毎晩家にやってくる謎のネコ――首輪で“メッセージ交換”して判明した真相 2025年春にSNSをにぎわせた“あの通いネコ”のその後
毎晩家にやってくる謎のネコ――首輪で“メッセージ交換”して判明した真相 2025年春にSNSをにぎわせた“あの通いネコ”のその後

毎晩、家の玄関に通ってくる謎のネコ。首輪につけたメモで素性が判明し、ついには保護へ──2025年春に話題となった投稿の“その後”を追った。

毎晩、家に現れる謎のネコ

2025年4月。Xに幸せをもたらした投稿動画があった。

「玄関開けたらヨソのお家の子がいました」

玄関前で、どっしりと座る1匹のキジ白のネコ。あまりにも堂々としているため、この家で飼っているネコかと思いきや、見ず知らずのヨソのネコなのだという。玄関前でじっとたたずむ姿は、まるで家に入りたそうにも見える。

それからというもの、毎日この家に来るようになり、玄関で投稿者に甘えるように鳴き続ける。警戒しているのか、心を許しているのか、微妙な距離感とぎこちなさを感じさせつつ、少しずつ玄関の中へ。

「毎日来るじゃん ちょっと声が大きいですわよ」

「昨日も0時過ぎにやってきました」

リアルタイムでこの様子を実況していたのが、投稿者の「腹よわボーイ」さん。これらの投稿は瞬く間に話題となり、それぞれの投稿がたくさんの「いいね」を獲得して拡散した。

毎晩のようにやって来ては、玄関前で鳴いてゴロゴロするネコ。お腹を空かせている様子でもなく、ただ遊びに来ているらしい。人慣れしている様子から、どこかのお宅で飼っているネコのようにも見えるが、首輪もなく、その素性はわからない。

腹よわボーイさんがこのネコを最初に見かけたのは2024年の秋。

月1~2回の訪問ペースだったが、2025年の春先から“ほぼ毎晩”に変化した。

「だいたい21時以降に来て、1~2時間程度玄関前でゴロゴロしていました」

かなりのおしゃべりで、よく鳴く。しかも、ただ鳴くのではなく、

「とても長く『にゃーーーーーーーーーーーーーーーー』と鳴くのが印象的」だったため、この頃は“ニャーちゃん(仮)”と呼んでいたそうだ。

SNSではこのネコが話題になる一方で、「迷子なのか?」「誰かの飼い猫なのか?」と、コメント欄には心配と好奇心が入り混じった声があがりはじめた。

首輪にメッセージをつけてやり取りを開始

「保護してほしい」という声もあったが、腹よわボーイさんが最初に見かけたころ、実はこのネコは首輪をしていた。しかし、毎晩通ってくるようになったころにはなくなっていた。

「誰かの飼い猫かもしれない」勝手に保護してご近所トラブルになるのは避けたい。一方で、もし完全な野良化・地域猫化しているのなら、外で暮らすリスクも高いので保護したい……。

その間で揺れながら、どうにかして世話をしている人と連絡を取れないか悩んでいたところ、X のリプライで「首輪に手紙を付けてみれば?」というアイディアが寄せられた。そこで実行したのが「伝書鳩」ならぬ「伝書猫作戦」だ。

「リプで『首輪に手紙を付けてみれば?』とアイディアを頂き、『伝書猫作戦』を実行してみることにしました」

爪が鋭く、最初は首輪をつけるのは簡単ではなかった。流血もしつつ、ようやくつけることができたのは、通いネコの投稿が話題になってから10日後のこと。

それから2日後の5月4日。

再び現れたネコの首輪には手紙がなくなっていたが、返事はなかった。返事をくれなかったのか、それともどこかで落としたのか、誰かに外されたのか……。もう一度手紙を付けてみると、5月7日、ついに返事がついた首輪をつけたネコがやってきた。

返ってきたメモの内容から、ネコの素性が判明した。

・近所でお世話されていた外猫が産んだ5匹の子猫のうちの1匹であること
・その家にはすでに数匹の猫がおり、これ以上室内飼育が難しかったこと
・餌や去勢手術などを行いながら、外で面倒をみていたこと
・内気な性格で他の猫とうまく馴染めずにいたこと

