「中国との関係なくして我が国は成り立つんですか?」石破茂前総理が高市外交に懸念…100分講演「中国の考え方を日本は理解し尊重するということが、歴代政権の立場」
「中国との関係なくして我が国は成り立つんですか?」石破茂前総理が高市外交に懸念…100分講演「中国の考え方を日本は理解し尊重するということが、歴代政権の立場」

石破茂前総理(68)が11月26日、長年の付き合いを持つ政治解説者の篠原文也氏(78)が主宰する「直撃!ニッポン塾」で講演をした。石破氏は、約1年間の政権運営を振り返りつつ、篠原氏の質問に答えるかたちで、高市政権で緊張する日中関係にも言及した。

「批判めいたことは、同じ党の人間として、申し上げることは致しません」

「自分としてあれ以上のことはできませんでしたということが言えるのは、それはありがたいことであると思っております」

講演の冒頭、自らの政権運営をそう振り返った石破氏。政権が注力したこととして、①自衛官の処遇改善、②米国との関税交渉、③最低賃金の引き上げ、④防災庁設置に向けた取り組み、⑤米価抑制、⑥関西万博と語った。

そして、退陣間際の今年10月に発表した「戦後80年所感」をめぐっては、高市早苗総理(64)をはじめ、自民党の保守派から、石破氏がメッセージを発表することに、否定的な意見もあがっていた。それでも、あえて「所感」をとりまとめた理由は何だったのか。

若き日に木曜クラブ(旧・田中派)のスタッフを務めた石破氏。日中戦争に従軍した経験を持つ田中角栄元総理が「あの戦争に行ったやつが国の中心にいる間は、この国は大丈夫だ。だけど、あの戦争に行ったやつが、この国の中心からいなくなった時が怖い」と語っていたエピソードを振り返り、こう警鐘を鳴らした。

「なんで、絶対に勝てない戦争に突き進み、300万人の人が死に、ああいうことが起こったのかということを、今検証しないとどうするんだ、という思いがありました(中略)責任の所在が不明確な体制においては、大きな声、勇ましい声、そういうものが議論を支配するということは、日本社会往々にして起こることでございます」

中盤からは、篠原氏が質問者となり、質疑応答の時間になった。自民党内でもリベラル派と評価される石破氏と、保守派の高市氏の政治スタンスは“水と油”と評価されてきた。その点を踏まえ、篠原氏が高市政権の評価を問うと、石破氏はこう答えた。

「それは、我々が選んだ総理総裁ですから、そのことについて批判めいたことは、同じ党の人間として、申し上げることは致しません」

「似ているとか言われると、なかなか困る」

目下、これまで政府が結びつけてこなかった台湾有事と、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の関係について言及した高市総理の国会答弁をきっかけに、日中関係が緊張している。その打開策を問われると、率直にこう述べた。

「それはねえ、昭和 47年の日中国交回復以来、ものすごく、ものすごく神経を使ってきた。

だから、台湾が中国の一部であるという中国の考え方を日本は理解し尊重するということが、歴代政権の立場なのであって、そこのところを全くこう変えてはならないことだし、そういう考え方の元に歴代政権、ものすごく注意をしながらやってきた。

食料の輸入でもそうでしょう。レアアースでもそうでしょう。薬でもそうでしょう。中国との関係なくして、我が国は成り立つんですか?ということですよ。そこは中国との関係というのを大事にしていきながら、我が国と中国は、アメリカとの関係も図りながら、細心の外交を展開するということは当たり前のことです」

総理経験者として、外交については慎重な言動が求められることを強調したかったのだろう。講演の終盤では、高市総理とも親交の深い篠原氏が、石破氏との意外な共通点について言及する場面もあった。

「高市さんと石破さんというのは、本当にスタンスが違うんだけど、1つ共通項があるのは、あんまり人と会食をしたり、人と会合したりするよりも、一人で資料を持ち込んで勉強する。これは似ていますね?」

すると、石破氏は「またそういう違いとか、似ているとか言われると、なかなか困る」と述べつつ、こう語った。

「我々は納税者の代表として議員でいるわけですよ、そして行政の長でいるわけですよ。そうすると、野党と議論する、あるいは官僚と議論するというときに、あれも知りません、これも知りませんで、納税者の代表たりうるかという当たり前の話ですよ」

さらに、篠原氏が「石破さんの考え方を高市さんに直接会って、伝えようという気持ちはありますか?」と問いかけると、次のように語った。

「私が(第二次安倍政権において自民党の)幹事長で、彼女が政調会長だったときもあるし、人として善良な人ですよ、彼女は。

とっても思いやりのある人だと思う。だけども、総理大臣になると、それだけでは務まらんので、やっぱり彼女の周りに、本当にフレンドリーな人たちがいっぱいいるわけで。まずは、そういう人たちのアドバイスを聞くってことが第一でしょう」

かつて“党内野党”とも言われ、時の政権に、臆することなく意見してきた石破氏だが、この日は高市政権については抑制的な発言が目立った。

とはいえ、高市政権の高支持率について問われると「(政権の評価は)世論調査が決めるものではなく、次の時代が決めるものだと思っている」という言葉も。総理退任後も、自民党のご意見番として、石破氏の発言に注目が集まりそうだ。

取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班

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