〈三菱UFJ巨額窃盗事件〉“酒豪”でアネゴ肌だった元行員の“ゆかちー”が公判で見せたアイドル節「私のためだけにUFJ銀行を悪く思わないでください。」 〈2025年事件簿〉
〈三菱UFJ巨額窃盗事件〉“酒豪”でアネゴ肌だった元行員の“ゆかちー”が公判で見せたアイドル節「私のためだけにUFJ銀行を悪く思わないでください。」 〈2025年事件簿〉

勤務先のメガバンクの貸金庫から10億円以上もの現金や金塊を盗み出していた酒豪の女「ゆかちー」。2025年1月に逮捕されお茶の間を呆れさせた今村由香理被告(47)(その後、離婚して旧姓の山崎に改姓)。

懲役9年の判決に対しても「反省しており更生できる」と控訴するなど、“生まれ変わり”を図っているようだ。(♯1~♯4参照)

「100人を超える顧客の貸金庫から金塊と現金で17~18億円分を盗んだ」

東京地裁(小野裕信裁判官)は今年10月6日、三菱UFJ銀行の貸金庫から顧客の金品14億円相当を盗んだとして窃盗罪に問われた元行員・山崎由香理被告(47)に懲役9年の判決を言い渡した。

検察側は「前代未聞の犯行」と懲役12年を求刑、弁護側は「実態解明にも協力しており懲役5年が相当」と訴えていた。

公判で被告は「100人を超える顧客の貸金庫から金塊と現金で17~18億円分を盗んだ」と起訴内容に含まれない犯行も明らかにしていた。

事件は顧客の被害申告をもとに同行が昨年11月、元行員が貸金庫の資産を盗んでいたという概略を公表、同12月に半沢淳一頭取が謝罪会見に追い込まれるなど異例の展開を見せた。

そして今年1月14日、警視庁捜査2課と練馬署が、練馬区在住の元行員・今村由香理(現姓・山崎)容疑者を窃盗容疑で逮捕した。「ゆかちー」とは地元の練馬で飲み歩いていた、彼女の酒場での愛称だ。

数年前まで元行員が足繁く通っていた飲食店の責任者は当時、取材にこう証言していた。

「練馬に近い人が飲み友だちとして集まろうという目的で始められたLINEのオープンチャットがあり、彼女はそこで『ゆかちー』と呼ばれていて、そこのメンバーとウチの店に来るようになったんです。

まだゆかちーさんが江古田支店にいるころで、後から『練馬支店に移ったから通いやすくなった』なんて言っていました。

チャットには100人近く入っていて、その中で集まれる人が来るという感じで、多い時は15人ぐらいで飲みにきたこともありました。彼女が三菱UFJの行員というのは俺も聞いていたし、そのオープンチャットの人達も知っていました」

元行員ゆかちーは、きれいな飲み方をする酒豪だったという。

「週末が多かったけど、最初のころは週2回のペースで飲みに来ていました。

お酒は好きで、酒豪と言えば酒豪です。ハイボールがほとんどで、テキーラを飲むこともありました。酒量は多かったけど、暴れたり道端で寝こむようなことはなかった。

ハイボールを6、7杯飲んだあたりから呂律が怪しくなって、カウンター席につっぷして寝てしまうことはありましたが、基本的には周囲を不快にさせる飲み方ではなく、明るく楽しく飲むタイプの方でしたね。

オープンチャットの人達は30代の方が多かったので、ゆかちーさんはアネゴ的な立ち位置で、周囲に話題を振ったり気を遣える一面もあったので、みんなから親しまれていましたよ」

ゆかちーと一番仲が良かった人は「全然気がつかなかったよね」

いっぽうで元夫と義父と暮らしていた当時の自宅周辺での「ゆかちー」は、不動産を多数所有する地元の資産家に嫁いだ平凡な主婦として映っていたようだ。

義父もかつては第一勧業銀行(現みずほ銀行)に勤めていたというバンカーだったという。金融モラルの高い家庭で育った「ゆかちー」だが、貸金庫から金塊を盗み出し、競馬やFX(外国為替証拠金取引)に突っ込んでは溶かしていたという。

そして「ゆかちー」は資産家の夫と3回目の逮捕前に離婚、今村から旧姓の山崎となった。今後、控訴審の結果にかかわらず、自ら踏み入れた茨の道が長く険しいことには変わりはない。

前出の飲食店責任者も、事件当初は“災難”に巻き込まれたという。

「ゆかちーさん離婚しちゃったんですよね。報道で見ました。

事件後しばらくはこの店にもマスコミが何社も訪れていました。僕がテレビのインタビュー取材で横顔を出して答えたりしたので、この店が『三菱UFJの例の店』って周辺の人の間で知られてしまって。

通りすがりの人が『ここって三菱UFJの人が来てた店だよね』と声に出したり、テレビで見てわざわざ探して僕に会いにくる地方からのお客さんもいたくらいで、いったい何が起こってるんだって感じでしたけど(笑)」

それでも飲食店責任者は、「ゆかちー」に悪い印象を持てないでいた。

「ゆかちーさんと一番仲が良かった人とも事件後に会いましたが、『お金遣いも荒くなかったし、全然気がつかなかったよね』と僕と同じ驚き方でしたね。

本当あまりにも普通の人と同じ生活でしたし、ここでの支払いでも職場の後輩と来た時は多めに出していましたが、基本はワリカンでしたしね。

公判ではFXや競馬にのめり込んでいたとされてましたけど、彼女にはそんな様子さっぱりなかったんですよね……。FXハマってる人ってスマホを頻繁に覗き込む印象がありますが、ゆかちーさんはそういうこともなかった。ましてや建玉もでかいだろうから余計に気になりそうなもんですけどね。

ゆかちーさんの知り合いの中には『実はお金隠してるんじゃないの?』なんて冗談を言う人もいましたけどね」

そのいっぽうで、店舗責任者には「ゆかちー」の浮世離れしたある「気質」が大胆な犯行の背景にあったのではと証言する。

「公判で『私のためだけにUFJ銀行を悪く思わないでください』 とアイドルみたいな発言をしていましたが、何とも彼女らしいというか。自分がスポットライトに当たっていたいという空気はある人だったんで 」

そんな酒豪の「ゆかちー」を含めた大人の飲み会サークルは、いつの間にか雲散霧消したという。ゆかちーが再び盃を傾ける日は来るのか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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