50年続いた「スーパー戦隊シリーズ」終焉へ…仮面ライダー、ウルトラマンと明暗をわけた玩具の売上“一人負け”の真相
50年続いた「スーパー戦隊シリーズ」終焉へ…仮面ライダー、ウルトラマンと明暗をわけた玩具の売上“一人負け”の真相

テレビ朝日系で放送されている”スーパー戦隊シリーズ”が、現在放送中の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」を最後に、2025年度で半世紀の歴史に幕を閉じる。仮面ライダーやウルトラマンと並んで、多くの子どもたちから憧れのヒーローとして認知されてきたスーパー戦隊は、なぜ終了する事態となったのか。

アニメ・ゲームライターの多根清史氏に解説してもらった。

少子化、スマホゲームには勝てない現実

スーパー戦隊シリーズが終了するとの報道に、これまで視聴してきた大人から、いまも視聴している子どもまで幅広い世代から反響があった。「悲しい」、「子どもと一緒に観てた」など、親子そろって思い出となっている人も多いようだ。

そんななか、ネットにはこんなコメントも。

〈戦隊シリーズが終了すると聞いて調べてみましたが、その視聴率の低さに愕然…。これじゃ玩具も売れないから、スポンサーも離れるよね…。今の子供たちはテレビ観ないで何してるのかな…〉

戦隊シリーズの平均視聴率は公式発表がないものの、現在放送中のシリーズ『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』の10月26日放送回の平均世帯視聴率は1.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と非常に厳しい状況となっている。多根氏に戦隊シリーズが苦境を立たされている背景について聞いた。

「これはほかのヒーロー作品にも言えることですが、なんといってもいちばんの理由はメインの視聴者である子どもの減少、すなわち少子化でしょう。それに加えて昨今では無料で遊べるスマホゲームが幼い世代にも普及するなど、競合する娯楽メディアが昭和・平成と比べると格段に増えてきています。

ヒーローものの作品は、玩具の売り上げがかなりの収入源となっていましたが、近年はスマホやタブレットの普及によって、玩具に魅力を感じない子どもたちが増えてきているのだと考えられます」(多根氏)

ちなみにバンダイナムコグループの資料によると、近年の戦隊シリーズ玩具の売り上げは65億円ほどとなっていて、ほかのヒーロー玩具と比較すると、『仮面ライダー』が約300億円前後、『ウルトラマン』が約140~200億円で、戦隊シリーズは突出して売り上げが低くなっている。 

なぜ戦隊だけ玩具の売り上げが低い?

では、なぜ戦隊シリーズ玩具は、ほかのヒーローものと比べて“一人負け”状態になっているのだろうか。

「スーパー戦隊シリーズは、1993年に『パワーレンジャーズ(POWER RANGERS)』というタイトルでアメリカでリメイクされ、その玩具の製造権は当初、日本のバンダイナムコにありました。パワーレンジャーズは世界的ヒットになり、玩具の売り上げも国内のシリーズと合わせると200億円を超え、現在の仮面ライダーやウルトラマンと比較しても肩を並べるほど順調な売り上げを確保していたんです。

しかし、2018年にアメリカの大手玩具メーカーであるハズブロが、日本と一部アジアを除く玩具の製造権を買い取ることになり、バンダイナムコはパワーレンジャーズ関連玩具の売り上げを大幅に失うことになりました。このことがきっかけとなって一気に売り上げが半減し、現在の“一人負け”状態になってしまったと考えられます」(多根氏)

ちなみにハズブロに権利を買収される前のバンダイナムコの2017年決算資料によると、パワーレンジャーズを含むスーパー戦隊玩具の全世界での売り上げは通期で210億円(国内のみの売り上げは88億円)となっており、いまの仮面ライダー、ウルトラマンの売り上げ水準と肩を並べていたことがわかる。

やはり米国企業に玩具など全般の権利を奪われてしまったことが、ほかのヒーロー作品との差を生む致命的な出来事だったようだ。

続けて多根氏はこう指摘する。

「仮面ライダーシリーズは、現在世界同時配信などに取り組んでいて、これから本格的に海外市場を開拓していくとみられます。そしてウルトラマンについても、中国での人気が近年高まってきており、海外市場を開拓しつつあります。

いっぽうの戦隊シリーズは90年代という早い段階から海外進出に成功していたわけですが、途中で海外の玩具市場の貴重な収入源を失ってしまったことが、かなり痛手となったと言えるでしょう」(多根氏)

“大人向け市場”を開拓できなかったことも敗因に

戦隊シリーズと言えば、おもに5人の戦隊ヒーローが登場する。しかし2017年に放送された『宇宙戦隊キュウレンジャー』では、9人の戦隊ヒーローが登場するといった“キャラクターの多様化”もあった。

キャラクターが増えれば、玩具の種類も増え、売り上げアップにつながるといったことはないのだろうか。

「例えば『宇宙戦隊キュウレンジャー』の場合、シリーズ開始から前半における玩具の売り上げは、商品点数の多さから必然的に好調だったようですが、後半は勢いが失速してしまったため、結果的に大幅な売り上げ増にはなりませんでした。

というのも、商品点数が多ければ多いほど当然開発費もかさむので、結局コストに売り上げが追い付かないといった状態に陥りがちなんです」(多根氏)

さらに多根氏は、仮面ライダー玩具については大人が子ども時代の玩具や趣味を消費する“キダルト消費”が好調だが、戦隊玩具にはその需要がないとも指摘する。

「仮面ライダーは変身ベルトなど、いわゆる“なりきり玩具”をメインに売り出していますが、この変身ベルト玩具は子ども世代のみならず、大人世代からの需要もかなり高いんです。

バンダイは“大人の為の変身ベルト”として、わざわざ大人サイズに再構成したモデルを発売するほどなのですが、いっぽうの戦隊シリーズ玩具は、まず種類が多くてそろえるのが大変ということもあり、大人世代では熱心にコレクションする層がなかなかいないのが現実です。

大人世代の場合、商品点数が多ければいいというわけではなく、迷わずに買える、わかりやすいアイテムを欲しがる傾向にあり、“買いやすさ”を重視するので、戦隊シリーズ玩具は大人世代の需要をうまく取り込めていなかったということも玩具市場での敗因のひとつだと考えられます」(多根氏)

そんななか、11月24日には東映は「スーパー戦隊」シリーズに代わる新たな特撮ヒーローシリーズ「PROJECT R.E.D」の始動を発表。ヒーロー作品にとって貴重な収入源である玩具の伸び悩みという背景もあるなか、新たなヒーロブランドが今後どういった展開を見せるのか引き続き注目したい。

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio) サムネイル/Shutterstock

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