「クマに襲われたら頭蓋骨は粉々、顔も半分なくなる」“お前のところにクマ送る”発言の佐竹前秋田県知事独白40分「擁護派からの電話なんて切って当たり前」「知事時代、2300頭は駆除した」
「クマに襲われたら頭蓋骨は粉々、顔も半分なくなる」“お前のところにクマ送る”発言の佐竹前秋田県知事独白40分「擁護派からの電話なんて切って当たり前」「知事時代、2300頭は駆除した」

全国でクマ被害が相次いでいる。クマによる死者数は13人を記録し(2025年11月7日時点)、これまでの過去最多年の2倍を記録した。

事態を受け、各自治体はクマ駆除に乗り出しているが、「クマを殺すな」などとクマ擁護派から役場に苦情電話が入り、業務に支障をきたすこともしばしばあるという。そのなかでも、クマが頻繁に出没する秋田県では、佐竹敬久前秋田県知事が長年クマ問題に対して、積極的な発信を行ってきた。佐竹前知事に話を聞いた。 

「クマを殺すなと電話をかけてくるやつは被害の悲惨さを知らない」

――佐竹前知事は、2023年10月の記者会見で悪質な苦情の電話について、「すぐ切ります。ガチャン」「付き合っていると仕事ができない。業務妨害です」と発言されていましたよね。

こっちが仕事できないんだから、電話なんて切って当たり前。ああいうのとね、付き合っていると時間がなくなる。あの連中はね、話してもわかんないんだよ。そしたら「税金泥棒」「お前ら何も仕事してないな」と公務員バッシングをするわけ。そんなの全く受ける必要ないんだよ。こっちは住民の命を守るのに必死なんだわ。

――2024年12月にクマの駆除をめぐって「殺さないで」といった苦情が県庁などに相次いだとき、「お前のところに今(クマを)送るから住所を言え。

そんなに(クマが)心配だったらお宅に送ります」と発言したことが印象的です。

住民の生活がクマによって脅かされていて、生活の様式が変わってきているんです。農家は農作物を荒らされて生活に困っています。コメ農家はよく保険に入っているけど、果物農家は入っていないことが多いから、生活再建が困難化する傾向にある。

また、朝晩は一人で出歩くこともできない。学生の運動会や、遠足、マラソン大会まで中止になっている。

クマに出会ったら生き延びることは難しいし、毎日恐怖と一緒に生活しているわけです。クマを殺すなと電話をかけてくるやつは、クマによる被害の悲惨さを知らないんです。

大学病院でクマに襲われた人の遺体を何度も見た

――知事時代にはその悲惨さをこの目で見てきたのでしょうか。

クマは市内でも平気でコンビニの前に朝いたり、公園にまで出てきたりする。ある日、高齢の男性が自転車を漕いでいたら、クマが急に出てきて顔を引っ掻かれて両方の目玉が飛び出てしまった。クマがちょっと手で顔を押さえただけで、相当な圧力がかかるんだ。

大学病院でクマに襲われた人の遺体を何度も見たことがあるが、死んだ人間は顔の半分がないんだ。

頭蓋骨(ずがいこつ)をグシャッとやられていることもあるし、首がない場合もある。

クマに襲われたら社会復帰は難しいと考えてもいいでしょう。

――クマは人間の味を覚えているのでしょうか。

人間を襲ったクマは、味を覚えてしまい、再び襲い始めます。だから駆除をしなければならない。

――秋田県ではクマによる被害が多発しています。死者は2016年度と並び4人と過去最悪を記録し、人身被害は60人と過去最多となります。陸上自衛隊もクマ対策の支援で、11月末まで県内で活動することになりました。

クマの出没は50年前からのことです。昔も年に数人は被害者がいたんですよ。ただ、町の中まで出ることはなかった。2023年ごろから変わってきて、駅とか公園、住宅街に出没し始めました。

2023年に私が知事をやっていたときに、2300頭は駆除したんですよ。この駆除はね、通常の市街地に出て、人間の生活に支障をきたすようなときに罠をかけて行うものです。

捕獲したクマを山に返すことは、ほとんどありません。数百キロあるわけですし、運搬が困難です。なにより、人間の食べ物をあさって、ドングリよりもこっちがうまいってことで、すぐ市街地に戻るんですよ。

――クマはなぜ増えているのでしょう。

クマが増える地域は人口が減少しているところがほとんどです。今まで里山だったところが森林化する。東北でも特に秋田なんかは人口減少がひどく、農村部や山間地は、逆に自然が豊かになっているんですよ。クマの居留地がどんどん増える。クマも今までこの中にいたのが、どんどんこっち(人里)に来るわけです。

――クマの学習能力はすごいと...。

アーバンベアと呼ばれる市街地に出没するクマは、車の音にも慣れており、爆竹も無害だということを学習して音に驚きもしません。勝手に民家に入り、冷蔵庫を開けて、食糧を食べてしまう始末です。そんな賢いクマが人間の味を覚えたら、どんな事態が起こるか一目瞭然です。だから駆除が必要なんです。

「“猟友会に任せる”っていうモデル自体が破綻している」

――クマの出没数にハンターの数も追いついていないような感じがします。

猟友会はもう高齢化していて、常に人材不足です。日本では、銃の規制は厳しいし、射撃場もどんどん減っている。昔は“お金に余裕がある人の趣味”で、猟をやる人がいたんだけど、今はそんな余裕のある人がいないんです。

だからもう、“猟友会に任せる”っていうモデル自体が破綻しているわけです。

本当に必要なのは、行政とか警察が動ける体制。いわゆるガバメントハンターですよね。元自衛官とか元警察官とか、銃を扱う素地がある人がきちんと現場で動けるような枠組み。

そのためには、免許の取得費用とか、銃の購入費とか、訓練の費用とか、そういうところをちゃんと公的に補助しないとダメなんです。

それから、ドローンです。熱源センサーを使えば夜でも探索できる。アメリカでもウクライナでももう普通に使っていますよ。でも日本は“前例がない”で止まるんです。その間にも、子どもは通学できない、農家や山菜採りは収入を失う、明日から飯が食えない、そういう生活が実際にあるわけです。

“クマと共存”って言いますけどね、まずは人間が普通に生活できる環境を取り戻さなきゃいけないんですよ。その上で初めて、共存の話ができるんです。

※※※

秋田県庁によれば、クマ駆除による電話は例年より数が少なくなっているという。一方で、他の地域ではいまだに「クマを殺すな」などの電話が相次ぐこともある。クマ擁護派と役所が“共存”できる日は来るのだろうか――。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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