テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。
粗品が痛烈「正直1秒も面白くなかったです」
「『(THE)W』から出て行ってくれませんかー?」
エルフ荒川は、審査員の粗品に対してそう言い放った。
今年で9年目となる『女芸人No.1決定戦 THE W 2025』(日本テレビ)。何と言っても注目だったのは、審査員に霜降り明星の粗品が入ったことだ。
粗品といえば『第14回ytv漫才新人賞決定戦』(読売テレビ)で辛辣かつ説得力のある審査が物議を醸し、『THE W』大会前も公式Xで「日テレが血の海になったらすみません。でも俺も本気でやりますから」と厳しい審査をすることを示唆していた。
これまでの『THE W』は、ある種、優しい平和な大会だった。
特に審査方法が、点数制ではなく、どちらが勝ったかの2択のため、審査員はコメントを求められると、敗者に選んだほうのフォローに回りがちだった。2択の場合、自分の中で51対49で勝者を選んだとしても、見え方としては100対0に見えてしまうからだ。
そうした中、粗品は「『女やからおもんない』とか、『女のくせにおもろい』とかそういうのは一切抜きにして、真摯に審査したいと思います」と宣言し、初戦のもめんとvs電気ジュースのときから「ちょっと長く喋っていいですか」と断った上で、長尺でダメ出しを始め、会場には一気に緊張感が走った。
大会後に自身のYouTubeで語ったことによると、これはスタッフ側とコンセンサスは取れていたようだ。
オファーの段階から「面白くないものは面白くないと言う」「1組につき1分半ぐらいは喋る」と話し、スタッフ側も「ぜひそうしていただきたい」とそれを求めていたという。つまり、『THE W』側としても、粗品のような存在を起爆剤にして、賞レースとしてのレベルを上げたいという思いもあったのだろう。
パンツ万博に対するコメントに至っては「正直1秒も面白くなかったです」とまで言い放った。だが、決して粗品は毒を吐いたわけでも酷評だけをしたわけでもない。
粗品の辛口審査はお客さんへのダメ出しにも発展
たとえば、そのパンツ万博に対しても「メインの根幹がウケへんかったときに、“保険”の細かいやり取りを用意しとかなあかん。(略)『エレベーターの中で犬と一緒になる』っていう設定は皆さんおっしゃる通り良いので、そんな中で、じゃあ、非常ボタンもあるし、階のボタンもあるし、棺桶運ぶ時に空けるスペースも余ってるわ、乗り合わせたUberの配達員とか大家さんとか山ほどあるから。そういうのを、散りばめないといけなかった」などと極めて具体的に改善策を提示。
その上で「ボケの子はクールで良いし、ツッコミの子のツッコミかたも何か形になりそうな、何か掴めそうなところある」とエールを送っている。
その姿勢は、他の芸人たちへも一貫していた。粗品のコメントは厳しい面もたぶんにあったが、むしろ、より面白くなってほしいという、芸人に対する優しさに溢れ出ていた。
もちろん、だからといって粗品の言っていることが、すべて“正解”というわけではないだろう。
しきりに粗品は「日テレが集めた今日の客の勘が悪すぎて」「おもんない客」などと観客を腐していたが、(少なくてもテレビで活躍したい)芸人が笑わせたい相手は、粗品が腐しているような層ではないか。大多数の人たちは、お笑いを専門的に見ているわけではない。
いろいろな笑いの価値観や正義があっていい。だからこそ、粗品だけではなく、複数の審査員がいるのだ(粗品のそれに隠れて、友近の「こっちがおもしろいとこを探そう、探そうって一生懸命になることなく、おもしろいものを提供してくださった」というのは、何気にかなり鋭利なコメントだったが)。
冒頭の発言をしたエルフ荒川も、自分のネタに対する講評に対しては、肯きながら聞いていたが、粗品が「普段、質の悪い客の前でしかネタ試せてないから」と自分たちのファンを悪く言われた瞬間に表情が変わった。
おそらく、それに対して直接反論すると笑えないから、「出て行って」という端的でわかりやすい言葉を瞬時に選んで笑いを生んだのだ。テレビでのキャリアの為せる業だろう。お互いの信念が真摯にぶつかりあった名シーンだった。
ニッチェの優勝までのストーリー ライバルとの絆
ちなみに粗品はエルフに「女王どころか、王にもなれますから」とコメントの最後に最大級の賛辞も送っていた。
今大会は、どうしても“劇薬”である粗品が目立っていたが、やはり主役は出場者たちだ。最終決戦に残ったのは、Aブロックを満票で勝ち上がった紺野ぶるま、Bブロックを制したニッチェ、そして視聴者投票で復活したエルフだった。
いずれも、複数回決勝進出歴があり、テレビでも既におなじみ。それでも、ネタで勝ちたいという強い思いが、初出場組を退けた。
特にニッチェは、7年ぶりの出場。
そんな彼女たちに「出てほしい」と背中を押したのが、今回、最終決戦で雌雄を決した紺野ぶるまだったという。その第1回があったからこそ、妊活や育休を経て、やっぱり自分たちはネタをやりたいと再び『THE W』に挑戦した。
大会のシステム上、芸歴1年目の若手と直接対決で敗れる可能性もある。そこにテレビでしっかりとした地位のある彼女たちが挑むのは、ハイリスク。並々ならぬ決意があったに違いない。そして、抜群の演技力を武器に3票-2票-2票という大接戦で優勝を果たしたのだ。
結果的に、かつて背中を押してくれた紺野ぶるまの“壁”になったというのは、なんとも熱い話だ。ニッチェが所属するマセキ芸能社からは意外にも大型賞レース番組では初の戴冠。その意味は大きい。
「親友と一緒にずっとやってきて、2本ネタを見ていただいて優勝を勝ち取れたというのが本当に嬉しいです!」
そう言って涙を流し、肩を抱き合う2人。
出場者、審査員、スタッフ――全員の「本気」が交錯して、『THE W』の価値は更新されていく。
文/戸部田誠(てれびのスキマ)

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