富裕層はなぜお金持ちなのか。それはお金の貯め方ではなく使い方にヒントがあるかもしれない。
税理士である森田貴子氏の書籍『億万長者になるお金の使い方』より一部を抜粋・再構成し、富裕層のお金の使い方について説明する。
富裕層は「ストック支出」が多い
お金を使うという点では、どんな支出も同じように見えますが、支出は「フロー支出」と「ストック支出」に分けることができます。
財布からお金が出ていくという点では、どんなお金も同じように見えます。けれど、その使い方が「ただ流れていくだけのもの」になるのか、それとも「あとからじわじわと自分を支えてくれるもの」になるのか。この違いは、思っている以上に大きいのです。
「フロー支出」とは、その場限りで流れていくもの。今日の出費が明日には価値を失って自分の中に何も残らない、そんな支出です。
一方で「ストック支出」とは、じわじわと自分に蓄積されていくもの。その価値はむしろ時間が経ってから効いてくる、自分の糧になる支出のことを指します。
大事なのは、それが高かったか安かったかではなく、「何のために使ったか」。価格よりも、「どんな自分を育てるお金だったのか」という問いを軸にすれば、お金は確かに「見えない自分資産」に変わっていきます。
この考え方が、これからの時代にはずっと大切になってくるはずです。
富裕層に共通する「8つのストック支出」
富裕層の支出は、派手で華やかな消費ばかりに見えるかもしれません。けれど、その本質はむしろ、静かに続けている「ストック支出」にあります。
日々の暮らしの中で体験し、学び、人と出会い、健康を守る。そんな積み重ねの中で育っていくのが、「見えない自分資産」です。それは一朝一夕に築かれるものではありませんが、日々のお金の使い方に意識を向けることで、確実に積み上がっていく資産です。目には見えなくても、人生の選択肢や可能性を広げ、将来のあなたを支えてくれる「本当の財産」になるのです。
何にお金を使うのか?
それは、その人が何に価値を置いて生きているかを如実に表します。長年にわたりお客様と関わる中で、ある共通のパターンに気づきました。富が持続している富裕層のお金の使い方は、大きく次のような「8つのストック支出」に分かれているのです。
(1)価値ある体験
(2)継続的な学び
(3)体の健康
(4)心の健康
(5)家族
(6)つながり
(7)社会貢献
(8)投資
この8つのストック支出のすべてが「見えない資産」につながります。
8つの領域のうち何をより重視するかは、人によって、また、年齢やステージにより異なりますが、私が見てきた限り、どれかが「ゼロ」の人はいません。特にお手本としたい富裕層は、この8つすべてにきちんとお金を使っているという点が印象的です。
豊かであり続けている人ほど、この8つのどこかに必ず偏愛を持っていたりします。それは目立つ支出ではなく、静かに積み重ねられている支出です。そこに、自分の「好きなこと」「得意なこと」「関心があること」が表れます。
日々の支出にどんな傾向があるかを見つめ直すことで、自分が何を大切にしているのかが、ふと浮かび上がってくるのです。
まず、単なる消費ではなく、長い目で見て自分の糧となる「ストック支出」をする。こうした「お金の使い方」ならば真似できそうではありませんか。
当然、日々の暮らしには、フロー支出がつきものです。富裕層の暮らしも例外ではありませんが、実は、富裕層はフロー支出にもこの8つの価値観を軸にお金を使っています。興味深いのは、「フロー支出であっても、目的や理由、意識次第でストック支出にしてしまう」ことです。
たとえば、スニーカーを買うとしましょう。「なんとなく安くて無難だから」という理由で買うと、ただのフロー支出。でも、「毎日のランニングで足腰を痛めないように」と目的を持って選んだなら、健康を守るための投資――つまり、ストック的な支出になります。
もちろん、ストック支出になるフロー支出ばかりではありませんが、このように、同じモノを買っても、そこにある理由や目的の違いで、「あとに何が残るか」は大きく変わるというわけです。
「活かす」「残す」「つなぐ」「育てる」という視点
たとえば、ある起業家は、子どもの教育費だけでなく、地域の子ども食堂やスポーツチームへの継続的な支援にも資金を投じています。また、ある創業家は、公益財団法人制度を活用しながら、次世代や地域への想いをかたちにし、創業者の意志を継承する仕組みを整えています。
一方で、「富が離れていく人」は、高級外車や時計、不動産に多額を投じるも維持できず、ギャンブルや浪費が重なり資金繰りに行き詰まるという人も多いです。そうしたケースでは、収入以上に使ってしまうという問題に加え、目先の満足を優先するようなフロー支出が目立つ傾向があります。
そして、自己投資といった「見えない資産」へのストック支出も、子どもへの教育費や社会貢献といった「活かす」「残す」「つなぐ」「育てる」という視点でのストック支出も、ほとんど見られません。
実は、多くの富裕層は成功を収めたあと、贅沢を楽しむ時期があります。高級車を買い、ブランド品を揃え、憧れの地をめぐる旅に出る。それは、努力への正当なご褒美だと思います。けれど、そうした消費の時期が長く続かない人ほど、結果として富を持続させています。
日々の選択が、「今の快楽」ではなく「未来の自分と誰か」のための支出につながります。「消えていくフロー支出」よりも「積み上がっていくストック支出」を選ぶこと。それを積み重ねていくことが、「見えない自分資産」を築き上げ、長期的な豊かさを得ている「本物の成功者たち」の共通点です。
富裕層の支出はタイパやコスパといった短期的な損得の計算を超えたところにあります。見えない自分資産を育てるという価値観が、長期的な富の持続につながっているのです。
億万長者になるお金の使い方 富裕層の領収書1000万枚見てきた税理士が教える
森田貴子
富裕層でいつづける人の領収書には、たくさんの共通点があった!
富裕層専門税理士である著者は、長年、富裕層の栄枯盛衰に伴走し、これまで1000万枚もの富裕層の領収書を見てきました。
そんななかで、あることに気が付きます。
――富裕層でいつづける人の領収書には、たくさんの共通点がある!
領収書は「何にお金を使っているのか」を教えてくれるだけではありません。
お金の使い方は、その人の価値観を面白いくらいに反映しています。
生活習慣やなにに投資しているか、優先していることも手に取るようにわかるのです。
そして、富裕層の多くは、なににお金を投じるか、一つひとつ真剣に考えることを積み重ねた結果、お金持ちになっている、と著者は言います。
そこで本書では、富裕層のなかでも、一代で事業を立ち上げ、ゼロから富を築いた「起業家富裕層」の領収書の共通点を探っていきます。
「どうせお金がないから真似できない」と嘆くのは早計です。
サラリーマンでも学びになる話を中心にまとめています。
お金持ちになる準備が整い、お金持ちに一歩近づくことができる、そんな一冊です。
はじめに 富裕層専門税理士という仕事
第1章 1000万枚の領収書からわかった「本物の成功法則」
第2章 富裕層の支出哲学を支える「思考と習慣」
第3章 「継続的に学ぶ人」ほど富が拡大する
第4章 「健やかな心と体」こそ最大の資本
第5章 「つながり」という財産が人生の質を決める
第6章 富裕層の「資産をつくる」お金の使い方
第7章 富裕層に学ぶフローの支出哲学
おわりに

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