今年8月、部員や監督などによる暴力事案を受け、甲子園を大会期間中に辞退するという前代未聞の事態となった広陵高校野球部。今年1月当時1年生だった部員に対し、寮内で上級生の部員が暴行を加えたことが、SNS上で拡散されたのが事の発端。
また、集英社オンラインが♯3で報じた通り、別の元部員が部員や監督らから暴行を受けたと訴えるなど、広陵高校野球部内で起こった数々の疑惑に関する報道が相次ぐ事態となっていた。問題から約4か月経った今、学校の体制に変化はあったのか。広陵高校の事務長を取材した。
第三者を含めた学校改善検討委員会を10月に設置
「甲子園の途中辞退」という異例の問題を受け、監督と部長が交代した広陵高校は秋の県大会では優勝したものの、秋季中国地区大会では1回戦で敗退した。そのため、来年春の選抜大会に出場するには県代表としての推薦を受ける可能性しか残されていなかった。
しかし広島県高校野球連盟は、問題の調査が進んでいないことから推薦をしないという異例の判断を下し、広陵高校が春の選抜大会に出場する可能性は潰えた。広陵高校が秋季中国大会の1回戦で敗れるのは11年ぶりだが、やはり暴力事案の問題が尾を引いているのか。
暴力事案の現場となった寮の中の仕組みや人員の配置、規則などに変わった点はあるのか、あらためて広陵高校に尋ねてみた。同校の事務長が語る。
「寮の中で何か変わったというのは今のところありません。第三者を含めた学校改善検討委員会を10月に設置し、現在話し合っているところです。不適切事案は寮で起こりましたので、寮の運営方法ですとか、もっと大きく見れば野球部の運営方法、学校の体質的なところなど、さまざまなご意見をいただけると思っております。
それをもっていろいろと改善していくところになります。ああいった不適切事案が起こってしまった以上、やはり学校として変えていかないといけない部分はあると思っています」
寮の体制については暴力事案が起こった当時と変わっていないということだが、その後何か別の問題が起こったりはしていないのだろうか。
「その後は何か別の問題が起こったということはありません。生徒も落ち着いた状況だと思います」
「前監督は野球部にはまったく出入りせず、一切タッチしておりません」
一時は同校への殺害予告やイタズラ電話が鳴りやまなかった時期もあったが、その状況も変わりつつあるという。
「皆無ではないですがほぼなくなりました。ただ、殺害予告やイタズラというよりは、クレーム的な『今どうしてるんだ?』とか『副校長(中井前監督)はまだ辞めないのか?』とかそういったお電話ですね」
♯5では中井前監督の進退について『こういう事態を招いた責任もあろうということで指導から外れていただいております。ただ、30年以上、ここまで広陵を強くして有名にし、学校に貢献した方というのもあります』と語っていたが、現在はどのような状況なのか。
「監督のほうは退任をしております。学校の副校長と学園の理事の仕事は残っておりますので、そちらの職務をしております。野球部にはまったく出入りせず、一切タッチしておりません。今の段階で中井副校長が野球部の監督に再任されるかどうかは未定です。
学校改善検討委員会や第三者委員会についてもどんな結論が出るかわかりません。復帰できるとかできないとかそういったことは言えないと思いますし、そういった話も出ていません」
現在、甲子園を途中辞退するきっかけとなった暴力事案と1年以上前に元部員が暴力を受けたと訴え出ている暴力事案について、それぞれ第三者委員会を設けて調査中だ。
「今年1月に起こった暴力事案に関する第三者委員会に関しては、来年3月末をメドに結論をいただきたいと言っております。また、それより以前に部員や監督から暴力的な被害を受けたと元部員から申し出があった件については、12月末をメドに(結論を)お願いしたいと第三者委員会に伝えております。ですがこれは学校が調査するわけではないので、要望通りにできるのかはわかりません」
「学校の自浄努力だけでは限界があります」
あれから4か月経った今、あらためて学校側のスタンスを確認する。
「学校の調査結果と被害者側の主張が食い違っておりますので、そこの事実がどうであったか調べていただきたいというのが一番の争点です。あとは、事案が発生してからの学校の対応について問題がなかったかどうかを調べていただいております。
他の学校で何か不祥事があると『広陵は何してるんだ』と言われてしまいますが、現在も第三者委員会と学校改善検討委員会に積極的に動いてもらっているところです」
今年の9月には、1月の暴力事案の加害者とされる1人が被害者の保護者らにSNS上で名誉を毀損されたとして告訴している。その件について事務長に尋ねると、こう答えた。
「相手も元生徒ですし、かといって今の生徒が風評被害を受けて苦しんでいるというのも知っておりますし……静観させていただいているという状況です。前提として情報が学校に入っているわけではないというのはありますが、難しい問題です」
再発防止という観点で、学校側が現在何か対策していることはあるのか。事務長はこう続けた。
「学校改善検討委員会での検証をお願いしているところなので、学校側で何か独自にしていることはありません。また同様の事案が起こるなんてことはあってはいけないのですが、学校の自浄努力だけでは限界があり、学校改善検討委員会でやっているところです。
学校改善検討委員会の検証は今年度末に終わる見込みだという。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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