介護問題や相続の資産やお金、お墓など、親子で話し合うべきことは多い。後回しにしていては「いざ」というときに困るが、大事な話ほどなかなか切り出しにくいものだ。
吉田肇著『介護・老後に困る前に読む本』より抜粋、再構成して、上手い切り出し方と早めに話し合うことの大切さを具体的な実例とともにお届けする。
親の本音を聞くための上手い話し方
なかなか切り出しにくい話は、「自分はこうしてほしいんだけど……」と直接伝えるよりも、当事者ではない立場の人が持ちかけたほうがスムーズに進むことが多いです。
例えば、親は長男・長女のふたりの子どものうち、息子よりも娘に介護してもらいたいと内心考えていて、子どもたち兄妹の間でも「娘の私がいずれは親と一緒に住んで面倒を見たほうがいいと思う」「ありがとう、俺もできる限り手伝うから」と相談ずみだとします。
でも、娘が直接親御さんに「介護が必要になったら兄貴より私と同居するほうがいいよね?」と聞くと、親御さんは迷惑をかけたくないという思いから、「介護が必要になったら施設に入れてくれればいいよ」とついはぐらかし、結局大切な話が先送りになってしまうのです。
ですから、当事者以外のキーパーソン、この場合は息子がキーパーソンとして、「介護してもらうなら妹のほうがいいかな」と水を向け、「できればそうしたいけど、迷惑をかけたくないし……」という親の本音を聞き出していくと、その先に話を進めることができます。
さらに、本音を聞き出すうえでは、「人から聞いた話」として話題を振るのも効果的です。例えば、
子 「親が亡くなったあとに借金があることがわかって困った友人がいるんだけど、うちは大丈夫だよね?」
子 「会社主催のセミナーで、介護離職の問題やよくある介護の悩みについてこんな話を聞いてきたんだけど、他人事じゃないと思ったんだよね。自分は仕事を辞められないので、どうするのがいいか相談に乗ってくれる?」
子 「お母さんが好きな俳優の○○が、『夫婦で〝断捨離〟をした』とラジオで言っていたよ。やっぱりカッコいいね」
親 「テレビで最近の老人ホーム事情を特集していたんだけど、自分が入るならこういう老人ホームがいいな。どう思う?」
親 「ご近所の○○さんは、近々息子さん夫婦と同居するそうで、二世帯住宅にリフォームしたのよ。お邪魔したら今時のおしゃれですてきなおうちだったわぁ」
親 「私の母はお姑さんの介護で大変な苦労をしたの。私は同じ苦労をかけたくないので、二世帯同居はしたくないのよ」
などのように、自分が話し合いたいと思っている話題に近い「人から聞いた話」を振りながら、将来の不安や希望を親子で早めに確認し合っておきましょう。
答えを急がず、段階的に準備する
親御さんに介護経験がある、もしくは身内や知人から介護の大変さを聞いているようであれば、お子さんから「どういう介護の大変さがあるの?」と積極的に聞いてみましょう。親御さんが介護の大変さを知っているからこそ、「自分たちはそういう苦労をしたくないよね。お互いに困らないためにできる準備って何かな?」と、具体的な備えについて一緒に考えていくきっかけになります。
答えを急がず、時間をかけて段階的に準備をすることも大切です。親と子が遠距離に居住している場合は、盆暮れ正月などお子さんが帰省するタイミングをとらえて、「今回はかかりつけ医について」「次は住まいの今後について」「次の次は介護の備えについて」などと、比較的話題にしやすいテーマから段階的に親子で共通認識を増やし、最終的には、話題にしづらいけれど極めて重要な、「家財整理」「資産」「相続」などについて親御さんの意思を確認し、お子さんはそれに応じた準備を進めていきましょう。
親子が同居ないしは近居の場合も、敬老の日や家族の誕生日、近しい親族の命日や回忌法要など、親子が寄り添えるタイミングを見つけ、やはり何回かに分けて段階的にどんな備えをすればいいのかを共有しましょう。
これは私の例ですが、私の父が眠っている吉田家先祖代々の墓は、石川県金沢市にあります。私は姉とふたり姉弟で、姉は嫁いで他家の人となりましたので、母が亡くなった場合、私が母に代わって墓守りを担うことになります。
ただ、私のふたりの子どもは娘で、私に何かあったときに墓守りを任せられるかどうかを早いうちに確認しておく必要があると考えました。母が吉田家のお墓をできる限り守ってほしいと希望しているからです。また、母は自分の戒名を生前に決めておくことも望んでいました。そこで、母と私と妻の3人でお墓のある金沢の寺の住職を訪ね、まず戒名を決めていただきました。
それからしばらくのち、今度は私と妻と娘たち4人で金沢に観光旅行をしました。
さらにその後日、娘たちに墓守りを引き受ける意思があるかどうか、もしも引き受ける意思があるなら、墓守りにかかる費用を残しておくことを伝えました。結果として、下の娘が引き受けてくれることになりました。そこで今度は、母、私、妻、次女の4人で金沢の寺に赴き、ゆくゆくは次女が墓守りを担うことを住職に伝えました。
また、次女が次の世代に墓守りを引き継ぐことが難しいと判断した場合は、現在のお墓から寺の共同墓地へ改葬してよいことを全員で確認し合いました。これは一般論としても、親子で早めに確認しておくべきポイントです。
私たち家族が墓守りについて検討し始めてから方針が固まるまでに3年くらいかけたと思います。こうした手順を踏んでおかなければ、吉田家の墓はいずれ無縁墓になっていたでしょう。それは母の希望に反しますし、お寺にとっても迷惑です。
このように、時間をかけて段階的に準備をする必要があるからこそ、いかに早めに行動を起こせるかが重要なポイントになるわけです。
文/吉田肇
『介護・老後で困る前に読む本 親子で備える知恵と早期の選択で未来を変える!』(NHK出版)
吉田肇
失敗しない将来への備えは、親子で元気なうちに話し合い、自分に合った選択をすることがベスト。
介護現場歴30年以上、介護支援専門員、認定介護福祉士、宅建士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を有する著者が豊富な知見や事例、データをもとに、「百人百色」のさまざまな介護・老後の課題から自分にとって最適な選択へと導くための知恵や実践すべき行動から、親子で話しづらい話題をスムーズに行うコミュニケーションのヒントまで情報満載に紹介。
自分の現状を確認して、自分に合った今後の最適解を導き出せるチェックリスト付き。

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