学歴詐称疑惑絡みで前市長・田久保眞紀氏(55)が強制失職に追い込まれた静岡県伊東市。抵抗を続けた田久保氏に2度の不信任を突きつけ、引導を渡した市議会は喝采を受けている。
だが今度は追及する側にいた市議会議長にもズサンな政治資金処理疑惑が浮上。また、唯一の“田久保派”市議も代表を務める団体の運営でトラブルを抱えていることがわかった。田久保氏一人の“失職”で伊東市政は正常化するのだろうか。
届け出のない団体に10万円の交付金
問題が指摘されているのは、10月31日の田久保氏への2度目の不信任決議案採択の直前に議長に再選された中島弘道氏(65)だ。
田久保氏から東洋大学の「卒業証書」と称するものをチラ見せされた一人で、「19.2秒」にわたって見せたと主張する田久保氏を市議会が偽証罪などで告発する中心となった。
同市の政界関係者が話す。
「中島氏が自民党伊東市支部の代表を務めていた2023年、支部は5月15日に『中島弘道後援会』に10万円の交付金を支出し、後援会名で受領書(領収書)も出されています。ところが、この団体は政治団体としての届け出がありません。政治団体でない任意団体への寄付は政治資金規正法で禁じられています。
いっぽうで同年9月に行なわれた市議選の選挙運動費用収支報告書で中島氏は、5月15日に支部から公認料として10万円の寄付金を受け取ったと記載しています。つまり中島氏は個人で10万円を受け取ったといいながら、支部は後援会に支払った形がとられているのです」
集英社オンラインは自民党伊東市支部の収支報告書などにこの関係者の説明通りの記載があることを確認した。
これがどのような意味を持つのか。政治資金に詳しく自民党の裏金を解明した神戸学院大の上脇博之教授が解説する。
「中島市議が個人で寄付を受け取ったと言っているのであれば、自民党伊東市支部が後援会に支出したと収支報告書に記載していることは(政治資金規正法の)虚偽記入に当たる可能性があります。
また、受け取ったのが後援会の場合、(政治団体の届け出がない)任意団体で支出を受け取ったことは公選法が禁止する、選挙区内にある者に対する寄付になる可能性が出てきます」(上脇教授)
中島市議は「個人でもらった認識」「受領書は自分は発行していない」
そこで田久保氏の失職が決まる前日の10月30日、中島市議をたずね、政治団体の届けがない後援会は党の資金を受け取れないのではないかと質問した。
中島氏は「認識が甘かった。自分では個人でもらったとの認識だった」と述べ、受け取ったのは個人で収支報告書の記載は事実と違うと認めた。しかし「(党からの支出を)個人宛にしてもらえばいいだけ」とも話し、支出先を修正すれば問題はないとも主張した。
さらに中島氏は後援会が発行した形の受領書について「自分は発行していない。向こうでやり取りさせて作ったんじゃないですかね。私は10万円いただいただけですから」と言い始めた。
だが「いただいた」先の党支部の責任者を務めていたのも中島氏だ。支部の資金管理はどうなっているのか。「お金は事務局の女性が管理しています。会計責任者として書かれていた別の市議は名前だけじゃないかな。私は金の流れは確認しません」(中島氏)
さらに「今回の選挙(10月の出直し市議選)も支部から10万円受け取っていますが、こういったもの(領収書)を私は何も見ていないんですよ」とも話し、実態が変わっていないことを隠そうともしない。
税金である政党交付金も含まれる党資金のあいまいな管理は許されないのでは、と指摘すると中島氏は「まあ、最終的にはですね。うーん…」とうなるのだった。
新人市議の片桐氏は元参政党メンバー内で運営費をめぐり内紛
美しくない話が聞こえてくるのは反田久保派だけではない。10月の出直し選で唯一田久保氏支持を掲げて当選した無所属新人の片桐基至市議(45)についても、同氏が代表理事を務める市内の一般社団法人「I」(仮名)で運営を巡る内紛が起きている。
I団体は「循環型環境保全と地域経済の好循環をはかり里山景観を維持し地域の農林水産業を守り支援する」ことを目的に2023年6月に片桐市議と建設業のA氏、行政書士のB氏の3人が理事となって設立した。
3人はいずれも当時参政党メンバーで、設立時には参政党の元ボードメンバーの1人が1000万円を団体に寄付し、これが運営の原資となった。その後、この元ボードメンバーが神谷宗幣党首と袂を分かち、片桐市議も参政党を離れた経緯がある。
この3人の中で片桐市議とA氏がB氏と対立。まずB氏に近い関係者が話す。
「設立直後の2023年7~8月に片桐氏とA氏は社屋工事の資材購入名目などで550万円を手持ち現金として預かり、一部がその年9月の前回市議選に出馬した片桐氏の選挙資金に充てられました。
しかし、工事は行なわれず、昨年5月に理事と幹事が集まった席でA氏は未着工であることなどについて『法律的に多分ダメでしょう。それは百も承知』と発言しました。これらは特別背任罪ではないかと思い昨年8月ごろに警察に資料を渡しています」(同関係者)
片桐氏は「生活費を借りましたが団体とは無関係の個人間の貸し借り」
いっぽう片桐市議の主張は正反対だ。
「550万円は実際にAさんが経営する工房からの資材購入に使い、老朽化がひどい社屋の一部の工事もしています。しかし行政書士のBさんが『自分がやる』と言った登記をしなかったため、社屋の所有権が元の所有者のままで、I団体に所有権がないので本格的な工事ができないんです。
Aさんからは生活費を借りましたが、I団体とは無関係の個人間の貸し借りです。警察に何か聴かれたことなんかないですよ。調停手続きもしましたがBさん側は運営権をすべて引き渡して出ていけと言うだけで和解案も拒絶されました。登記をしなかったのに私たちに濡れ衣を着せて犯罪者扱いです」(片桐市議)
A氏も片桐市議と同様の説明をし「550万円の使い道は事前にみな了解していて、金を引き下ろしたのはBさんですよ」と話す。
ただ「法律的に多分ダメ」と言ったとのB氏の主張については「記憶、ないですけど」と話した。ずさんな資金管理や経営の内紛。
どちらも市民生活に直ちに影響する大きな問題にはみえないが、思えば、田久保氏をめぐる騒動も最初はそうだったことを忘れてはならない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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