市議会解散に市長失職と大混乱が続いた静岡県伊東市では12月14日の出直し市長選で田久保眞紀前市長(55)が落選し、“田久保劇場”はいったん終幕したかにみえる。だが本人は落選の夜に報道陣の前に姿を現さなかった。
そこで集英社オンラインが訪ねていくと田久保氏は落ち込んでいる様子はなく、静かに「これで終わりですとはいかない」と口にしたのだった。
14日は自宅前に30~40人のメディアが詰めかけ
選挙は国民民主党と連合静岡の推薦を得た新人の杉本憲也前市議(43)が1万3522票を獲得し、自民党推薦で1万962票を得た小野達也元市長(62)との競り合いを制し当選した。
今年5月の前回市長選で約1万4600票を得て小野氏を下した田久保氏は4131票しかなく当選ラインからは程遠かった。
「学歴詐称疑惑発覚の後、支持者はどんどん離れていきました。思えば5月の選挙では田久保氏の最終日のマイク納めには支持者が何百人も集まったそうです。
その場所は、メガソーラー建設反対運動を田久保氏と一緒に取り組んだ地元の有力支援者が持つ国道沿いの土地だったのですが、今回、その有力支援者も離れてしまったため、田久保氏はその場所では演説もできなくなっていました」(地元記者)
ただ、惨敗しても田久保氏への関心は強く、投開票日の14日には事務所として登録された郊外の自宅前に30~40人のメディアが詰めかけた。
「田久保氏側は当初、結果が見えれば30分後をメドに取材に応じるとメディア側に伝えていたと報じられていました。14日は午後11時前に杉本氏に当確が出たので各社待っていたのですが、一向に現れない。
結局、15日午前1時ごろ『今日は答えられない。メッセージはSNSで出す』との田久保氏側の話が伝えられました」(地元記者)
その言葉通り田久保氏は約3時間後の午前4時ごろ、自身のSNSに、
〈これだけの逆境の中でも私を信じて支えてくれたみなさんの想いに感謝しかありません。今回の選挙戦で繋がったみなさんとの絆はいつまでも私の宝物です。自宅の周辺にマスコミが押し寄せた為、選挙後のコメントを取りやめざるを得ませんでしたが、この後からの動画配信だけではなく、改めてまたみなさんとお話出来る場を作りたいと思っています。〉
とのコメントをアップ。
「相手候補と戦っているというより報道と戦っていた」
そんな中、集英社オンラインは15日、車で帰宅したばかりの田久保氏本人を直撃した。
――選挙が終わってどうしてますか。
「ウチはもう通常運転入っちゃったんで普段の生活していますよ。選挙戦の片づけなんかしていたところで。先が全然未定なんで片付けしながら『どうしようか』なんて言っていた感じで」
――今のお気持ちは?
「あの情勢の中ですごく熱烈に応援をしていただいて感謝しかないですよね。
私は『やった、やりきったぞ』って感じではあったんですけど、やっぱり周りの方や応援してくれていた方々は『ああー、残念』って感じではありましたけど」
――結果はどう思います?
「(元市長の)小野さんが負けるとは思わなかったのでびっくりはしましたね」
――杉本新市長についてはどう思いますか?
「えっ? いや、まあ…」
――言いづらい?
「そうですね。まあ」
まったく落ち込むような様子もない田久保氏に前夜、取材対応をドタキャンしたことに説明を求めたところ…。
「プレスから一言コメント欲しいって言われ『ウチも事務所構えているわけじゃないですし』って言ってたんです。夕方7時ごろからどこの人かわからないような人まで40人くらい集まって、自宅近くで夜中でしたし『申し訳ないけど今コメント出せるような状況じゃない』ってお伝えしました。
『行きたくない』とは言ってないですよ。報道に対しては行き違いというかどういう意図なのか、というのはありました。選挙中も相手候補と戦っているというより報道と戦っているというところもありましたしね」
市長という公職を務め、それに対する審判が出た時にメディアが多く集まったから取材を回避したというのだ。
もう一度市長をやりたい気持ちがあるのかたずねると…
メディアへの皮肉を交えながら田久保氏は、市長時代の一番の思い出についてはこう即答した。
「もう思い出も何も、毎日があの調子でしたから。仕事にもっと集中したかったですけどね。毎日のようにマスコミが詰めかけていましたし。本当にワーワーワーワーしてましたから」
とはいえ、騒ぎは本人の学歴詐称疑惑から始まっている。
そこで、すべての問題の発端になった「学歴詐称疑惑」について改めてどう思うのか聞いてみると田久保氏は「いや、詐称はしてないですよ。時系列にわかった順にご説明をしてますけど、まあやっぱり詐称してるとか嘘つきとかっていうのがちょっと先行しちゃったんでね」と反論。
「詐称」「嘘つき」との評価は結局ひっくり返せなかったのでは、と尋ねると「ひっくり返せないというか、そこをわかって応援してくれてた方は残ってくださってましたけどね」と返答した。
気になる今後について聞いてみると「未定」だと強調する。
「今は真っ白です。自分的には真っ白な中で何をしていこうかなと。どっちにでもどういう風にも進める状況の中で、どんなチャンスがあるのか、どんなことができるのか自分なりにやっていこうって感じです。
しかし再度選挙に話が及ぶと田久保氏は「とにかく(選挙に)出ないという選択肢はなかったですし、日に日に多くなった応援に応えたいなという気持ちでしたね」と言う。
では、もう一度市長をやりたい気持ちがあるのか尋ねると「どうですかね」と否定はせずこう答えた。
「あの状況の中でみなさんがたくさん応援してくれたのを見ちゃうと責任を感じるし、そういう思いにはやっぱり『これで終わりです』というわけにはいかないかなとは思っています。ただ具体的にどうするかというのは決まってないですけど…」
田久保氏にはこの間、学歴詐称疑惑に絡む公職選挙法違反罪などで複数の刑事告発が出されている。捜査の行方も絡み田久保劇場は2026年も続きそうだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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