自民党と日本維新の会が連立政権の条件として合意した「議員定数の削減」をめぐって、両党の温度差が目立ちはじめた。公明党との連立解消後、藁を掴むように維新との連立に無理やりこぎつけた高市自民だが、やはり無理やりすぎた。
1カ月足らずで早くも両党に温度差
「議員定数の議員立法を争点に解散するということは普通、考えにくい」
10日の衆院予算委員会。野党の質問に高市総理は一瞬、笑顔を見せ、「議員立法」という部分を強調して否定した。
この発言には前段がある。維新の藤田文武・共同代表が8日のテレビ出演で「(定数削減の法案)提出は両党の合意だけでできるので、やらなかったらだめだ。理不尽に潰されるなら衆院を解散したらいい」と言い放っていた。
とはいえ衆院解散は「総理の専権事項」だ。与党入りしたとはいえ、他党の代表が言及するのは異例ともいえる。だがその後、高市総理は国会の場で、維新の共同代表の発言をあっさり打ち消した。
議員定数削減は吉村洋文代表が「改革のセンターピン」と定義づけていて、最終的には連立合意の絶対条件だった。連立合意から1カ月足らずで早くも両党に温度差が出ており、今後の関係に影を落としている。
自民重鎮「あいつら最初は議員定数削減なんて言ってなかった」
そもそも論として、議員定数削減が埋め込まれた経緯には維新側のご都合主義的な事情もあった。
もともと維新が自民に連立政権の条件として突きつけたのは「副首都」と「社会保障改革」の2本柱だった。
両党の連立交渉を裏方として支えた自民の萩生田光一幹事長代行は「だんだん、維新が要求をつり上げた。あいつらは最初は議員定数の削減なんて言っていなかった」と周囲に不満をぶつけているという。
萩生田氏は「議員定数削減は与党だけではなく、野党の幅広い合意が必要だ」というスタンスだ。そして、それは自民党内の世論を代弁している。
そんな維新が頼れるのは高市総理との「約束」しかない。10月10日に公明党が連立離脱を表明すると、高市氏は総理大臣のイスを目の前に衆参両院で圧倒的に少数与党に陥った。
それでも「何が何でも総理になってやる」と数あわせに奔走し、維新を取り込むべくスピード交渉に入り、わずか12日間で連立政権の合意をまとめ上げた。
企業団体献金禁止したら「高市降ろしの暴動が起こる」
その交渉過程で、吉村代表が掲げたのが「議員定数の削減」だった。もともと維新は「身を切る改革」を掲げて、大阪で定数削減や議員の給与カットで支持を得てきた。国政でも企業団体献金の全面禁止を掲げていた。
ただ、企業団体献金の禁止は自民が絶対に呑めない。全国の県議などが党支部を財布にして企業団体献金を受けていて「禁止なんてしたら地方から高市降ろしの暴動が起こる」(自民ベテラン)という。
そのため、「自民が呑めない企業団体献金に代わる改革ネタとして定数削減を掲げることにした」と馬場伸幸前代表がネット番組で説明している。
連立合意の最終過程では、高市氏と藤田氏が毎晩のように夜中まで政策のすりあわせをしていたが、連立政権の政策合意は欧州なら数カ月はかかるとされている。
かつて自民と公明の連立交渉は1年以上続いた。たった12日間程度のスピード決着になった自民と維新の交渉では、赤坂の議員宿舎の一室で吉田松陰を尊敬するという藤田氏が「高市さん、改革のためにどうか狂ってください」と迫り、高市氏が「分かった」と応じたと、後に藤田氏が周囲に語っている。
公明幹部は「民主主義の破壊だ」
維新が掲げる議員定数削減は、衆院の比例区のみだ。現在、衆院の定数は465、小選挙区289、比例区176。現職候補がそれぞれの政党にいる小選挙区を削減するには膨大な政治パワーと調整が必要だ。