そして何よりも大きかったのが、

「良ければぜひ保護してあげて欲しい」

という言葉だった。

「というわけで、準備が整い次第保護します!」

腹よわボーイさんの投稿にSNSは沸いた。

「やったぁぁぁあ!これは運命」「猫ちゃん良かったです」「互いに末永くお幸せに…!」

こうして、約20日に及ぶ一連の投稿は、“ネコに選ばれた物語”として広く共有された。

ここまでが、2025年春にタイムライン上で追われた“通いネコ騒動”の大きな山場だった。しかし、通いネコの物語は、まだ終わりではなかった。

あのバズから半年以上… 通いネコの現在

保護を決めた腹よわボーイさんの家には、すでに先住ネコの「むぎ」がいた。新しくネコを迎え入れるには、相性はもちろん、病気の検査など、いくつかの段階を踏む必要がある。まずは、この通いネコのことを、むぎにちなんで「おこめ」と名付け、準備が始まった。

病院で感染症の検査やワクチン接種を済ませ、しばらくは別室での隔離生活からスタート。

家に迎え入れたおこめはどのような反応を見せるかと思いきや、とにかく物怖じしなかった。

「初日からすぐにくつろいでいましたが、よほど遊んでほしかったのでしょうか、鳴きすぎて声が魔女みたいになっていました……(笑)」

“通いネコ”時代から変わらず、とにかくおしゃべりだった性格が、そのまま家の中でもあらわれたらしい。第一のハードルである「家に慣れる」は、ほぼ無傷で突破した。

そして、最も緊張した瞬間──先住猫との対面。実は先住ネコのむぎ、おこめがまだ通いネコとして玄関に来ていた頃から、2階の窓越しに姿を眺めていたという。大きな鳴き声にも反応していたそうで、ある意味では“顔だけは知っていた”関係だった。

7月22日。2匹が実際に対面した。

「実際に対面したときには、むぎはキャットタワーの上に逃げて様子を見つつ、しばらくするとおそるおそる近づいてチューしていました」

これが、2匹の関係の始まりだった。並んで見ると、本当に模様がよく似ている。むぎの名前にあやかって「おこめ」と名付けた理由もここにある。

「2匹とも模様がよく似てて、今でも間違えそうになります」

見た目は似ているが、性格は対照的。

おこめはとにかくおしゃべりで物怖じしないタイプ。対してむぎはどちらかというと寡黙だという。

こうしておこめはしっかりと腹よわボーイさんのおうちネコとなった。それから約4か月。現在の2匹の様子はというと……。

なぜこの家に「おこめ」は通いはじめたのか…

「基本的に仲良しですが、お互いマイペースなのであまりじゃれ合ったりはしませんね。たまに一緒にくっついて寝ていると微笑ましいです」

「ときどき本気の喧嘩をするときは、たいていむぎのほうが最終的に矛を納めてあげているような感じがしますが、そもそも最初はむぎの方からおこめにちょっかいをかけているような気もします。好きな女の子にイジワルをしちゃう男子のような感じでしょうか(笑)」

“好きな女の子に意地悪しちゃう男子”。その比喩が妙にしっくりきて、2匹の距離の近さが自然に伝わる。

「おこめは相変わらずおしゃべりで、寡黙なむぎと対照的です。私達夫婦が寝る時間になって部屋の電気を消すと、二人で運動会(追いかけっこ)を始めますので騒がしいです」

おこめのお気に入りのポジションは腹よわボーイさんの妻の枕の上で、寝ている妻の頭の上にいることが多く、むぎは腹よわボーイさんの腕枕で寝ているそう。だが、たまに夜中に二匹のポジションが入れ替わっていることがあるのだとか。

もはや、“家族の風景”としか言いようがない。おこめは運命に導かれるように、腹よわボーイさんの家の子になったような気がしてしまう。

ではそもそもなぜおこめは、腹よわボーイさんの家に通うようになったのか。

「特に思い当たるところはありませんが、強いて言うなら、うちはお寺でして、春先の寒い時期にお堂の床下なんかが過ごしやすかったのかもしれません」

ただ、ネコは飼い主を選ぶともいう。もしかしたら2024年の秋から、おこめは静かにいろんな家を見て回っていたのかもしれない。

そのうえで、「ここなら」と思って、春から通い始めたのだとしたら――。偶然のようでいて、どこか意図的な。そんな小さな選択が重なって、今の暮らしにつながっているのかもしれない。2025年春に話題になったあの出来事は、あのときで完結したのではなく、今もずっと更新され続けている。

取材・文/集英社オンライン編集部

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