アニメ『正反対な君と僕』が描く、等身大で誠実な青春。その世界観に強く共感しつつも、tofubeats自身の学生時代は「まったく正反対」だったという。
中高6年間の男子校生活、相撲大会や無人島キャンプといった独特すぎる学校行事、部活無所属でキャンドゥのバイトに明け暮れた日々……。青春コンプレックスとどう向き合い、今の価値観にたどり着いたのか。〈前後編の後編〉
中高6年間男子校の功罪
──『正反対な君と僕』は学園ものですが、トーフさんの青春はいかがでしたか。
tofubeats(以下同) いやもう、中高6年間男子校だったので。(主人公の)谷くんとかの学年の頃なんて、ふんどし締めて相撲大会とか、無人島キャンプとか、ハードな想い出ばかりですよ。
──どれも聞いたことないイベントですね(笑)。部活とかじゃなくて、学校のオフィシャルな行事として相撲があるんですか?
そうです、ちゃんと土俵があって、全校の1位をマジで決めるという。自分はクラスで2位でした。4クラスあるうちの各上位2名が決勝に進むんですけど、その決勝1回戦で敗退しました(笑)。
そんな母校も、自分が卒業して数年後に共学化してるんですけどね。何年か前に訪れたんですけど、自分が通っていたころと全然違いました。もともと私服の学校だったんで、女の子とかも髪型自由だし。もう本当に『正反対な君と僕』の世界ですよ。
──谷くんとは正反対の青春だったわけですね。そういう「男子校」っぽさというか、青春コンプレックスみたいなのって今もありますか?
いやまあ、そういうルサンチマンみたいなのは今はもうないですね。そういうのを「売り」にするのは良くないな、と。そんな、30を超えたいいオトナで、音楽で食えてる人間が鬱屈としてるのって、カッコ悪いじゃないですか(笑)。「何がそんなに不満あんねん」みたいな。
──ただ、そういう青春コンプレックス的なものも、アーティスト像として需要はありますよね。
そうですね、それは否定しませんが、自分としては、そういうリスナーの鬱屈に同調するよりは「そうじゃなくなっていくために頑張ろう」っていうことを発信したいかな、という感じですかね。プラスの面を見て生きていこう、と。
──では、男子校のプラスの面というと?
これは女子校もそうだと思いますけど「恋愛がない」っていうことだと思いますね。彼女がいる・いない、モテる・モテないのヒエラルキーが解体されてる状態なので、それは良いことなんじゃないかと思います。そういうのがないだけで、人ってこんなに仲良くなれるんだっていうことが理解できますからね。
──モテのヒエラルキーの代わりに、相撲大会があるわけですね。
例えばですけど、自分は映画部みたいなクラブに行って、そこでパソコンとかずっと触ってたんですけど、共学で「女子」からの目があったら、そういうのも意識しちゃうじゃないですか。男子校だとそれもないですしね。もちろん、共学でも、人目を気にせず好きなことができる学校だって、いっぱいあると思いますが。
部活は無所属、本業はキャンドゥ
──地味な文化部だとモテない、みたいなことはつい考えちゃうかもしれませんね。映画部ということは映画に興味があったんですか?
部というか、同好会みたいな感じだったのかな。先生がMacを持っていて、それで動画を編集したりする部でした。ただ、そこに所属はしてなくて……自分は基本的にどの部にも所属してなかったんですよ。
軽音部を自分で立ち上げようともしたんですけど、騒音の問題で許可されなくて。それで、ユーティリティプレイヤーとして、気が向いたらいろんな部活に顔を出していました。
──そこだけ聞くとマンガの設定っぽいですね。バイトはどうですか。
機材を買うために、とにかくキャンドゥでバイトをしてたんですよ。だから部活は無所属、本業はキャンドゥ。そんな青春ですね。
──当時の自分を思い出して「もっとああしておけば良かった」と思うことはありますか?
いやあ「ま、こんなもんかな」と思ってますけどね。強いて言うなら、もうちょっと同級生と仲良くしてても良かったかな、とは思いますね。別にクラスのみんなと仲が悪かったわけじゃないですけど、高校生のときにはもう音楽活動をいろいろやっていて、学外が交友関係の中心だったんですよ。それこそ『水星』で共演したオノマトペ大臣とか。
そういう年長者に囲まれてるから、同級生からすると「何されてる方なの?」ですよね。『正反対な君と僕』みたいな、学校の中に友達がいっぱいいる状況っていいなとは思いますね。
──原作『正反対な君と僕』の友達関係を見ていると、そう思うのもうなずけます。
こう、悪意が存在しない物語というか、登場人物が皆、倫理観がありますよね。本当に悪い奴、意地悪な奴っていうのが出てこないじゃないですか? 『中学生日記』とかでも、もうちょっと意地悪な奴とか出てくると思うんですけど。
絵本みたいに、子どもに読ませたいですね。バイオレンスなマンガがある一方で、こういう一切悪意のないマンガもあるのが、今の時代っぽいなと思います。
あとは心理描写ですよね。例えばデートのシーンの描き方の解像度とか、どうやってこれを描いてるのかな、と思いますね。
──ちなみに、トーフさんの初デートはいつなんですか。
う~ん、どこからをデートとするのか……。本当に、男子校なんで、女の子と一緒に登下校するだけでも一大イベントですからね。まあ、誰かの紹介で、女の子とゲームセンターとかに行ったのは、16、7歳とかですかね。それも別に、そこから付き合うということもなく。その頃はアイドルにハマってました。
──こういう青春もありえたと思いながら『正反対な君と僕』を読むと、また味わいがありますね。
谷くんの下の名前にも、個人的に親しみがありますしね(笑)。
(なぜtofubeatsが谷くんの名前に親しみを感じるかは、原作2巻を読んだ後、tofubeatsのwikipediaをご覧ください!)
#1はこちら
取材・文/Shoichiro Kotetsu 撮影/濱田紘輔

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