高市早苗総理の台湾有事を巡る「存立危機事態」発言を発端として、中国政府が日本への渡航自粛を呼び掛けて10日ほどが経過した。日本国内では一部の宿泊施設でキャンセルが相次いでいるが、観光産業全体を揺るがすような大きな問題には至っておらず、中国人観光客の対応も冷静なようだ。
しかし、中国政府の反発は根強く、問題は長期化する恐れがある。皮肉にも、中国人観光客減少の影響を強く受けそうなのが、高市首相の地元である奈良県だ。
宿泊客増加で地元の観光業から期待された矢先に…
2024年の奈良県の観光客数は1487万人で、前年から2割増加した。注目すべきは「宿泊客数」が203.8万人で、過去15年で最高値となったことだ。京都や大阪という強力な観光地に隣接する奈良は、不本意にも「定番の日帰り観光地」と言われてきた。
しかし、「平城遷都1300年祭」が実施された2010年を上回る数字を達成したことで、奈良の観光業界は色めき立っていた。
この宿泊客数を押し上げていたのが外国人観光客だ。その数は44.5万人と過去最多で、全体の2割以上を占めている。そして外国人宿泊者のシェアで45.2%と半分近くを占めているのが中国人観光客だ。
宿泊の有無で観光地の経済効果は天と地ほどの差がある。奈良市内の観光消費額で、宿泊客の単価は3万1754円。日帰り客は4938円だ。宿泊客はホテル・旅館や飲食店、土産物店の消費を大きく押し上げるのだ。
奈良は観光業の中国依存が他のエリアに比べて著しく高い。
2025年8月における奈良県の外国人宿泊者数の中国人観光客の割合は44.7%。2024年の年間の数字とほとんど変わっていない。京都は31.2%で、東京が28.8%、北海道は17.1%だ。
京都や東京、北海道は全都道府県の中でも外国人宿泊者数そのものの数が多い。京都は全国平均の5.3倍、東京が15.6倍、北海道は3.2倍だ。いっぽう、奈良は0.1倍である。平均の10分の1程度しかない上に、中国人観光客が半数近くを占めているのだ。
それが消失、または先細りする影響は甚大だ。
今後、日中関係が冷え込み、問題が長期化すればするほど、奈良はその影響を受けやすいというわけだ。
中国依存から脱却すればいいと口で言うのは簡単
小野田紀美経済安保相は、11月18日の記者会見で中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけたことに対して、「気に入らないことがあれば経済的威圧をしてくる」「観光に対してもリスクではあるので、リスク低減を日頃から考えながら経済を回していけたらいい」と語った。
中国は福島第一原発の処理水の海洋放出に伴い、2023年に日本産水産物の全面禁輸措置を講じた。こうした歴史を見ても、観光業が過度な中国依存を控えるべきだというのは頷ける。
しかし、奈良県はアジア圏に依存しないインバウンド観光地づくりを本格化していたのだ。
奈良を訪れるアジア圏の観光客が「自然や風景の見物」「伝統的日本料理」を重視する一方、欧米圏の観光客からは「説明の充実度」が影響する「歴史的建造物」「日本庭園」の見物が上位を占めていた。
そのため、奈良県は日立製作所と共同で県内の周遊・滞在観光を促進するため、AIで旅程を作成するWEBサービス「ならいこ」を2024年12月にリリースしている。欧米圏の観光客を中心として「ローカル文化体験」が人気であることを背景に、高付加価値なインバウンド観光地づくりを推進している。
しかし、観光産業は外からやってくる人を受け入れるビジネスである。観光客の意向や行った人の口コミ、観光資源あってのものなのだ。水産物の輸出のように、取引先を変えて何とかできる産業ではない。奈良県のような取り組みが成果を出すにはどうしても長い時間がかかる。
リスクを回避したいのはやまやまだが、全国的に観光客の少ない観光地や宿泊客が増えない現状に苦しむホテル・旅館は、何とか売上を確保しようと旅行代理店などに営業をかけ、団体客を獲得するほかないのだ。
「観光産業」が成長戦略から消えた高市内閣
一部報道では中国人観光客の渡航自粛の影響は小さいなどと言われている。しかしそれは東京や京都など人気の観光地だ。
今回の渡航自粛の騒動を受けて、SNSでは「中国人観光客によるオーバーツーリズムが解消される」などと、肯定的な意見も散見される。しかし、この問題は混雑する観光地よりも、目立たない観光地が苦境に立たされることになるのだ。
さらに、観光業は中国リスクを回避することよりも、国内の観光客獲得に改めて目を向けなければならない。日本においてもエコツーリズムが注目を集めるようになった。自然や歴史、文化など地域固有の資源を活かした観光のことだ。観光客が押し掛ける場所ではなく、意外な場所の非日常体験を楽しむことに特徴がある。
ただし、地方自治体や民間企業だけでできることは限られる。安倍政権下で空港の発着枠、免税店を拡充して海外観光客の増加に弾みをつけたように、政府の後押しが必要だ。
高市内閣の成長戦略には、「観光立国」や「地方創生」というキーワードは出てこない。日本の観光業が置き去りにされないか心配だ。
取材・文/不破聡

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