韓国で中国人に対するヘイトスピーチが横行し、“嫌中”が社会問題になっている。数年前から一部で中国に対する反感がくすぶっていたところに、昨年12月に内乱罪で逮捕・起訴された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が主張した中国についての「陰謀論」が引き金となり、問題が深刻化した。
「『中国人を追放しろ』と叫び、中国人を罵倒して回っています」
嫌中デモは日本人や中国人観光客から人気が高いソウルの明洞(ミョンドン)や、中国東北部に多く暮らす「朝鮮族」から韓国に移住した人が集まるソウルの大林洞(テリムドン)で頻発している。現地の記者がその実情について話す。
「参加者は『中国人を追放しろ』と叫び、中国人を罵倒して回っています。日本の新大久保でかつて起きた“嫌韓デモ”とそっくりですが、韓国や米国の国旗を持ち、『天滅中共(天が中共を滅ぼす)』と書かれたTシャツを着たりしています。気に食わない相手に『お前は中国人か』と言って殴りかかったりする事件もあちこちで起きていると報じられています」(韓国記者)
韓国ではインバウンド拡大を狙い、今年9月末から中国人団体観光客へのビザ免除が始まった。しかし、その後ソウルにある朝鮮王朝時代の最大規模の王宮「景福宮」で中国人観光客が大便をして摘発されたことがデモ参加者の“嫌中”感情を刺激している。
韓国国内では、ネット上でもデマ交じりの中国人非難があふれている。どうしてこうなったのか。
韓国にとって中国は朝鮮戦争(1950~53年)で戦った相手だが、1992年に国交を正常化すると経済的な結びつきが一気に強まり、2000年代に入ってからは最近まで最大の輸出先だった。
「10年ほど前までは中国の将来性を期待して明洞にある中国人学校に子どもを送りたがる親が多く、韓国人が生徒の半分以上を占めていると言われるほどの人気でした」(中国駐在経験者)
その中国に警戒心が高まったのは2017年ごろだ。
「この年に、中国の弾道ミサイル撃墜が狙いとみられる米軍の『THAAD(終末高高度防衛ミサイル)』が在韓米軍基地に配備されました。
これに反発した中国が韓国に圧力をかけたんです。
「中国が介入した不正選挙だった」前大統領のウソでデモへ発展
その感情を刺激し火をつけたのが、昨年12月3日夜に戒厳令を敷こうとして失敗した当時の尹錫悦大統領だ。
「尹政権は2024年の総選挙で与党が大敗し、妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏のスキャンダルもあってガタガタでした。そこで尹大統領は憲法を停止して野党指導者らを拘束し、独裁体制を敷く“セルフクーデター”を狙いましたが、国会の抵抗に軍部隊が理解を示したため不発に終わりました。
これで『内乱罪』で逮捕、起訴され大統領職も弾劾・罷免されたのですが、その過程で尹被告が、大敗した総選挙は『中国が介入した不正選挙だった』と言い始めたんです。
これは韓国で『極右』とみなされるYouTuberたちが一部で唱えていた陰謀論で、何の証拠もないデマだと当局も認めています。YouTubeにハマっていた尹被告もこれを信じたとみられていますが、この尹被告の言葉を聞いた支持者が『中国が韓国政治を乗っ取ろうとしている』と言い始め、それが嫌中デモに発展しました」(前出・韓国記者)
ビザ緩和前の9月には韓国政府の行政データを保管する「国家情報資源管理院」で火災が起き、サーバーが焼失して多くのデータが破損した。
この火事の原因を巡っても「入国管理システムをマヒさせて身元不明の中国人を入れるための準備だ」「不正選挙のデータを消した」「中国に特殊部隊が入って来る」とのデマが飛び交った。尹被告を今も支持する保守系政治家らがこうしたデマに乗った発信をしていると韓国メディアは伝えている。
なかにはこうした風潮に便乗して、日本人を相手にひと稼ぎをたくらむ動きも。
「日本人向けのYouTubeで偽情報を流したとして、韓国警察は『韓国人先生デボちゃん』と名乗る30代の韓国人YouTuberを電気通信基本法違反の疑いで取り調べたと11月24日に韓国メディアが報じています。
『韓国で下半身だけの遺体37体が見つかり、非公開の事件は150件に上る』との内容のデマを動画で拡散した容疑ですが、これらは中国人が殺人や臓器売買に関与して起きた事件だと主張する荒唐無稽な内容で、韓国の事情をよく知らない日本人を過激な主張で釣って閲覧数を上げようとしたとみられています」(韓国記者)
明洞で行なわれるデモの参加者は数百人規模にのぼる。
デモ参加者は中国国旗や習近平国家主席の顔を描いた横断幕をビリビリに破るパフォーマンスも展開している。中国との関係悪化を避けたい李在明(イ・ジェミョン)大統領は、「あれのどこが表現の自由なのか。騒乱だ」と激怒し、対策を取るよう指示した。
取り締まりのための制度改正も検討されているが、尹錫悦前大統領の支持者が中心のデモ隊は現政権を批判する材料として反中国感情を煽っている側面があるため、デモ規制が「政治的弾圧」との批判を招きかねず、すぐには問題が収まりそうにない情勢だ。
しかし、何があろうと誤情報の流布やヘイトスピーチは許されるものではない。一刻も早い収束を願いたい。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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