高市総理にとって初となった臨時国会が閉会した。10月20日の発足から高支持率を武器にガソリン減税などの政策を進めたが、「議員定数削減」をめぐる日本維新の会との連立合意は来年の国会に先送りとなった。
吉村代表「おかしなことなんて言ってない」
「(議員定数の削減法の成立は)100%無理だ。無知の極み。ちょっと言い方きついけど、顔を洗って出直された方がいい」
維新が「改革のセンターピンだ」として、今国会での成立を目指した議員定数の削減法案を立憲民主党の斎藤参院国対委員長はそう言って、こき下ろした。
国会閉会日の2日前となる15日、立憲幹部の言葉に維新の吉村代表は猛烈に反論した。
「顔ぐらい洗っている。おかしなことなんて言っていない。『そちらも顔洗って、議員定数削減も、そして企業団体献金の法案も採決してください』」
10月20日。自民の高市総裁と維新の吉村代表は、12項目の政策提言を盛り込んだ連立合意書に互いにサインした。
「いまなら俺たちを高く売れるぞ」
企業団体献金の禁止に「絶対に無理だ。地方で暴動が起きる」
高市総裁の誕生とともに、26年間連れ添った公明は連立を離脱。高市総裁は総理大臣指名選挙を目前に長年の連立パートナーを失って、衆参両院で圧倒的な少数与党に成り下がった。
一時期は「自民党総裁になったけど、総理大臣にはなれないかわいそうな女と言われている高市早苗です」と、自虐的な自己紹介をしていたほどだ。そんな中、維新で唯一といっていい旧知の仲だった遠藤敬氏からのメールに高市氏は飛びついた。
しかし、何としても公明の代わりに維新を抱き込みたい高市氏にとっても、維新が連立合意書に入れたがった政治改革案件のなかで、公明の連立離脱につながった企業団体献金の規制を受け入れることはできなかった。
自民は地方を中心に政党支部を約7700ほど持っている。企業団体献金を党本部と都道府県連の政治団体のみに限定するような規制法案を飲めるはずはなかった。
総裁になった高市氏が自民内の政治改革を担当する大ベテラン議員に規制の可能性を問い合わせたところ、「絶対に無理だ。地方で暴動が起きるぞ」と警告されたという。
公明「賛成すれば、あんたの地元の学会票はすべて立憲民に行く」
自民は都道府県議会で多くの議員を抱える。その地方議員が自民党の力の源泉だ。献金規制は彼らが干上がることを意味していたから無理難題と言えた。
そうした自民のお家事情は馬場伸幸氏や遠藤氏のような自民を出身母体とするベテランはよく分かっていた。
だが、そんなとってつけたような「定数削減」には野党が猛反発した。
「なぜ1割削減なのか? なぜ比例区なのか。根拠がさっぱり分からない」
公明党の西田幹事長は首をかしげる。とりわけ比例削減は自民との連立を解消して小選挙区から撤退し、比例区に全集中するつもりだった公明にとっては死活問題だ。連立解消しても地方レベルで自民との選挙協力を武器に地元で自民議員に圧力をかけ始めた。
「定数削減に賛成すれば、あんたの地元の公明・創価学会票はすべて立憲民主党に行くぞ」
ある九州地方の自民議員はそういって脅されたという。
この議員の地元で公明・創価学会票は約1万5000票あるとみられる。その1万5千票が離れるだけではなく、ライバルの立憲議員に流れたら「行ってこいで3万票になる。もはや比例復活も無理だ。とてもじゃないけど逆らえない」
高市総理「何とか維新の顔を立てて欲しい」
維新の藤田共同代表が「自民はやらないで済む理由を一生懸命考えている」といら立った背景には公明党の自民への圧力があった。
時間がたつにつれて、両党の不信感が募った。その膠着状態の打開を図ったのも、この連立政権のきっかけを作った遠藤氏だった。
維新の国会対策委員長として辣腕を振るいつつ、首相補佐官として総理官邸にも部屋を持つ。財務や警察など主要官庁から秘書官も出向して脇を固めている。その遠藤氏が11月下旬、高市総理にこう告げた。
「うちの吉村も藤田も苦労している。何とか定数削減法案を前に進めて欲しい」
高市総理は鈴木幹事長に連絡してこう述べた。
「何とか維新の顔を立てて欲しい」
同時に遠藤氏は維新の執行部に「連立離脱カード」の発動も指示した。自民執行部を揺さぶって、12月5日、自民と維新は議員定数削減の法案を国会に提出した。
