「私は自分を愛せなかったから洗脳された」小阪由佳が明かした18年におよぶ“洗脳支配”との戦いと後遺症、そして再生
「私は自分を愛せなかったから洗脳された」小阪由佳が明かした18年におよぶ“洗脳支配”との戦いと後遺症、そして再生

「私を洗脳した“あの人”には潔く引退してほしい」そう告白したのは、2004年、「ミスマガジン」を受賞し、グラビアを中心に一躍注目を集めたタレント・小阪由佳。ある女性占い師から洗脳を受け、心身ともに深く傷つけられることとなった。

現在は再びタレントとして復帰し、自身の芸能事務所を経営する社長としても活躍。そんな彼女が“洗脳されていた日々”を赤裸々に綴った書籍『六本木洗脳』を発売。思いを聞いた。(前後編の後編)

前編

洗脳した占い師の実名を明かさない理由

――占い師の方による洗脳を受けていた小阪さんは、言われるがまま20キロも太り、自身のブログも乗っ取られ、言葉による暴力だけでなく、最終的には物理的な暴力を受けるまでに。今回、書籍にはその詳細が赤裸々に綴られていますが、この占い師の方の実名を公表しなかったのはなぜですか?

小阪(以下同)もし、私が名前を公表してしまったら、その影響は彼女だけでなく、彼女と一緒にお仕事をされている人などにも及んでしまうからです。そうした人たちの生活まで壊してしまうようなことは避けたいと思いました。

『六本木洗脳』は、誰かを傷つけるために書いた暴露本ではありません。自分が過去と向き合い、洗脳の後遺症を完全に克服するための真実と勇気の本であり、読んだ人が少しでも救われてほしいという思いを込めて書いたものです。

この18年間、私は“なんであんなことをしてしまったんだろう”とずっと後悔してきました。でも、この体験が誰かの救いになったら、私は洗脳されたことすらも感謝できるかもしれない。

だから、思い出したくない過去も細かく書きました。この本で誰かひとりでもいいから救いたいというのは、今後の私の人生のテーマのひとつでもあります。

――率直に今、占い師の方に対して恨みや憎しみといった感情はありますか?

謝罪はしてほしいですが、恨みや憎しみの感情はないです。

誰かを恨んだり憎んだりしている自分は、私自身が愛せないですし、そもそも洗脳されてしまった根源は、自分を愛せていなかったからだと思います。

実際に洗脳されてみて、自分を愛せなければ、洗脳から解放されることは絶対にないということが、イヤというほどわかりました。

洗脳が解けるということは、“現実に帰ってくる”ということでもあるんです。“自分はなんであんなことをしてしまったんだろう”という思いが一気に襲いかかってくるけれど、過去には戻れない。

罪に時効はあるのに、過去はいつまでも追いかけてくるんです。これに対処するには、自分を許してあげることしかなくて。相手を許すのではなく、自分を攻めない心を育てること。これは、洗脳された人が必ずしなくてならないことだと思います。

洗脳の恐怖はひとつじゃない

――現在、小阪さんと同じように洗脳に苦しんでいる方がいたら、どんな言葉をかけたいですか。

洗脳の恐怖ってひとつじゃないんです。今まさに洗脳されていて、そうした恐怖感とどう向き合ったらいいのか、というものもあれば、洗脳されていたことに気づいた後、そこから抜け出す怖さもあります。

だから、“どの段階の人”なのかによって、言葉のかけ方は全然違うんです。

前者には、他でもない「あなた」の本当の幸せはなにか? という問いを一度ではなく何度も問うてください。

また、否定や孤独を恐れず、洗脳されている場所ではない居場所を小さくても良いので作ってください。新しいバイト先でも、昔の友達でも、カウンセリングに通うでも、なんでも大丈夫です。新しい環境や人間関係を恐れず増やしていって下さい。

後者には、「後悔や孤独を恐れず勇気をだして。あなたは悪くない。あなたの幸せの道はあなたが決めて良い」と。たとえ1人になったとしても、それは一時的なもの。あなたの居場所は必ず他にあるということを、まずは自分に教えてあげて下さい。

――今回、こうしたご自身の経験を書籍という形で発表されたのはなぜですか?

