今年6月、アドベンチャーワールドで飼育されていたジャイアントパンダ、通称・浜家ファミリーが、中国に全頭返還された。当施設では、1994年に永明(えいめい)と蓉浜(ようひん)が来園して以降、これまでに17頭のパンダが誕生。
30年以上の歴史に突然の幕…浜家ファンの深い悲しみ
2024年に30周年を迎えた、和歌山県白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド」のジャイアントパンダ保護共同プロジェクト。ここで繁殖したパンダたちは「浜家ファミリー」(以下、浜家)と呼ばれ、日本中の人々に親しまれてきた。
しかし、2025年6月。当時飼育されていた4頭すべてが突然の帰国。浜家ファン歴13年の石田さん(20歳・仮名)は、異例の全頭返還について悲しみを滲ませながら語る。
「一気に全員いなくなるなんて本当にショックです。浜家に会いたすぎて、パンダが夢に出てくるほどです。それだけ、浜家は私にとって大切な存在でした」
石田さんと浜家の出会いは、彼女が小学2年生のころ。物心ついたときからパンダが大好きだった石田さんは、「日本のどこかにパンダがたくさんいる場所があるらしい」という噂を聞きつけ、両親にクリスマスプレゼントとして白浜行きをおねだり。そこで浜家の愛くるしさに衝撃を受ける。
「アドベンチャーワールドにはパンダとお客さんを隔てるガラスがなく、あまり混雑していないので上野動物園よりものんびりパンダを見ることができるんです。
飼育員さんと触れ合ったり、ゴロンとそのまま下に落ちちゃったり。可愛すぎるパンダの姿を好きなだけ眺めることができて、感動を覚えました」
「上野のパンダじゃ満たされない」
浜家に心を奪われた石田さんは、毎年のように両親とともに白浜を訪れるようになった。基本的に和歌山観光はせず、空港を降りたら即アドベンチャーワールドへ。一日中園内に滞在し、ひたすら浜家を眺めていた。
「のんびり過ごすパンダたちをぼんやり見ていると、毎日来ている浜家ファンの人が、昨日パンダたちが何をしていたか教えてくれることがあるんです。浜家ファンの方々とのささやかな交流も喜びのひとつでした」
石田さんは浜家について「人生の楽しみだった」と話す。
「なかなか会いに行けないけれど、浜家の動画やライブ配信を見て癒され、毎日元気をもらっていました。ツラい大学受験も『大学に入ったらバイトをして、たくさんパンダを見に行くぞ』と思えば乗り越えられた。
どんなことがあっても『パンダに会える』という希望が、ずっと私を支えてくれていたんです。だから、返還は青天の霹靂でした」
返還から半年近くが経った今、公式SNSによる浜家関連の供給は激減。石田さんは「ペンギンとかの投稿ばっかりになった」と肩を落とす。悲しみを紛らわすため、上野動物園に行くこともあるそうだが。
「上野動物園はガラス越しでパンダとの間に距離感があるし、30分以上並んでも一目見て終わり。
来年1月には中国行きを計画していたが、急激な日中関係の悪化により、家族からストップをかけられてしまったという。
「私は彩浜(さいひん)推しで、先日、中国の研究所で彩浜の公開が始まったんです。中国行きのために頑張ってお金を貯めていたので、昨今の情勢はとても残念ですね。1日でも早く、安心してパンダを見に行けるような世の中になってほしいです」
年間の出費は50万円以上
一方、すでに中国で浜家を見てきたというファンも。
児童文芸翻訳家・作家で、『良浜と浜家 ~10頭のパンダを育てた母パンダの偉大なパン生~』(技術評論社)など浜家に関する著書も出版する神戸万知さんは、11月中旬に中国へ向かった。
「11月22日が楓浜(ふうひん)の誕生日だったので、それにあわせて中国遠征をしました。6月にアドベンチャーワールドを旅立った4頭全員と無事に会えましたし、雄浜(ゆうひん)や隆浜(りゅうひん)などそのほかの白浜出身のパンダに加え、雄浜や梅浜(めいひん)の子どもなど子孫にも会うことができました。
過ごしやすい季節なので、みんな元気にもりもりごはんを食べていましたよ。元気な姿を確認できて嬉しかったです」
無類のパンダ好き作家として知られる神戸さんだが、パンダを愛好するようになったきっかけは浜家だったという。
「2012年、白浜で赤ちゃんパンダが生まれて、名前を募集していたんです。なんとなく応募してみたら、自分が考えた『優浜(ゆうひん)』が採用されまして。名付け親証明書と『ご対面プレミアムツアー』の招待状が届き、初めてアドベンチャーワールドに足を運びました。
一生に一度の思い出のつもりで行ったのですが、パンダの可愛さに魅了され、すっかりハマってしまいました」
そして2015年、今度は双子のパンダ「桜浜・桃浜」の名付け親にもなった神戸さん。
「東京在住なので、一回の和歌山遠征で3万円前後はかかっていました。年間の出費は40~50万円ほどですかね。ほかにも、ふるさと納税で白浜町の宿泊補助券を購入したり、クレジットカードはJALに全振りして、白浜へ行くためのマイレージを貯めたりもしていました」
前出の石田さんと同じく、神戸さんも白浜に着いたらアドベンチャーワールドへ直行。開園から閉園まで、ほぼ飲まず食わずの状態でパンダを眺めていた。
「パンダはとにかく可愛い。遠くから見ても近くから見ても可愛い。硬い竹を食べるので、アゴが発達しており顔が丸いのも可愛い。前足に対して後ろ足が短く、内股でよちよち歩くのも可愛い。一日中眺めていてもまったく飽きません」
パンダの経済効果はWBC優勝超え?
全身全霊で浜家を応援していた神戸さん。返還を知ったときは「頭が真っ白になった」と話す。
「返還は覆らないことなので、そのときは呆然としながらも急いで飛行機やホテルなどの手配をしました。
返還当日は取材でアドベンチャーワールドに行ったのですが、もう園内にパンダはいなくて。がらりとした飼育場を見たら、心にぽっかり穴が空いたような気分になりました」
神戸さんは寂しげな表情を浮かべながら、近況を語る。
「あの日以来、白浜には行っていません。空っぽな飼育場を見るのは、やっぱり辛いんです。一方、上野動物園は、もともと近所なので毎日のように通っていて、シャオシャオとレイレイも浜家と同じくらい大好きです。でも、シャオレイも返還期限が近づいていて……。パンダ通いをしない生活は、あまり想像がつかないですね」
パンダ以外の推し活を始める気はないのか尋ねると、神戸さんはキッパリ「ありません」と答えた。
「推しはあえて探すものではなく、いきなり沼に落ちるものだと思っています。パンダ以外にも趣味はありますし、浜家も上野ファミリーも消えてしまったわけではなく、パン活もやめる予定はありません。
一説によると、パンダはWBC優勝超えの経済効果をもたらすそうです。
日本経済と、多くのファンの人生を支えてきた浜家。アドベンチャーワールドに、もう一度パンダの家族が戻ってきてくれることを願うばかりだ。
取材・文/渡辺ありさ

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