暮れのボーナスシーズンだが、将来の不安から「使い道は貯蓄」と答える人は多い。先行きが不透明な日本経済においては、庶民の安定志向は強くなる一方だ。
お金の活力について、堀江貴文氏の『あり金は全部使え』(マガジンハウス新書)より一部抜粋・再構成してお届けする。
銀行預金は「不安の貯金」
小学生時代、僕の通っていた小学校では、親戚からもらったお年玉を郵便貯金することが奨励されていた。
新学期明け、講堂に郵便局員がやって来て、生徒たちは茶封筒にお年玉を入れ、貯金の手続きをしていた。僕は「なんで貯金しないといけないの?」と、不思議でならなかった。せっかくのお年玉だから、ゲーセンに行ったり、マンガを買いたかったのに……。
学校の先生も、両親も、世間の大人は「貯金は大事です」と言う。それは、正しくない教えだ。
何らかの目的があって、貯めているのは別にいい。でも、特にこれといった使い道がないのに、預金通帳にお金を余らせ続けるのは、本当に愚かしいことだ。
そもそも郵便貯金は第二次世界大戦中、戦費調達のキャンペーンから全国に普及したものだ。戦争がなくなった現在は、国債を償却するために、貯められたお金を運用している。そんな歪な機関に、大事なお年玉を吸い取られてしまったアホらしさは、ずっと僕の記憶に残っている。
銀行などの機関に預けているお金は、銀行に対する債権だ。
貯金は、いざというときのための資金だというけれど、多ければ多いほど、それだけ誰かにお金を貸して、あなた自身の人生の幅を狭めているのと同じなのだ。貯金は生活の安心につながると、大人は言うかもしれない。しかしその金額ぶん、債権者としての負担を増やしているのだ。それがなぜ安心なのだろう?
僕の言い分は、極論すぎるかもしれない。だけど、いくら批判されようと、しつこく言い続ける。貯金が美徳というのは、間違った考え方だ。
銀行に預けていれば、たしかにお金は融資という形で世の中に回る。しかし融資の恩恵を受けるのは、限られた大手企業だ。庶民の消費が活性化しなければ、意味がない。多くの会社の業績は上がらないし、雇用も生まれない。使わない限り、お金は活きてこないのだ。
僕は大学生になって以降、貯金は一切やめた。
一生懸命働き、まとまったお金を持ったら、仲間と遊びに行き、旅行へ出かけ、美味しいものを食べ、見聞を広めるために使い尽くした。性分的に、貯金好きではないのもあるけれど、活きない貯金を守るより、活きたお金を使った方が、絶対に楽しくて幸せだと信じていた。使うだけ使いまくって、正しかったと思う。
お金を使って得た経験は、社会に出てから、いろんな場面で役に立った。コミュニケーションのレベルも、出会う人のランクも高くなった。
貯めていれば、国内の40代のビジネスマンのなかでは指折りの富豪になっていたかもしれない。でも僕にとっては、貯金額を増やすより、そのときにしか得られない出会い、興奮や、体験を積み重ねることの方が、はるかに大事だった。
僕の得てきた体験は、いま同じ額のお金を投じたところで決して得ることはできない。貯金は目先の不安を多少取り除くのかもしれない。しかし時間を買い戻すことはできないのだ。
いまという時間を楽しみ尽くし、後悔のない人生を送るために、お金の活力を信じて、好きなだけ使ってしまおう。
貯金にとらわれ、お金の活力を死なせてはならない。
家を持つことの危うさと人生の意味
結婚した人は、いまでも結構な割合で「家を買いたい」と言う。地方住まいの夫婦だと、その割合がさらに高まる。哺乳類の生態に根づいた考えなのだろうか。子どもを産んで、安全に育てるのは親の役目だ。そのために家=巣を、「安定したもの」にしたいという本能が働くのかもしれない。
それによく聞くのが、「賃貸は家賃が勿体ない」という意見だ。しかしそれは家を持つことの危うさも、人生の意味をも全く理解していない人の考えだ。
