コメ余りなのに価格は高止まりしている。令和の米騒動は、生産者、流通業者、消費者の間を不器用に行き来するコメの“窮状”を浮き彫りにした。
「コメの売上げは落ちていません」「外国米を購入する層が大多数ではない」
秋葉氏は1992年に東京都練馬区関町に1号店を出店、現在は都内に9店舗を構えるまでに育てたカリスマ経営者だ。まず、最近盛んに「コメ余り」が報じられているが、実際に店頭でもコメはダブついているのだろうか。
「新米が出たばかりのこの時期にスーパーや量販店にコメが山積みにされているのはごく普通のことです。
むしろ、この時期に店頭の棚にコメがない状況のほうがおかしいですから。ウチで言えば、コメが極端に売れなくなったなんてことはありませんし、通常通りに売れていますよ。
問題は、高くても売れているから高値を更新し続けているということだと思いますね。一時的にコメが高いからうどんやパスタに切り替えるという発想はあったと思いますけど、やはり令和の米騒動で手に入らない時期があった影響から、『おコメ人気』が今でも続いていると思います。実際にコメの売上はまったく落ちていません」
消費者にコメ離れが進んでいると見る向きもあるが。
「そのような状況は現場では感じません。
ウチでは特にコシヒカリと同等以上の品質と評判の埼玉県産『彩のきずな』(5kg3980円)が売れています。この流れを見ても、消費者はより安いコメを選ぶ傾向にあり、『コメの価格は高い』と感じながらもなるべく『日本のおいしいお米を食べたい』という思いの方が多いのでしょう。
安いからという理由で外国米を購入する層が大多数という状況にはなっていないと思います」
「適正な価格帯は5kg3000円前後」「高値更新が続くと来年の価格が…」
とはいえ、高値が続けば消費動向にも影響が出ることは必至だ。適正な価格帯はどのあたりとみているのか。
「数十円単位で高値更新をし続けている今の価格は、安値で苦しめられてきたコメ農家にとっても『(高くて)ありえない』水準でしょう。底値から2倍近くの価格になり、コメ農家の収入も1.5倍ほどになっているそうです。
それゆえ、ほとんどの生産者がどこかで暴落することを懸念しているし、最も警戒しているのは消費者が日本のコメを敬遠するようになるまで高値更新が続くことでしょう。そうなれば輸入米が割り込むスキになるわけです。
不思議なもので、コメに関して消費者は一度食べつけた銘柄を買い続ける傾向があるんですよ。今はまだ日本のコメが売れているようですが、輸入米に舌が慣れ始めたら、かなりの層がそちらにシフトしていく可能性はあります。
だから、生産者と消費者の視点からバランスのとれた価格に早く落ち着くことが非常に大切ですね。今の価格は家計を直撃しているのは間違いないです。僕はバランスがとれている価格帯は5kg3000円前後なんじゃないかと思いますね」
均衡の取れた適正な価格帯にコメを引き戻すことは可能なのか。
「異常気象などがなければ来年の秋の新米は3000円前後にはなる可能性はあるでしょう。ただ高値更新が続いて本当にコメ離れが起こってしまった場合、来年の初夏に今年の新米の価格がガタガタと落ちることも考えられる。
例年、6月後半くらいにコメの価格を下げて特売をやろうという話が出るんですよ。これは新米出荷に向けて業者が倉庫の在庫をある程度減らしたいという思惑からやることが多いんです。ここ最近はなかったんですが、異常高値が続けば特売、さらに暴落もあるかもしれません」
過去には実際、消費者のコメ離れが取り沙汰された。今回はどうか。
「10年以上前、朝食は米食よりパン食の方が多いという統計が出て、そのあたりからコメの消費が底値を這うようにしてずっと推移してきました。少子化の進行でおコメを食べる人の母集団が減り、若者の間で炭水化物抜きダイエットが浸透していったということも大きいと思います。
それが令和のコメ騒動を経て、コメは手に入りづらい『高価な食材』という印象に変わりつつあります。
「政府は生産量しか見る気がない…補給金では利益は出ません」
この間、JA(農業協同組合)や全農(全国農業協同組合連合会)が果たした役割をどう評価しているか。
「今年はJA、全農が頑張りましたね。熊本県の阿蘇での概算金(コメ農家から集荷する際に発生する前払い金)の発表の場で私も講演をしたのですが、彼らは『自分たちがしっかりしないから色々な商社が入り込んで統一性がなくなり、大変になる。だからJAがしっかりした概算金を出すことによって、JAにコメが集中して計画的に社会に行き渡るように販売ができるんだ』という趣旨の発言をしていました。
JAも卸業者と一緒で、在庫を抱えている状態で市場の相場が下がれば価格を下げざるをえなくなるし、いつ値崩れを起こすかわからないです。来年、極端に概算金を下げることはしないでしょうが、さすがに今よりは下がるでしょうね」
猫の目のように変わる農業政策も、農家や消費者を痛めつけてきた。
「僕が一番問題視しているのは、コメ作りに限ったことじゃありませんが、政府は生産量しか見る気がないということです。本来は個々の生産者の年齢を見て、5年後、10年後を想像した時にその人たちがまだ農業ができるのかをちゃんと考えた政策じゃないとダメだと思っています。
農家は天候、特に異常気象に左右されるので、そうした際に大きく赤字にならないように調整していかないと基本的には成り立たない。
もちろん野菜指定産地制度など、野菜の価格が暴落時の補助金などもありますが、申請の手間もあるしスピーディーじゃない。補助金では利益は出ませんし、市場に持って行って赤字になるよりはいいという程度のものです。
政治家は物価高対策は給料を上げればいいと思っているようですが、給料が増えたから高いコメや野菜を買おうという発想になる人はあまりいないでしょう。結局、買われなければ余って相場は下がります。多くの農産物は生産抑制できないんです。
一昨年の秋は大根が豊作過ぎて、農家が『市場に大根を捨てに行く』と話題になりました。供給過多に陥って売れない状況になり、といっても廃棄するとなるとお金がかかるから市場に持ち込んだんです。大根2000ケースを引き取るのに市場が100円とか200円を支払ったそうですよ。
無料でもらうのは生産者に申し訳ないからという理由のようだけど。その影響で、去年から大根農家が減った上に猛暑が重なり、今年は大根が高騰していますよね。農業は生産量だけでなく、様々な部分に目を向けていかないといけないと思いますね」
生産者と消費者を守り、食料自給率を高めて国力の維持に努める。それが政府に求められる至極当たり前の仕事ではないのか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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