「AI壁打ち」の落とし穴 ChatGPT、Gemini、Grok…同じ質問で答えはここまで違った
「AI壁打ち」の落とし穴 ChatGPT、Gemini、Grok…同じ質問で答えはここまで違った

「AIと壁打ちしているはずなのに、なぜか頭が整理されない」そんな違和感を覚えたことがある人は少なくないだろう。生成AIは優秀だが、万能ではない。

とくに壁打ちの相手として使う場合、ある前提を誤解すると、思考は浅いまま止まってしまう。AI壁打ちに潜む落とし穴と、うまく使いこなすための視点につき、『壁打ちは最強の思考術である』より一部を抜粋、編集してお届けする。

「AI壁打ち」でハマりがちなワナに要注意

近ごろでは、ChatGPTやGeminiなどの生成系AIを使って「壁打ち」に似たコミュニケーションを試みる人が増えてきました。アイデアを投げかけるとそれなりの答えが返ってくるので、たしかに便利な道具ではあります。

ただし!

AIとの壁打ちには、ハマりやすいワナがあります。これを知らずに使っていると、「なんだか思考が深まらないな……」という結果になりがちです。

まず大前提として、AIは〝相手の文脈〟を理解してくれません。

あなたの人生や仕事の背景、これまで考えてきた経緯などをすべて理解した上で返してくれるわけではない。だから、ある程度こちらから前提情報をしっかり入力しないと、誰にでもあてはまるような浅い返答になりがちです。

さらに、AIの回答は「問いの精度」に大きく左右されます。つまり、こちらの問いがぼんやりしていると、AIの返答もぼんやりしたものになります。

たとえば、ChatGPTに「会社をよくする方法を教えて」と聞いても、当たり障りのない一般論しか返ってこないでしょう。でも、「社員のエンゲージメントが下がっていて、1on1での壁打ちを強化したいと思っている。

過去に実践例があれば教えて」と聞けば、グッと具体的なヒントが得られます。

AI壁打ちには「問いのスキル」が求められるという点で、「モヤモヤ状態からのスタート」が前提となる壁打ちには、実はハードルが高い相手とも考えられるのです。

AI壁打ちをする場合には、以下のポイントを意識するといいでしょう。

✔質問はなるべく具体的に、背景も含めて伝える
✔最初の問いは「仮説」や「アイデアの種」に絞る
✔返ってきた答えはすぐにうのみにせず、違和感があれば問い直す
✔複数のAIサービスを試して、目的によって使い分ける

AIとの壁打ちで大切なのは、「問いを洗練させる」という視点。

その問いのチューニングこそが、あなた自身の思考力の証明になるのです。

AIごとの特徴で使い分けも有効

AIサービスにも、様々な種類があります。使っている人が多いのは、ChatGPTやGeminiでしょうか。

試しに、「社員のエンゲージメントが下がっていて、1on1での壁打ちを強化したいと思っている。過去に実践例があれば教えて。400字以内にまとめてね」というサーブを、ChatGPT、Gemini、Grok、Copilotにそれぞれ投げてみました。

それぞれの答えをお見せします。

ChatGPT
メルカリでは、急成長による組織の分断を防ぐため、1on1を全マネージャーに義務づけました。週1回・30分の1on1を通じて、上司は部下の話を「聴く」姿勢を徹底。

対話の質を高めるため、社内でトレーニングプログラムも整備しました。LINEでは、1on1をキャリア支援の場と位置づけ、上司に傾聴力や対話力を養う研修を実施。部下が気軽に相談できる環境づくりに注力しています。これらの取り組みにより、社員満足度やエンゲージメントスコアが改善された事例があります。

Gemini
社員エンゲージメント低下に対し、1on1での壁打ち強化に取り組む企業は多く存在します。たとえば、メルカリは個人の成長とキャリア開発を重視し、目標設定やフィードバック、キャリア相談などを1on1で実施。信頼関係構築に注力しています。サイバーエージェントは若手リーダー育成のため、マネジメントスキル向上やチーム運営の壁打ちを実施。事業特性に合わせた工夫も。SmartHRは1on1の質を高める研修やガイドラインを整備し、組織全体のエンゲージメント向上を図っています。リクルートは多様な事業と従業員に対し、個々の成長と組織目標の両立を目指した1on1を実施。経験豊富なマネージャーによる壁打ちやキャリア形成支援も強化しています。

これらの事例は、1on1が社員の成長支援、課題解決、信頼関係構築に有効であることを示唆しています。

Grok
社員エンゲージメント向上のため、1on1を強化した企業事例を紹介します。サイボウズは週1回の1on1を標準化し、心理的安全性を確保、離職率を28%から4%に低減。リクルートはマネージャー研修で1on1の対話スキルを強化、社員の主体性を向上。メルカリは「Check-in」で信頼構築、透明性を強化。共通点は目的明確化、定期実施、傾聴スキル重視。詳細は各社HR施策やモチベーションクラウドのケーススタディ参照。

Copilot
1on1を活用して社員のエンゲージメントを向上させた事例はいくつかあります。たとえば、ある企業では1on1のアジェンダを事前に設定し、部下が話したいテーマを選べるようにしました。これにより、対話の質が向上し、社員の主体性が高まったそうです。また、別の企業では1on1の頻度を増やし、短時間でも定期的に実施することで、社員の心理的安全性を確保しました。これにより、業務の悩みやキャリアの相談がしやすくなり、エンゲージメントが向上したとのことです。

さらに、フィードバックを重視した1on1を導入し、上司が部下の強みを具体的に伝えることで、モチベーションの向上につながった企業もあります。これらの事例を参考に、貴社の状況に合った1on1の工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか?

同じ質問をしていても、4つのAIからの答えは多様です。ChatGPTがいちばん簡潔にまとまっているでしょうか。もっとも事例が多いのはGeminiですが、具体的なのはGrokに感じます。Copilotに至っては社名が全く出ていませんが、初心者にはもっとも易しい返事に思えます。それぞれのAIが得意なジャンルや、返事の方向性まで見極められれば、かなり精度は上がっていくでしょう。

さらにAIとの壁打ちで「僕自身との壁打ち」をしているようにしたく、実は今、AI分野に明るいTANREN代表の佐藤勝彦さんの力を借りて、僕の視点や知識に基づき打ち返してくれる学習をさせた「AI伊藤羊一」なるオリジナルのAIエージェントを育てている最中です。

より多くの人に壁打ちや1on1の機会を提供したいという目的で開発し、現在試行運転中ですが、「めっちゃ羊一さんっぽいです!」という反響をいただいています。

生身の僕とAIの僕と、どっちが壁打ちの達人になれるか?ここから最高にクリエイティブな勝負ができそうでワクワクしています。

文/伊藤羊一 写真/shutterstock

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