比例区だけならば、法案を通しやすいという計算も維新にあるのだろう。ただ、比例だけで50削減は、中小政党に大打撃を与える。とくに公明や共産、れいわなどは当選者が一選挙区で一人になる小選挙区では議席の獲得が難しく、比例区頼みだ。
公明幹部は「比例だけで50削減を押し通すなら、それはもう民主主義の破壊だ。うちは自民と全面戦争に入る」と身構える。
地方では、創価学会の選挙担当が立憲民主党の候補者と接触するなどして、すでに自民側に圧力をかけている。
この票数が連立離脱で自民候補から離れるだけではなく、相手候補に流れたら2万~6万票の逆転になり、自民は壊滅的な打撃を受けることになる。
ある九州地方の自民議員は「無理やり自民と維新で議員定数削減を突っ走るなら、学会票は相手陣営に流れていくぞ、という脅しなんだろう」と頭を抱える。
鈴木幹事長「合意はあくまで『今国会の成立を目指す』ですから…」
実際に昨年の衆院選で落選した自民議員が党本部に集まった会合で、鈴木俊一幹事長は「定数削減を目指す維新との合意はあくまで『今国会の成立を目指す』ですから。『目指す』だけなのです」と説明したという。
鈴木幹事長は9日のBSテレ東の番組でも「(12月17日までの今国会中に)各会派の理解を得るための協議を終え、決めきるかというと、そうならないのではないか」と述べている。
自民党の幹事長、幹事長代行という実力者が公然と今国会で結論を出すことに極めて消極的だ。加えて、与野党超党派の議員連盟が6日、「定数削減と選挙制度は切り離せない」という申し入れを額賀福志郎衆院議長に渡した。
自民・古川禎久議連共同代表は「本流はこっち。政権党が決めたことが立法府のルールまで変えられるようにはなっていない。三権分立から違和感を感じる。勢いでルールを変えることがあってはならない」と、今国会での結論を迫る維新を全否定している。
実際に削減の方法や法案成立は来年秋以降に先送りしよう
こうした自民内の反発を感じ取って高市総理も直近の言動は極めて慎重姿勢に転じている。
7日の国会答弁では「連立合意書では秋の臨時国会での成立を目指す」と記したことを認めた上で「国勢調査の正式な数値は来年秋になる。
つまり、維新に協力はするが、実際に削減の方法や法案成立は来年秋以降に先送りしようと約束していた、と暴露したといえる。
一方で、維新は吉村代表が10日も「自民と維新で法案をまとめ、この臨時国会で成立させるべきだ。ここでやらないでいつやるのか」と語っている。
連立政権前から維新で唯一、高市氏とつながりがあった連立のキーマンとされる遠藤敬総理補佐官は先月のネット番組で「定数削減法案が否決されたら衆院解散の大義だ」と言い切っている。
実際、維新には実績がある。2011年に大阪府議会では、定数削減を公約に掲げた大阪維新の会が過半数を獲得。当時の松井一郎氏らは、他会派が議場前にバリケードをはるのを突破して強行採決で当時の大阪府議会の定数2割削減を実現させた。
そこから維新は「身を切る改革」を掲げて府民の圧倒的支持をバックに選挙に連戦連勝した。そのときの「成功体験」が維新の原動力だ。
引くも地獄の「定数削減政局」が年末の日本列島を覆う
吉村氏は先月の維新の党員へのオンライン会議で「大阪では死に物狂いになって改革をやってきた。国会議員の定数削減は連立の今後、維新の将来に関わる勝負だ。
自民内の抵抗勢力も譲らないだろう。維新の狂気に高市自民はどう向き合うのか。連立解消か、狂気に付き合って衆院解散に打って出るのか。またはここまで大風呂敷を広げた吉村維新が高市総理の高支持率にひるんで「身を切る改革」の旗を降ろすのか。
高市総理と維新、どちらにとっても進むも地獄、引くも地獄の「定数削減政局」が年末の日本列島を覆うことになるだろう。
文/長島重治

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