スポーツジムで汗を流していた夫が、激しい腹痛を訴えて緊急入院し、診断がつかないまま三ヵ月、不安と苛立ちに苦しんだ後、ようやく判明したのは「原発不明がん」という聞いたこともない病名だった。しかも、余命はわずかと言われる……。
第22回開高健ノンフィクション賞最終候補作『見えない死神』(東えりか 著、下山達 医学監修・解説)の魅力を医師・作家の久坂部羊が解説する。
かけがえのない記録
スポーツジムで汗を流していた夫が、激しい腹痛を訴えて緊急入院し、診断がつかないまま三ヵ月、不安と苛立ちに苦しんだ後、ようやく判明したのは「原発不明がん」という聞いたこともない病名だった。しかも、余命はわずかと言われる。
こんな過酷な状況があるだろうか。妻は夫の回復を祈って懸命に情報を集め、あらゆる手段を講じようとするが、コロナ禍による面会制限、病院の年末年始休暇、おまけに病棟の引っ越し、医療者の不手際、連絡ミスなどの不運が重なる。
東(あづま)えりかさんの『見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録』は、読む者を慄然とさせるほど凄まじい家族看護の記録である。本書に綴られたあまりに気の毒な状況に、医療者の端くれとして、歯がゆい思いと申し訳なさを禁じ得なかった。患者と医療者のギャップが作り出す不幸を、一刻も早く解決しなければ、同様の苦しみは繰り返されるだろう。何事にも運不運はあり、医療が予定通り進むのは実は「幸運」なのだが、患者側はそうは思わず、不運が紛れ込むと不安、怒り、苦しみが湧き上がる。医療者はもっと最悪の事態を伝えるべきだが、自己否定・医療不信にもつながるのでなかなか言えない。
本書は医療の現実を伝えつつ、治療を断念し、在宅での看取りを覚悟する過程を冷静に書き記すことで、人の最期の迎え方について、重要な示唆を与えてくれる。多くのことをあきらめざるを得ない中で、いちばん大切なものを選び、精いっぱいそのことに専心する。
東さんが夫と自宅で過ごした十八日間は、かけがえのない時間になったはずだ。
見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録
東 えりか
夫の突然の腹痛、そして入院。検査を繰り返すが、原因は不明。
ようやく診断がついたときには、余命わずか数週間。
「原発不明がん」とは、いったい何なのか?
第22回開高健ノンフィクション賞最終候補作
【各界から絶賛の声、続々!】
理不尽極まりない、まさに「見えない死神」。明日は我が身。震え上がりながら一気に読んだ。
――成毛眞氏(「HONZ」代表)
哀しみの底に沈みながらも、決して諦めない。検証し続ける。その圧倒的な想いの強さに胸うたれる。
――小池真理子氏(作家)
著者は、愛する人を「希少がん」で亡くすという個人的な体験を病の普遍的な記録にまで昇華させた。苦しみを同じくする人々や医療難民にとって必見の情報と知見がここにある。
――加藤陽子氏(歴史学者)
【本書の内容】
ある休日、夫が原因不明の激しい腹痛に襲われた。入院して検査を繰り返すが、なかなか原因が特定できない。ただ時間ばかりが過ぎ、その間にも夫はどんどん衰弱していく。
入院から3ヶ月後、ようやく告げられたのは「原発不明がん」の可能性、そして夫の余命はわずか数週間ではないか、というあまりにも非情な事実だった。
この「原発不明がん」とは、一体いかなる病気なのか?
治療とその断念、退院と緩和ケアの開始、自宅での看取り……。発症から夫が亡くなるまでの約160日間を克明に綴るとともに、医療関係者への取材も行い、治療の最前線に迫ったノンフィクション。

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