「ネットは高市政権に期待をしすぎている」古舘伊知郎が語る高市政権の問題点と今こそ再評価すべき蓮舫の「2位じゃダメなんですか」発言
「ネットは高市政権に期待をしすぎている」古舘伊知郎が語る高市政権の問題点と今こそ再評価すべき蓮舫の「2位じゃダメなんですか」発言

YouTubeチャンネル『古舘伊知郎チャンネル』や、トークライブ『古舘伊知郎トーキングブルース』で時事ネタに鋭く切り込む古舘伊知郎。現在のメディアのあり方や、大転換期を迎えた政局について、さらに今年12月7日から始まるトーキングブルース『2025』の気になる内容について聞いた。

ネットは高市さんに期待をしすぎている

──高市政権が発足してから1か月が経ちましたが、高い支持率を維持しています。ネットを中心にこれほど支持される政権も珍しいと思いますが、現在のメディアの報道の仕方についてどう思われますか?

古舘伊知郎(以下、同) 新聞やテレビといったオールドメディアは忖度しすぎる問題があると思います。一方でSNSや一部のネットメディアは、オールドメディアを叩きすぎるというか。

攻撃して蔑んでいるわりには、ずいぶんとコタツ記事を書いているなとも思うんです。要するに、オールドメディアが裏取り取材をしたニュースを元にして、ネットメディアやSNSやユーチューバーが群がって商売をやっているわけで。

あと散々言われているけれど、エコーチェンバーとかフィルターバブルで自分の好みの情報ばかりに触れていると、どうしても偏ってしまいますよね。

「正義の反対はまた別の正義」という言葉がありますけど、自分の好みの考えがすべて正しいと信じ込み、「俺らと奴ら」という敵味方に分けて攻撃し始めてしまう。それって戦争の始まりですよ。

オールドメディアは忖度して優等生になりすぎてしまった。ネットメディアやSNSは平気で暴走してしまう。引いて見ると同じ穴のムジナじゃないかって思う。どちらも改善されていかなきゃいけない転換期にあると思います。

高市さんについては、ネットが期待しすぎていると思います。

イタリアのメローニ首相を見てください。

元々は極右のスタンスですよ。

左派が多かったイタリアで初めて首相になった極右の政治家です。それなのに就任した途端に安全運転ですから。もう今では中道みたいになっちゃっている。

高市さんが消費税を減税するかといったらそんなわけがなくて。財務大臣になった片山さつきさんは大蔵省出身ですよ? その片山さんがなんで急に消費税減税がやれるのかと。やれるならもうやっています。

だから何でもかんでも「高市さんならやってくれる」と思うのは、僕はちょっと違うなと思っています。

意見とか思想信条とかを煎じ詰めていくと、自分の置かれている立場の表明なんです。一国の首相になったら、保守層に気を配りながらも安全運転をせざるを得ない。それほど人間は弱いということ。

高市さんも妥協の産物になっていくだろうと思います。

高市さんは政治と金の問題から逃げた

──高市首相を支持する保守層の期待が膨らみ過ぎている?

我々もちょっと混線していると思うのですが、安倍晋三さんの頃を見てもわかるように、経済政策は新自由主義ですよ。

グローバリゼーションを推進し、人、モノ、金を行き交わせて自由な市場の競争を促している。

一方で国防のあり方は保守です。日本も憲法を改正して防衛力を身につけ、集団的自衛権を含めて戦うんだというふうに、2015年に集団安保法制を作っちゃった。改憲が難しいから解釈で憲法を変えたわけです。

だから国防のあり方は右、そして経済政策は右でも左でもない。そこでねじれているんです。いろいろジレンマがありながらも、高市さんは保守層が喜ぶことだけじゃなく、選り分けてうまくやっていくと思います。

ただ、僕がひとつ高市政権に物申したいのは「政治と金」の問題。棚上げにしていますよね。なぜ企業団体献金の禁止や規制を強化しなきゃいけないかといったら、自民党には全国津々浦々に政党支部という第二の甘い財布があるからです。

