不動産価格の高騰を受け、家賃の上昇が止まらない。不動産ポータルサイトのデータによると、首都圏、関西圏とも、シングル・ファミリー双方の家賃は過去最高値を更新した。
突然、家賃を3万円も上げると一方的に…
「突然、家賃を3万円も上げると一方的に通告された」
東京・恵比寿で家賃20万円のマンションに夫婦で暮らすAさんはこの夏、不動産管理会社を通じ家賃の値上げを通告された。
これまで一度も家賃を滞納したことはなく、過去2回の更新では家賃は据え置きだったが、今年の対応はこれまでとは違うもので、「嫌なら出ていってくださいという雰囲気だった」と振り返る。交渉の末、2万円の引き上げで妥結したが、いまだに釈然としていないという。
Aさんのような例は枚挙にいとまがない。不動産ポータルサイトLIFULL HOME'Sを運営するLIFULLによると、9月の東京23区のファミリー向け物件の平均掲載賃料は23万9278円と、1年前の水準から13%上昇。額にして約2万8000円の上昇となる。シングル向けも15%増の11万8778円と、同様の傾向だ。
不動産投資家「10~20%の値上げを提案している」
いくらマンションの価格が高騰しているとはいえ、同じ家に住んでいて築年数が古くなっているのに家賃だけ上昇するのは納得がいかないという感覚を持つ人は多いだろう。
しかし、不動産の価格を決めるのは市場であり、現在は圧倒的に貸し手優位の状況だ。「更新をむかえる物件は周辺の相場を勘案して10~20%の値上げを提案している」と、都内でマンションに投資する不動産投資家のBさんは語る。
10年以上の投資歴を持つBさんは「これまで、家賃を下げることはあっても上げることはなかった」と振り返る。
しかし、現在のマーケットはリモートワークから出社回帰への転換で会社に近い東京のマンションやアパートの需要が急増しており、需要に対して部屋の供給が追いついていない状況だ。
インフレを好機とみて、プロの投資家は家賃上昇に積極的
都心の好立地に物件を持つBさんのような大家にとっては、賃料を引き上げた上で再募集することも視野に、強気の引き上げを提案することが投資家としての最適解となっているのだ。
家賃の引き上げを目論んでいるのはBさんのような個人の大家だけではない。賃貸住宅を運用するREITとしては日本最大級のアドバンス・レジデンス投資法人はポートフォリオの25年7月期の入替賃料変動率が16.2%増と、過去最高を記録したと発表した。
決算説明会では「当社の方針として、賃料上昇に積極的に取り組んでいる」と明言。インフレを好機とみて、プロの投資家が積極的な家賃上昇に取り組んでいるのだ。
エリア全体の賃料が上昇し「家賃を引き上げなければ損」という雰囲気が漂っていることに加え、引っ越し料金が上昇していることも大家を強気にさせている。
都内では現在、人手不足により引越料金も高騰しており、特に更新期が集中する春や秋の繁忙期では都内の引っ越しでも数十万円かかるということが当たり前となっている。
引っ越しをしたくても、高額な見積もり料金をみて諦めるという例も増えている。借り手側は足元を見られた上で家賃の引き上げを迫られている状況だ。
シンプルに家賃の引き上げを拒否することはできる
こうした状況下、家を借りている人に対抗策はあるのか。もっともシンプルな手法は、家賃の引き上げを拒否するという手段だ。日本は借地借家法という法律があり、家賃の増額は貸主と借主双方の同意が必要となっている。
100年以上前に制定された借主を保護するための仕組みが現在にも続いており、世界的に見ても借り手に優位な仕組みとなっている。オーナー側が家賃の増額を求めたところで、借主がそれを呑まない限り、一方的な値上げは成立しない。
家賃の引き上げを拒否して、これまで通りの家賃を払えば契約は継続され、無理やり追い出されるということはない。
しかし、これには留意が必要だ。一方的な値上げは成立しないといっても、近隣相場に比べて明らかに割安だった場合、大家は法的手段に出ることができる。具体的には、簡易裁判所に賃料増額調停を申し立てることになる。こうなると、借り手側は苦しくなる。
投資家は今後も粛々と家賃の引き上げを進める
家賃の引き上げを受け入れない理由として、周辺相場に比べて賃料が割高であることを証明する必要があるためだ。現在の相場では周辺の空き家は賃料を引き上げているため、据え置きが適正であるということを証明するのは難しい。
また、平日に仕事を休んで簡易裁判所まで出向くことや、話がこじれて弁護士に依頼したときのコストを考えると、前述のAさんのように、一定の賃料引き上げを受け入れるという姿勢で価格交渉をするのが合理的な行動となる。
これまで多くの大家が、「借主が家賃の引き上げに応じなかったから」と法的手段に打って出なかったは単に費用対効果が低かったからであり、現在のような家賃上昇局面では強気に出やすいことは忘れずにいたい。
「今の家賃上昇は一過性のものなのでは」という声もあるが、期待は薄い。投資用物件のポータルサイトを運営する楽待によると、25年7~9月の一棟アパート、一棟マンション、区分マンションのいずれも価格が上昇しており、特に一棟アパート価格は過去最高を更新している。
高値で購入している上、金利上昇やインフレに伴う修繕費の高騰で維持費も上昇しているため、今後も投資した資金を回収するために投資家は今後も粛々と家賃の引き上げを進めるだろう。
家賃上昇に怯えながら暮らすという光景
また、高価格帯の物件では、契約期間が終了すると自動的に契約が終了する「定期借家契約」も増えている。こちらは自動的に更新されないため、大家が提案する家賃引き上げを呑まなければ強制退去となる。
デフレの時代には「リスクを負って住宅を買うより、賃貸のほうが賢い選択肢だ」と公言する有識者もいたが、実際に起きたのは不動産を持つ側の人間の立場が圧倒的に強く、借りている側は家賃上昇に怯えながら暮らすという光景だった。
デフレからインフレへの転換が起きる中、現在、20代から30代の収入が高い若手社会人の間で流行しつつあるのが、住宅ローンを組んで1LDKの部屋を購入するという動きだ。
これまで、ファミリーやDINKS向けで需要が読みやすい3LDKや2LDKに比べ、1LDKは購入層が限られており販売が難しいというのが定説だったが、「都心エリアの小規模物件であれば、1LDKの部屋から売れる物件もある」と大手不動産デベロッパーの社員は語る。
例えば、8000万円の部屋を50年ローンで購入すれば、月々の負担は17万円程度となる。
与信を使ってどれだけ不動産に資金を投じられるか
上がり続ける家賃を払い続けるくらいなら、資産になる物件を購入するほうが合理的だという発想だ。前述のデベロッパー社員は「ライフスタイルが変われば売ってもいいし、転勤や駐在を見越して賃貸物件として運用することも考えて購入する方が多い」と分析する。
一流企業に務めるような感度の高い若手社会人にとって、勤務先の与信を使ってどれだけ不動産に資金を投じられるかというのはNISAやiDeCoと同じく、「やらなくては損」という感覚になりつつある。
前述の家賃上昇に憤るAさんも、現在は近場で中古マンションを探している。「恵比寿周辺だとファミリー向けは1億円を軽く超えて手が出ないが、1LDKや2LDKであれば」と、不動産ポータルサイトを眺める日々だという。
搾取される側からの脱出を望む若者の行動が不動産価格の高騰に一役買っているという皮肉な光景だが、東京に限ればこうした潮流はしばらく続きそうだ。
文/築地コンフィデンシャル

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