電の進化によって、これから私たちの暮らしや働き方はどう変わっていくと思いますか?

とにかく、これからは“労働の価値がどんどん下がっていく”ってことを、もっと認識したほうがいいと思います。たとえば、医師と看護師がいた場合に、先に仕事がなくなるかもしれないのは医師のほうなんです。

なぜなら、医師の診断業務はAIが代替できるようになっていくけれど、包帯を巻くなど看護師のように「手を動かす」部分にはまだまだ人間が必要です。

––––最後に、勝間さんは未来にどんな家電の登場を期待していますか?

「ありそうでなかったもの」ですね。やっぱり人の手が必要な“物理的な作業”を、家電がどう実現してくれるかがポイントだと思います。

ホットクックが本当に偉いのは、閉じた鍋の中でかき混ぜてくれることなんですよ。普通は蓋を開けて混ぜるしかない。でも、蓋を開けると味が落ちる。ホットクックはそれを自動でやってくれるから、誰でも美味しい料理ができる。これは画期的でしたね。

同じように、ルンバも人間では到底できない頻度で掃除してくれます。私は3台をスケジューラーで週に3回動かしていますけど、人間だったら週1回が限界ですよね。

「できるけど、ちょっと便利になるだけ」みたいなレベルではなく「人間にはできないことをやってくれる家電」が、これからもっと出てくると嬉しいですね。

前編はこちら

取材・文/毛内達大 撮影/野﨑慧嗣

<プロフィール>
勝間和代(かつま・かずよ)
1968年東京生まれ。

経済評論家。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在、株式会社監査と分析取締役、国土交通省社会資本整備審議会委員として活躍中。

少子化問題、若者の雇用問題、ワークライフバランス、ITを活用した個人の生産性向上、など、幅広い分野で発言をしており、ネットリテラシーの高い若年層を中心に高い支持を受けている。Twitterのフォロワー70.6万人、FBページ購読者4万6000人、無料メルマガ4万7000部、有料メルマガ4000部などネット上で多くの支持者を獲得した。5年後になりたい自分になるための教育プログラムを勝間塾にて展開中。著作多数、著作累計発行部数は500万部を超える。

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