地方議員であっても、国政を司っている国会議員であっても、全国に政治家個人の政党支部という甘い財布が8000弱あるんです。

実態として人間が来ないパーティも含め、企業や団体にパーティ券を購入してもらい、献金が回り回ってその財布に入っていく。そこが選挙活動を下支えする原資になっていきます。組織票をしっかりと取れれば、自民党は人気がない政治家でも選挙に受かるわけです。

財界からの献金が政治を支えているわけですから、既得権政治、利権政治が変わるわけがない。高市さんは入り口で政治と金の問題から逃げちゃったわけです。世の中を変えていきたいならば、ここは絶対に忘れてはいけないこと。

僕はアメリカがいい国だとは決して思いませんが、アメリカのやり方は日本とまったく違います。

例えば30年前にアメリカで一世を風靡していた企業ジャンルが、今受けていますか? 違いますよね。ITからAIの時代になり、シリコンバレーを盛り上げて世界を席巻しています。

日本はいいも悪いもそうじゃない。相変わらず経団連があって、重厚長大産業があって、そういうところは護送船団方式で政府や官僚と一緒に守られているわけです。なぜ経団連が消費税を支持するかというと、法人税減税とセットだから。

嫌でもアメリカにならって企業の新陳代謝をはからないといけない。企業団体献金を通じた自民党と大企業の馴れ合いの関係を断ち切ることが、一番の成長戦略ではないでしょうか。

いろんな企業のロビイストが国会議員として送り込まれているわけだから、整理整頓していかないと新しい産業は勃興しないし、新しい時代は訪れません。そこをやってくださいよ。このことは批判されてもしつこく言い続けなければいけないと思っています。

今こそ蓮舫さんの言葉を評価しなければならない

──37年前にスタートした『古舘伊知郎トーキングブルース』は、その年の時事ネタをマイク1本で2時間しゃべり続けるトークライブです。今回は何を語る予定ですか?

今年起きたことを我々はどれだけ覚えていると思いますか。情報化社会の極みになって情報の海に溺れていると、そこで思考を停止して、アウトプットするべくもなく忘れていくしかなくなります。

今年何が起きたかということを、ちょっと遊び気分も含めて答え合わせをしていく予定です。

今年は特に政局ですよね。大きく転換期だなと思うのは、多党制の時代に入ったこと。そうなるとやっぱり解散も近いんじゃないかなと、僕は勝手ながら思っています。

政治のありようが変わって世界が流動化し始めているので、今までの固定観念も変わっていかなければいけません。

世界は人とモノと金が自由に流通するグローバリズムに舵を切って何十年も経っているけれど、その歪みもはっきり見えたと思うんです。一部の富裕層がものすごく大儲けをして、中間層がぶち壊される現実を見てしまった。

かといってアメリカの一国主義も問題があるわけで。人間が生み出した民主主義や資本主義にしても、極みまで来てしまった。もう人類、お手上げだと思います。そこにAIが出てきた。自分たちの頭の中を外部化したわけじゃないですか。

20万年の人類の歴史の中で初めてだと思います。自分たちより頭のいい奴が登場したのは。人間がトップ・オブ・トップだという傲慢さと喜びと自負を持って、ガリガリと金儲けをしてきたけれど、あきらめる時代に来たんじゃないかな。

多分、今後はAIに仕切られていきますよね。

少なからずAIの手のひらで転がされていく。だから我々はここで、

かつて「2位じゃダメなんですか」と言った蓮舫さんを評価しなければならないんです。

これからは僕の好きな仏教的な世界が広がっていくんじゃないですかね。資本主義のくびきから逃れて、怠け者になってぼーっと生きる時代が来る。そういう良い見方もできると思います。

希望と不安が表裏一体で押し寄せる情報の渦の中で、私たちはどれほど“自分の言葉”を持てているか、『トーキングブルース』ではそんな現代の人間の営みや心の悲しみを、ブルースを奏でるようにトークしたいと思っています。

取材・文/松山梢 撮影/石田壮一

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