「子どもの送迎が負担」「職場の早退がつらい」クマ出没多発で保護者にのしかかる“学校送迎問題”「これ続くとめっちゃストレスだな」秋田県の対応は
「子どもの送迎が負担」「職場の早退がつらい」クマ出没多発で保護者にのしかかる“学校送迎問題”「これ続くとめっちゃストレスだな」秋田県の対応は

全国でクマの出没と被害が相次ぐなか、子どもたちの学校生活における安全確保が課題となっている。特に、登下校時に保護者による送迎が推奨されるケースが多く、SNSには困惑する保護者の声が多くあがっている。

いったい何が起きているのか。当事者と自治体の担当者に話を聞いた。

クマ出没による保護者の「学校送迎負担」が増大

相次ぐクマの出没は、学校に通う子どもたちにも影響を及ぼしている。

文部科学省は10月30日、各都道府県の教育委員会等に向けて「クマの出没に対する学校及び登下校の安全確保について」と題する通知を発出。学校や登下校の安全確保について、「各地域の実情に応じた対策の検討や注意喚起等」を呼び掛けた。

各自治体や学校では、保護者による登下校時の付き添いを推奨するなどの対応をとっているが、SNSには保護者から困惑の声があがっている。

「毎日クマ騒動で子供の送迎とか外遊び禁止とかで大変」

「保護者向けのアプリ、今週に入って毎日クマ出没や児童送迎に関するお知らせが入ってきててツラい」

「クマのせいで車送迎推奨とか…いつまで続くんだ?」

「学校が完全送迎対応になったんだけど、コレ続くとしたらめっちゃストレスだな」

「クマ問題の送迎、これ今年だけでなく来年もってなるかもしれないって思うと転職視野に入れた方がいいのかな……職場でクマ問題の送迎対象エリアに住んでるの私だけなので、夫に頼めない日は早退か途中外出1時間強になるの申し訳なくて」

こうしたなか、「毎日の子どもの送迎が負担」とSNSに投稿した、秋田県北部で農業を営む女性に話を聞いた。

「最初は10月下旬だったかと思いますが、クマの出没に伴い、子どもの通う小学校から『登下校に必ず保護者が付き添ってください』という連絡が来ました。下校直前のお昼過ぎに突然連絡があり、わずか1時間ほどでの対応を求められました。あまりにも急な連絡で戸惑いました」

「子どもたちもストレスが溜まっています」

11月10日より保護者による送迎は「任意」になったが、「保護者が送迎に来られない場合」を想定した代替手段の提示などはなかったという。

「私の子どもが通う小学校は児童数が多いです。保護者の中には専業主婦の方もいらっしゃいますが、共働きの方はいろいろなお仕事をされています。なかにはまだ小さい赤ちゃんを抱っこしながら送迎に来られている方もいて、大変だろうなと思います。

送迎が難しい場合に子育てタクシーなどのサービスを利用する方法もあると思いますが、学校からはそうした代替策に関する連絡はありません。

ただ、今は大人でも短距離でのタクシー利用が増え、タクシーの乗車率自体が上がっているので、なかなかつかまらないんじゃないか、という話も聞きました」(同前)

この保護者は、「ファミリー・サポート・センター」(乳幼児や小学生等の一時預かりや見守り、送迎などをサポーターに依頼できる事業)の利用登録を行ない、今後は子どもの送迎時にサービスを利用する予定だという。

「送迎ができない保護者に対して代替の措置を示してほしかったです。子どもたちも、外遊びが禁止されている上に行き場所もなく、ストレスを溜めています。共働き世帯が増えていますし、来年や再来年以降に同じことが起きた場合に備えて、なにか対策を検討していただけたらと思います」

「スクールバス」や「スクールタクシー」による対応も

こうした状況に行政側はどう対応しているのか。秋田県教育庁保健体育課の担当者は次のように話した。

「市町村や学校の判断に応じて、スクールバスによる送迎を行なっているところもあります。運行にあたっては、今までは決められた集合場所から子どもたちが乗車していましたが、子どもたちの家の目の前で乗り降りをするという対応に変えた学校もあります」

なかには五城目町のように「スクールバス」から「スクールタクシー」での対応に切り替えるなど柔軟な対応を取る地域もある。しかし、すべての地域や学校でそうした対応を実施しているわけではないという。

「バスやタクシーでの送迎を行なっていない学校もありますので、その場合は保護者に送迎をお願いする形になってしまいます。その場合でも、普段は車の乗り入れを禁止している学校の敷地内に保護者の車を乗り入れてもらって、いわば“ドライブスルー方式”で子どもたちを乗り降りさせたりもしています」

県では、ほかにも警察やPTA、警備会社などによる巡回を強化しているという。

「県や各市町村、各学校でできることは対応しています。今年度これだけクマが出没していても、現時点では子どもたちのケガや事故は発生していません。

学校だけではなく、保護者や地域の方々の協力があって、この状況を保てているのではないかと思います」

こうした状況の中で、高市早苗総理は12日、参議院予算委員会で「政府として近くクマ被害対策施策パッケージを取りまとめる」と答弁。補正予算も活用して必要な施策を順次実行しながら、自治体が必要とする経費に対する支援も拡充していくと表明した。

現場ではすでに日常生活そのものが立ち行かなくなっている。国による早急な対策が求められる。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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