2026年ラーメン業界に4つの新潮流…キーワードは「昭和レトロ」「半濁系」「汁なし麺」「M&A加速」
2026年ラーメン業界に4つの新潮流…キーワードは「昭和レトロ」「半濁系」「汁なし麺」「M&A加速」

昭和レトロをまとった“ちゃん系”が若者の心をつかみ、ラーメン業界には原点回帰の波が広がっている。半濁系の存在感も高まる中、汁なし麺の拡大、個人店のM&Aの急増など、ラーメン業界の新潮流が見えてきた2025年。

そして、2026年に迎える大きな転換点とは。

ラーメン業界にも「昭和レトロ」ブームが到来

2025年のラーメン業界でもっとも強い存在感を放ったのは、間違いなく「ちゃん系」の大ブレイクだ。「〇〇ちゃんラーメン」を名乗る店が全国で増殖し、赤いテントの外観、潔いメニュー構成、豚清湯のショッパウマ系スープという昭和まるごとパッケージのような世界観を武器に人気を拡大した。柔らかめに茹でた麺、注文ごとに切るチャーシュー、ご飯と一緒にかき込む昭和スタイル——そのすべてが令和の消費者の胃袋に刺さったと言っていい。

特筆すべきなのは、「ちゃん系」が単なるノスタルジーではなく、若年層や女性客からの支持をしっかり獲得した点だ。レトロな見た目はSNSとの親和性が高く、味は「説明不要で美味い」と誰もが感じるストレートさ。

世代を超える美味しさという言葉を体現しており、2026年にはインスパイア店、フランチャイズ化、ローカルチェーン化がさらに加速すると見込まれる。昭和レトロブームの牽引役として、「ちゃん系」は2026年の業界トレンドの中心に位置づけられる可能性が高い。

さらに、この「ちゃん系」ブームがきっかけとなり、2025年のラーメン界を貫く大きな軸として「原点回帰」というキーワードが浮上する。

その原点回帰の代表格が、動物系スープをベースに節や煮干しで奥行きをつけた“半濁系”の復権である。「らーめん3000」「創作麺 ひとすじ」「麺や 晴心」「あいだや2」など、このスタイルを看板に据える新店が次々と登場した。

1990年代後半~2000年代にかけて流行した東京の王道スタイルを源流としながら、現代の製法によってダシの厚みや香りの立ち方が段違いに進化。オールドファンには懐かしく、若年層には新しいという両面性が高く評価された。

2026年も半濁系の進化系は確実に増えていきそうだ。

こうした味の潮流が盛り上がる一方で、ラーメン業界全体が抱える大きな課題がラーメン一杯「1000円の壁」問題である。小麦、豚肉、エネルギーなどあらゆる原価が高騰し、店側は値上げに踏み切らざるを得ない状況が続いている。

しかし1000円を超えるラーメンが当たり前になる中、「高い」と感じる消費者ももちろんいて、客数減少を招きかねないのは確かだ。

「汁なし麺」が原材料費高騰の救世主となるか

そんな中で近年、業界の救世主として存在感を強めているのが「油そば」や「まぜそば」などの汁なし麺だ。これらはスープを炊かずに成立するため、光熱費・食材費を抑えやすく、麺量を200g以上に増やすなど満腹感を提供する工夫がしやすい。

また、タレや油の組み合わせ、多彩なトッピングのアレンジによって高い満足度を維持しながら、1000円以内の価格をキープできる点が強い。ブーム前から油そばで大ブレイクしている浜松町の人気店「MENクライ」の店主・高橋宏幸さんは語る。

「一般層の方々に『まぜそば』がラーメンの1ジャンルとして認知が広まり、立場が確立してきています。私としては『まぜそば』の主役は“麺”だと思っていますが、世間では自分好みにカスタマイズできる部分や手軽さがその魅力になっていると思いますね。

ただ、今後乱立するとお客さんも飽きるきっかけになるので、これからは競争は激化するでしょう」(高橋さん)

チェーン店では「東京油組総本店」や「元祖油堂」が大躍進しており、このジャンルが消費者にとって安定して満足できる選択肢として定着したことを示している。2026年はこの勢いがさらに拡大し、都市部だけでなく地方でも油そば市場が広がるだろう。

また、個人ラーメン店にとっても油そばやまぜそばは原価率調整に非常に有効だ。

メインのラーメンは素材を惜しまずにクオリティを追求しつつ、サブの看板として汁なし系を据えることで、店全体の利益構造を安定させることができる。この“二枚看板”戦略は2026年の標準モデルになる可能性が高い。

そして2026年を語る上で欠かせないのが、外食産業全体を揺るがしている「個人店M&Aの加速」である。ここ2~3年で急増しているこの動きは、ラーメン業界でも例外ではない。吉野家ホールディングス、クリエイト・レストランツ・ホールディングス、魁力屋など、大手企業が相次いで個人店を買収し始めた。

背景には、ラーメン職人としての技術には長けている店主でも、経営・採用・法務・財務といった分野に長期的に対応し続けるのは難しいという構造的な課題がある。3~5店舗規模のミニチェーン、あるいは地域密着型で複数店舗を構える“地方の雄”と呼ばれる存在が、事業承継を理由にM&Aを検討するケースが増えている。

2026年のラーメン業界に訪れる4つの潮流

ラーメンは1から地域密着のブランドを築くのが難しいため、すでに結果を出している店は魅力的な投資対象となる。大手企業にとっては即戦力のブランドを獲得でき、店にとっては経営基盤や資金力を得られる。双方にメリットがある構図が整いつつあるため、この動きは2026年にさらに勢いを増すだろう。

総じて2026年のラーメン業界は、「『ちゃん系』を中心とした昭和レトロの再評価」「半濁系の復権」「価格問題への対抗策としての汁なし系」「個人店のM&Aによる業界の組織化」という4つの潮流が同時進行する一年となるだろう。

そしてその根底には、美味しいラーメンを持続可能な形で作り続けるにはどうするべきかという店側の必死の模索がある。

味の原点回帰、経営の合理化、技術の深化、そして時代を超える味の追求——2026年のラーメン界は、まさに新しいステージへ踏み出す一年になりそうだ。

取材・文・撮影/井手隊長

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