1900円のフリースが“キムタク効果”で爆売れ! なぜ53歳の木村拓哉は今も“かっこいい”のか…10年ぶりの『テレ東』出演で見えてきた理由
1900円のフリースが“キムタク効果”で爆売れ! なぜ53歳の木村拓哉は今も“かっこいい”のか…10年ぶりの『テレ東』出演で見えてきた理由

テレビはまだまだ終わらない。心に“ひっかかった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。

今回はテレビウォッチャーの「飲用てれび」が、テレビスター・木村拓哉に注目する。なぜ、ただ、彼が着ただけの服が爆売れするのか。そこには、テレビの中で30年以上更新され続けてきた“キムタク“という尺度がある。

「かっこいい=木村拓哉」を生み出したテレビ

テレビに映る芸能人は「普通の人とは違う」。きれい・かわいい・おもしろい・歌や演技がうまい――そういった芸能人が芸能人たる評価は、必ずしも明確ではない。そんな中でテレビでは例えば、“かわいい”を「目が大きい」「顔が小さい」といった、誰にでも共有できる尺度に置き換えたりする。

一方で、“かっこいい”にはこれといった共通尺度がない。とりわけ男性芸能人においては、何を基準に“かっこよさ”が成立しているのか定義されてこなかったように思う。

そこで木村拓哉である。30年あまり「かっこいい」を更新し続けてきた彼は、果たしてどんな尺度で承認されてきたのか。

木村は近頃、主演映画『TOKYOタクシー』のPRもあって、いくつかのテレビ番組に出演している。そのひとつが、11月20日放送の『秋山ロケの地図』(テレビ東京系)。町の人が白地図に書きこんだ「行ってほしい場所」に、ロバートの秋山竜次とゲストが訪れる番組だ。

行き先はランドマークだったり、名物店主がいる飲食店だったり、時には個人宅だったりする。地元の人たちとの素朴な交流や、そこから生まれる予想外の展開が人気の番組である。

そこに出演した木村だったが、、番組内で彼の「ランク」の高さと番組とのミスマッチがしきりに強調されていた。たしかに、この手の長時間のロケ番組と「木村拓哉」というビッグネームとの間には、明らかなギャップがあるのかもしれない。しかも、木村がテレビ東京の番組に出演するのは約10年ぶりで、単独出演は初だという。

この特別感を盛り上げるように、小雨が降るなかでのロケにもかかわらず、秋山は番組冒頭でこう煽る。「地球の天気なんてどうでもいいですよ。それ以上のこと起こっちゃってるから」。キムタクは、地球すら上書きする存在なのである。

興味深かったのは、木村に遭遇した一般の人たちのリアクションだ。カフェの女性店員は「いやいやいや」と驚きの声をあげ、「近っ、キムタク!」と興奮する。定食屋で木村の後ろに座っていた男性客は「すげぇな、後ろにキムタクがいる」と感嘆し、自宅でピーマンの肉詰めを用意していたお父さんは、まさかの木村の来訪に汗だくになる。

1900円のフリースが“かっこいい”一品になる

子どもが秋山のファンだという家では、秋山への応対は普通だった母親が木村を見るなり「いやー、ちょっと待って!」と逃げ出すのだった。やはりキムタクの「かっこいい」は、世間の大部分にとっては別格なのである。女性だけではなく男性もという点が、他の「かっこいい」男性芸能人との違いを際立たせる。

さらに、乗馬クラブを訪れた際、寒さを避けるため木村は壁に掛けてあったフリースを借りて羽織ったのだが、その姿を見て秋山は、「そこにあったフリース借りただけなのに、それ欲しくなっちゃうってどういうこと?」と驚いていた。18日の『伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評』(テレビ東京系)でも、秋山はこう語っている。

「たまたま壁にある乗馬のおじさんのフリースみたいなのがあったんですよ。(それを木村さんが)たまたま手に取って『これって借りちゃっていいっすか?』って言って、『どうぞどうぞ』って言って、それ着たらめちゃくちゃかっこいいんですよ。それが欲しい! 新作? 何そのフリース!」

実際、『秋山ロケの地図』放送後、このフリースは一部で話題になったという。あるネット記事によると、木村が着ていたのはワークマンの1900円のフリースで、販売サイトでは一時在庫切れにもなったという。かつて主演ドラマ『HERO』(フジテレビ系)で主人公のトレードマークだった定価15万4000円のダウンジャケットを流行らせた威光は、いまだ健在ということか。

木村がたまたま手にとったフリースが、「かっこいい」ものになる。なるほど、逆なのだ。

我々は木村拓哉に「かっこいい」の尺度を当てはめようとしていたが、そうではない。少なくともテレビのなかでは、木村こそが「かっこいい」の尺度なのである。

テレビにおける記号としての「キムタク」は、「トヨエツ」とか「ガッキー」とか「松潤」といった愛称の類ではなく、「メートル」とか「キログラム」とか「ドル」といった尺度のひとつなのだ。

それにしても、ずっと変わらずに盤石の「かっこいい」を維持し続けるのは並大抵のことではない。テレビと木村と視聴者のこの30年あまりの関係は、「かっこいい」の尺度の位置にキムタクがいることを確認しあい盤石にする歴史だったとも言える。

とはいえ、世代は変わっていくのも事実。今回番組に出てきた女子中学生は、木村への対応はあっさりしたものだった。高価なダウンジャケットから1900円のフリースへの変化。それはそのまま日本社会やテレビ業界の停滞と重なっているようにも見えるが、さて。

文/飲用てれび

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