前々から、なにかを書く仕事、言葉で表現する仕事をしたいなとずっと思っていたんです。私自身、洗脳から抜け出すにあたって、いちばん救われたのが本だったんです。

それこそ1年間くらい、本棚に入りきらないほどの自己啓発本を読んで救われたので、本に対するリスペクトがあるんです。あの時の私のように、私の本が誰かの救いになってくれたらと思ってます。

――『六本木洗脳』と同日に、17年ぶりとなる写真集も発売されました。のタイトル「裸洗(らせん)」にはどんな意味がありますか。

書籍ともリンクしているのですが、写真集のテーマは、洗脳から解かれた新しい自分を“偽りなく晒す”ことでした。その表現を探すため「洗脳」の反対語を調べたんですが、そんな言葉はなかったんです。

なので、新しい言葉を生みたかった。そこで浮かんだのが、「裸洗(らせん)」という造語でした。植え付けられた価値観や思考の膜を、一枚ずつ丁寧に剥がしていって裸の自分に還る…それこそが、洗脳から解けた本来の、何にも染められていない自分なのではないか、との気づきがあったんです。

――20キロ増した時代があったとは思えないほど、現在は見事に体型をキープされています。どのように維持されているのでしょうか。

小さいことでよいので成功体験を積み重ねることですね。「今日はお菓子たべなかった」「よし、今日もできたから明日もできる」といった感じに、自分との約束ごとを守っていく。まぁ、私も言うほど、うまくやれていませんけどね(笑)。

実は旦那と付き合い始めた時期に、幸せ太りで60キロ近くまで太ったことがあって。「食べてる姿も可愛い」とかて言われるとついつい…(笑)。「そんな風に洗脳しないで」ってツッコミいれてました。もちろん冗談ですけど(笑)。

芸能事務所の社長として

――今は、芸能事務所の社長としてタレントも育成中だとか。

小阪 事務所経営は、「育てる」「売る」「利益を出す」の3つを、時期を計りながらバランスよく進めなきゃいけないのですが、これが本当に難しい。

タレントを売ることがこんなにも大変なんだと痛感しましたし、実際スタートした3年間は大赤字でした。嘘でもうまくいってたなんて言えません(苦笑)。

私がかつて所属していた事務所は、本当に売るのがうまかったんだなと、今振り返ってもリスペクトしかないです。

――最後に、これから挑戦したいことを教えてください。

事務所としては、メンズグラビアアイドルという、今までにない新しいジャンルを生み出していきたいです。現役の時から、女性のグラビアはあるのに、なぜ男性のグラビアはないのだろうと不思議に思ってたんです。

なので、男性でグラビアに興味のある方はぜひ名乗り出てほしいし、推薦も大歓迎です。

もちろん、出資してくれる方も(笑)。

実は、本を出版したのを機に、前から準備していた 「人生を取り戻すプログラム」 を始めました。「誰に悩みを話していいか分からない」「人生を立て直したい」「一歩踏み出す勇気がほしい」そんな方のための、マンツーマン人生相談です。

相談者の人生を取り戻すために、トラウマの克服の仕方や、現実的な対応策など具体的にお伝えします。今、何か抜け出したくてもがいてる方や辛い思いをしてる方は是非受けていただきたいです。絶対に1人にはさせません。

私は“ほぼひとりで洗脳を解く”ということをしていったのですが、専門家の方言うには、並大抵のことではないらしいので、こんな自分にもできたんだから、きっとみんなも出来るということを伝えていきたいです。

この本をきっかけに、小さな勇気を持っていただけたら、嬉しいです。無料サンプルだけでもいいので、目を通していただけたら嬉しいです。

取材/佐藤ちひろ 写真/村上庄吾

六本木洗脳

小阪由佳
「私は自分を愛せなかったから洗脳された」小阪由佳が明かした18年におよぶ“洗脳支配”との戦いと後遺症、そして再生
六本木洗脳
2025/11/191870円(税込)248ページISBN: 978-4794980304ミスマガジングランプリから一転、炎上に呑みこまれた日々。支配と依存の連鎖、“姉さん”成り代わりブログ騒動、激太りライブに至る混迷────。なぜ洗脳は起き、どう抜け出せたのか。
2000年代の渋谷・六本木、夜の街の空気とネット黎明期の暴力性を当事者の筆致で記し、心を取り戻すための方法を提示する。赤裸々でありながら冷静──回復へ向かう思考と生活習慣(−20kgの過程)までを率直に綴る。〈壊れない/壊さない〉ための実践禄。
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