僕も結婚していた頃、当時の妻の願いで、家を買った。だが2年ほどで離婚してしまい、さっさと売り払った。物件としては良かったので、ほとんど損しなかったのは救いだ。
その経験があるからではないが、持ち家論には、まるっきり同意できない。
平成が終わったいま、家を持つ必要性はどこにもない。むしろ、数千万円ものローンを組むことは、高い確率で破綻するリスクを抱えるようなものだ。
まず持ち家には、固定資産税がかかる。ローンの金利もとられる。建物の上物の価値は年々減価していく。比較的安定していると言われる地価にも、景気によって大幅な変動リスクがある。
快適な生活空間を保つために、壁や屋根、水回りなど、いくつもの消耗箇所のメンテナンスを続けていかねばならない。また持ち家は、ライフスタイルの変化への対応が困難だ。
世帯の中心である父や母が若いうちはいいけれど、高齢になれば平気だったはずの廊下の小さな段差や階段が、だんだん辛くなってくる。いずれ転倒防止のバリアフリー化の手間がかかるかもしれない。
30代ぐらいの感覚で選んだ(または新築した)家に、数十年後もそのまま気持ちよく住み続けられる可能性は、かなり低いはずだ。
持ち家=幸せという価値観はすでに過去のもの
持ち家の最大のデメリットは、移動の制限だ。
一度家を買ったら、簡単には引っ越しができない。先述のような不具合に耐えられなかったり、天災などで修復できなかったり、隣人トラブルに巻きこまれたりした場合でも、すぐ売れなければ、我慢して住み続けねばならない。もしくは一生、その家に住み続けなくてはいけない悲惨なパターンも、ありえるだろう。
時代は、激しく変化している。
収入や健康状態、家族関係、すべて一定の状態で継続される保証はないのだ。天災に遭ってしまう不運からも、日本に住んでいる限り、完全に逃れることはできない。そのような情勢にあって、移動のきかない持ち家の所有は、かなり大きなリスクだ。
持ち家=幸せという価値観はすでに過去のものだ。
快適な住まいが欲しいなら、フレキシブルに移動していこう。ライフスタイルに応じて、賃貸住宅を次々に替えていくのが、一番の方法だ。
僕の話をすると、数年前から家がない。
離婚してから長年マンション暮らしだったが、ライブドア事件での収監をきっかけに解約して以来、ずっとホテル暮らしだ。ビジネスなどで国内外の移動が多く、家でのんびり寛ぐというライフスタイルが、もとからなかった。持ち物はスーツケース数個にまとまる程度で、どこかに置いておくスペースが確保できたら充分。家まで持つ理由が、全然なかったのだ。
移動を続けながら快適な生活を維持するには、ホテル住まいがベストだと言える。ある程度の稼ぎがあって、物の所有欲が極端に少ない人には、ぜひ薦めたい。
というより、熱中できる何かをたくさん見つけ、やりたいことをこなしまくっている毎日を過ごしていれば、自然に家なんかいらなくなると思う。
『あり金は全部使え』(マガジンハウス新書)
堀江貴文
人生の価値を“最大化”する究極のルール
本書では堀江貴文さんの生き方を象徴している、
「あり金は全部使え」という考え方をまとめています。
「貯金があれば人生は安心」という思い込みを一変させてくれる「お金の本質」が詰まった一冊です。
【本書のトピック】
Phase1 マインドセット 安定志向はゴミ箱に捨てろ!
Phase2 投資思考 貯金に逃げるな
Phase3 未来予測 仮説を立てすぐに動け
Phase4 行動革命 欲望のままに遊び倒せ
Phase5 時間革命 金で買える時間はすべて買え
Phase6 習慣革命 チンケな節約をやめろ
Phase7 信用構築 財産を信用に変えろ
Phase8 終わりなき拡大 ゴールを設定するな

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