与野党で議論して1年以内に定数削減の方法と数を決める。1年以内に決まらなかった場合は、自動的に小選挙区25、比例区20削減するという「自動削減条項」を盛り込んだ。
だが、この自動削除条項には野党だけではなく自民党内にも猛反発があった。自民の岩屋前外務大臣は「こんな問答無用条項は論外だ」。公明の斉藤鉄夫代表は「民主主義の否定だ」と強烈な批判を浴びせた。
四面楚歌の維新はそのまま時間切れに
四面楚歌の維新は、そのまま時間切れになり、会期末を迎えた。国会閉会を前にした16日の高市総理と吉村代表の党首会談では衆院解散はおろか会期延長の話も出ず、ただ来年国会での成立を再び目指していくことを確認しただけだった。
気がつけば、この2カ月、維新は自民に振り回された。自民(196)と維新(34)を足しても衆院過半数233に3議席足りない状態で「連立政権」はスタート。
しかし、国会中に自民は維新を離党して除名処分を受けていた3人の無所属議員の取り込みに成功。233の過半数を達成した。この3人の自民会派入りは維新側には直前まで伝えられていなかった。
さらに、物価高対策の補正予算では公明が熱望した現金給付を子どもを対象に1人2万円で復活させた。国民民主が求めていたガソリン減税の法案を通し、年収の壁でも前向きな協議をみせることで、補正予算案では公明と国民民主の賛成を取り付けた。
つまり、維新がいなくても別によかった
結果として、自民は維新の賛成がなくても、自民、国民民主、公明の3党で予算の成立が可能な衆参の過半数を確保した。
経済対策や防衛費拡大などで自民との協議を求めた維新だったが、自民側からは「維新は与党慣れしていない。振る舞いが野党のままだ」などと、子ども扱いするような言動が漏れてくるようになった。
実際に、維新が定数削減同様に最重要視した社会保障改革でも維新の後退が目立った。ドラッグストアなどでも購入可能なOTC類似薬について、維新は保険適用からの除外を求めた。
だが、医師会などの反発を受け止めた自民党が事前に厚生労働省に根回しをして、保険適用からの除外という維新の要望は断念させられた。
引き続き保険適用を維持して、特別料金などで湿布薬などに患者負担増を受け入れさせるが、「とてもこれでは1兆円の削減にはつながらないだろう。維新は厚労行政が分かっていない」と厚労大臣経験者の自民議員は余裕を見せる。
自民大臣経験者「維新でうちとまともにやり合えるのは馬場さんと遠藤さんぐらい」
そのほか、来年は防衛装備品の輸出解禁なども与党協議会の枠組みで議論していくが、その気になれば防衛大臣経験者を5人でも10人でも並べることができる自民に対し、維新は外交や防衛、安全保障法制に精通した議員はほぼ皆無だという。
「そもそも維新でうちとまともにやり合える政治家なんて、馬場さんと遠藤さんぐらいだろう。吉村さんなんて衆院議員の経験は10カ月程度だろう。なんで大阪府知事が国会議員の定数削減に口を出してくるんだ。身の程をわきまえて欲しいよね」
自民の大臣経験者は維新を子ども扱いするように不満をぶちまける。自民内を見回しても維新の定数削減法案に本音から賛成しているという議員は見当たらない。
それでも維新は来年の通常国会でも「身を切る改革」として定数削減を掲げるだろう。だが、立憲民主党幹部も「(定数削減は)審議しない。
今国会と同じような光景がきっと来年も続くことになるはずだ。それでも吉村氏は悲願の大阪都構想につながる副首都法案のために、自民との連立維持にはこだわるだろう。
自民と連立を26年間組んだ公明は、いつも最後は自民に譲ってきたため「どこまでもついて行きます、下駄の雪」と野党に揶揄されることもあった。それでもいざというときは選挙協力で小選挙区の自民候補に回していた公明票を交渉の武器に徹底抗戦することもあった。
維新にはそんな公明が持っていた選挙カードのような切り札もない。水面下で人数を増やすような老獪な交渉術においても、豊富な閣僚経験からくる政策の知見においても、維新は自民の足元にも及ばなかった。
このまま公明以上の下駄の雪として自民にへばりつくのか。それとも連立離脱カードを発動するのか。自民・維新連立政権の賞味期限は来年には早くも切れる日が訪れそうだ。
文/長島重治

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