韓国が「原潜を自前で建造する」と公言した。だが、原潜の心臓部となる原子炉と核燃料は、通常兵器とは桁違いの機密領域だ。
「船体の建造と原子炉の建設は国内で行う」
韓国が原潜を保有する––––。
10月末の米韓首脳会議後にトランプ米大統領はSNSで「我々の軍事同盟はかつてないほど強力で、彼らが持っているディーゼル潜水艦ではなく、原潜を建造することを承認。
自分たちの原潜をフィラデルフィアの造船所で建造するだろう」と明かし、「我が国に『古き良きアメリカの造船業』が間もなく大きな復活を果たす」とアピールしていた。
ところが一転し、韓国・国家保安室長のウィ・ソンラク氏は11月6日、米国の承認を受けた原潜について「米国で建造することは考えていない」と国会で発表した。
韓国『ハンギョレ』新聞によると「30年以上の技術の蓄積と研究を行っており、(原潜を)我々が建造するものと考えている」と述べ、大統領室も「船体の建造と原子炉の建設は国内で行い、それに合う濃度の燃料は米国から受け取ることになる」として推進装置も自前でつくるとした。
ある意味、衝撃的な発言だが、韓国は原潜の船体や推進力の原子炉などが自前で調達できるのか?
韓国が求めている原潜は核弾頭を搭載するミサイル原潜ではなく、通常任務にあたる攻撃型原潜である(当たり前だが動力が原子力というだけですべての原潜が核弾頭を搭載するわけではない)。
現在のアメリカの攻撃型原潜はバージニア級が主力であり、24隻が建造されているが(計画では66隻建造予定)、配備予定は大幅に遅れ、昨年、原潜を取得すると決めたオーストラリアへの配備(米英豪で決定された)も予定通り行くのか怪しまれている。
そんな時期に韓国が原潜取得を承認されてもさらに、いつになるのか予断を許さない状況だ。
もちろん原潜の推進装置は原子力だから、ディーゼルエンジンと違い、浮上して空気を取り込む必要もなく、敵に発見される恐れは低くなる。
艦内では真水も生成できるし、乗員の交代や補給以外はずっと高速で潜航することが可能だ。
さらにアメリカ原潜の使用している高濃縮ウラン(90%以上の濃度でHEUと呼ばれる)だと、燃料棒交換も最長33年間必要ないとされる。
もちろんロシアやフランスのように原潜を保有する国によってはウラン濃度が異なり、濃度によって燃料棒の交換時期が早まる。いずれにしてもこれまで原潜を保有できたのは、核拡散防止の観点から核保有国に限られる。
船体以上にやっかいな原子炉と核燃料
そもそも米韓首脳会談では、両国は相互関税を25%から15%に引き下げ、かわりに韓国は米国に総額3500億ドル(約53兆円)を投資し、うち現金投資が2000億ドル、造船分野の投資が1500億ドル(約23兆円)になるということが確認された。
米国は中国の造船能力に大きく水を開けられており、昨年6月韓国企業ハンファ傘下の会社が買収したフィラデルフィアのフィリー造船所に韓国政府が追加投資すると思われていた。
ただし、米国で現在、原潜を建造しているのは、バージニア州のニューポートニューズとコネチカット州のジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートの2箇所の造船所。専門家の間ではフィリー造船所ではそのノウハウをどのように取得するかが焦点だった。
軍事技術に詳しいアナリスト毒島刀也氏がこう語る。
「フィリー造船所は230~250m程度の中型タンカー、貨物船を造る力のある造船所なので、原潜のサイズ的には全く問題はありません。
ですが、セキュリティチェックや途中検査(監査)を必要とする軍艦そのものは造っていませんし、原子力設備を含む特殊艤装品を受け入れる体制は整っていません。
潜水艦の建造経験もないので、潜水艦を造る際に避けられない高張力鋼(HY80相当)の溶接のノウハウを持つ溶接工もこれから養成する必要があります(韓国では相当する溶接技術を持つと見られるが手法がまるきり別物らしく、アメリカの造船所に適用できるかは微妙)」
さらにその船体に乗せる原子炉や核燃料がさらにやっかいだ。毒島氏が続ける。
「船体技術は既にありますが前述の通り系統も違う。韓国側は原子炉以外興味ないでしょう。もともと米韓原子力協定で20%未満の低濃縮ウランは韓国国内で製造できても、軍事目的に使うことはできませんから…。
ベンチマーク(指標)と称してアメリカの退職した熟練工員、技術者を韓国に招聘するという手もありますが、韓国の過去の数々のやらかしで、米国の原子力技術者は韓国との接触は厳重な監視下にあって、今年1月に米エネルギー省への出入りできない「センシティブ国」指定されています。
韓国が開発したと主張するBANDI-60小型原子炉は現行ロシア潜水艦に使われているOK-650とほぼ同一と見られており、これも20~45%の高濃縮ウランを必要とします。そこで船体と原子炉は自国でつくるから、それに合う核燃料を米国が供給して欲しいというわけです。
拒否された場合、韓国側は米韓原子力協定を破棄してもいいですが、そもそもウランはどこから入手するのでしょうか? フランス、ロシア、中国、イランから? 北朝鮮なら自前のウラン鉱山ありますが…」
導入費込みで1隻6000億円、韓国の国防費の8%
このように核がからんでくるとIAEA(国際原子力機関)やNPT(核兵器不拡散条約)などの国際機関や条約の敷居は限りなく高く、通常の装備品の値段でコスト計算は困難だ。
ちなみに単純に計算すると、米バージニア級原潜の米国での値段は約3000億円。韓国が購入できたとしても導入費なども入れると約6000億円。一隻だけでも韓国の国防費の約8%にあたるし、最低でも3隻はないと運用できない。
韓国『中央日報』によれば、「韓国大統領室は7日、韓米間の関税・安保分野の交渉結果を反映した『ジョイント・ファクトシート』(共同声明文)発表に関し、『安保分野で一部の調整が必要であり、話が進行している状況』と明らかにした」とだけ報じ、現在、否定も肯定もしていない。
むしろこのいつ終わるか分からない「ファクトシート」の最終書類作成が原因なのか、10日に予定されていた李在明大統領と財界総帥たち(サムソン、SK、現代、LGなどの会長ら)との懇談会が急遽、キャンセルされたことも発表され、不透明感は増すばかりだ。
一方で米側のヘグセス国防長官は「原子力潜水艦導入と関連して他に関連機関である国務省エネルギー部などと緊密に協力する」「トランプ大統領は大韓民国がより大きな能力を持つことに対して心を開き(原潜建造を)承認した」「韓国は造船業で世界的な能力を備えており、潜水艦だけでなく水上艦での協力も拡大・深化していくことを望んでいる」と原潜建造の支援はするものの、韓国国内で建造とは一言も触れてない。
果たして本当に韓国に原潜は誕生するのか。
文/世良光弘

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