職場での「〇〇ちゃん」呼びをセクハラと認定した東京地裁の判決が大きな議論を呼んでいる。「それくらいでセクハラは厳しすぎる」「もう雑談もできないのか」といった反発の声も少なくない。
40代女性が受けた年上男性からのセクハラ
2025年10月、佐川急便の営業所に勤務していた40代の女性が、年上の元同僚男性の言動によって精神的苦痛を受けたとして、約550万円の慰謝料を求めて起こした訴訟で、東京地裁は、社会的に許容される範囲を超えるハラスメントに当たると判断した。裁判所は男性側の責任を認め、22万円の支払いを命じている。
訴えによると、女性は職場で、継続的に名字に「ちゃん」を付けた呼び方をされていたほか、「かわいい」「体形がいいね」「下着が見えてしまう」といった外見に関する発言を繰り返し受けていたという。
さらに男性は、営業所名義で事前の了承なく女性の自宅に電報を送付。「いつも明るく対応してくれることにみんな幸せを感じています」といった感謝の言葉がつづられ、宛名には職場で使われていた「〇〇ちゃん」という呼び名が用いられていた。
こうした一連の言動によって女性は精神的苦痛を受け、うつ病を発症し、退職に至ったとして提訴した。
裁判所は、職場における親しみや冗談のつもりであったとしても、業務上の必要性がなく、一般的に幼い子どもや親密な関係にある相手に使われる「ちゃん付け」が、同僚関係という業務環境において相手に不快感を与える結果になったと指摘。上司側が主張した「悪意はなく、職場の雰囲気を和らげるためだった」という説明も退けた。
今回のケースは複合的な要素が絡み合った末の判断であり、「〇〇ちゃん」呼びをしただけで即ハラスメントになる、と受け取るのはやや誇張がある。それでも、この件が「〇〇ちゃん」呼びをハラスメントと認定した判決として受け止められたことで、ネット上では動揺が広がった。
「もはやちゃん呼びに抵抗がある人が増えてきたという、まさに令和やな」
「昔は当たり前のようにちゃん付けで呼んでいて、それでいて雰囲気の良い職場でした。ただ、新入社員が気持ち悪いと騒ぎ出してから、ちゃん付で呼ぶ人はいなくなりました。
「私も仕事相手で名字+ちゃん呼びしてくる方がいますが不思議と不快ではありません。むしろ急にさん呼びされたら寂しいと思います」
懇親会の直後にも無意識なセクハラ行為
今回の反響で多かったのは、「被害者の感じ方次第でアウトになるなら怖い」「さすがに過剰では」といった声だ。セクハラというと、身体に触る、露骨な性的発言をするといった、分かりやすい行為を思い浮かべる人も多いだろう。
だが今回の判決が問題にしたのは、「ちゃん付け」そのものではない。不快でも指摘できず、場の空気に合わせてやり過ごすしかない関係性が、職場にあったかどうかだ。
元工場経営者でトラックドライバーの経験もあり、現在はブルーカラーの労働環境などを専門に取材・執筆するライターの橋本愛喜さんに、その実情を聞いた。
「ブルーカラーのような超男性社会のなかでは、中年女性である私でも、その日に会ったばかりの男性から“ちゃん付け”されることがよくあります。
日ごろ、ライター活動のかたわら経営者向けの講演会をしていますが、ある会場では、『女性の働きにくさ』を話した30分後に開かれた懇親会で、乾杯の挨拶に立った役員男性がマイク越しに『今日は橋本先生、あ、先生と呼ばれるのはイヤなんですよね、橋本さん? いや、あいきちゃん』と発言されたことがありました。ほぼ男性の会場は、それにドッと笑いが起きる。そんな業界の世界観に毎度悩まされています」
一方で、それに反発すると「かわいくない」「生意気」と受け取られることも多い。なかには態度を一変させ、「ちゃん」から急に「先生」と呼ぶようになる男性もいるという。また、そうした男性に対し、大勢の前で「君付け」で返すと、一気に不機嫌になるケースも少なくない。
こうした背景について橋本さんは、「人手不足が深刻化する一方で、依然として男性比率が高く、女性が少数派になりやすい業界構造」があると指摘する。
「人手不足が深刻化するブルーカラーでは各業種、女性労働者を受け入れようとする動きはあるもののまだまだ完全な男性社会。トラックドライバーの女性割合はたった3%です。そのうえ、体を使った仕事をする環境、またはそんな労働者が身近にいることで、自覚のないセクハラが頻発しやすい環境だといえます」
“ちゃん付け”は相手を子ども扱いしたマウント?
橋本さんは、こうした言動を「マイクロアグレッション(無自覚な偏見や小さな攻撃)」と位置づける。「悪気はなかった」という言葉の裏で、黙ってきた側の我慢が見過ごされてきたと語る。
では、どうすればいいのか。橋本さんは、いきなり強く抗議するのが難しい現場も多いとしたうえで、現実的な対処法として「自分の呼ばれ方を自称で示す」「ワンクッション置いて上司に相談する」など、段階的な方法を挙げる。
そして同時に、職場全体として女性を「場を和ませる存在」「華やぎ」として扱う無意識の前提を見直す必要があると指摘する。
「男性のなかには、女性に対する“ちゃん付け”は親しみを込めた表現、距離を縮めるための言葉と思っている人がいるようですが、女性はこうした男性から、性的な不快感だけでなく、“子ども扱い”による潜在的なマウント意識をも察知します。まず女性を“華やぎを与える存在”とする潜在的意識を改善する必要があると思います」
こうした空気は、もちろんブルーカラーに限った話ではない。意識のアップデートは、「無意識に刷り込まれた前提」を疑うところから始まるのだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部

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