急増するアドガキ・ドパガキとは? 「机に10分も座ってられない」Z世代・α世代が “集中できない”背景にあるドーパミン中毒の危険性
急増するアドガキ・ドパガキとは? 「机に10分も座ってられない」Z世代・α世代が “集中できない”背景にあるドーパミン中毒の危険性

いまZ世代以降の若者の間で、「アドガキ」や「ドパガキ」といったワードがSNSで使われ、話題になっている。SNSやゲームなどは、10代の未発達な脳にはかなりの刺激になるが、こうした刺激を求め続ける子どもたちは極端に集中できない場面が多くなることもあるという。

「ドーパミン中毒」という現代の若者たち特有の現象について、脳科学者の恩蔵絢子氏に話を聞いた。

「映画を中断して他のアプリ開く」「15分しか集中できない」

「アドガキ」や「ドパガキ」というワードをご存知だろうか?

これは最近SNSで若い世代を中心に流行するネットスラングで、アドガキやドパガキとは、“アドレナリン中毒のガキ”と“ドーパミン中毒のガキ”の略称で、これは脳がSNSやゲームといった目まぐるしく変化するような強い刺激を求めるがゆえに、「同じことをし続けられない」、「すぐに飽きてほかのことを始めてしまう」といった集中力が続かない状況に陥る子どもたちを揶揄気味に指す言葉だそうだ。

いまこうした状態の子どもたちが増えているとのことで、実際に自身の子どもたちの様子に困っているという40代、50代の親たちに話を聞いてみた。

Aさん(40代・行政書士)には3人の子どもがいるが、現在小学校1年生の三男に手を焼いているそう。

「例えば机に座って勉強を始めるとき、口では『やるよ!』と言うのですが、数分で集中できなくなり、机から離れたがります。宿題の問題に対して、『わからない』や『解けない』などと言い問題を解くことを早々にあきらめ、最終的に泣き出してしまうので、どうしたらいいのか……。机に座る状態で10分もったことがありません。

学校でも集中力がないみたいで、周りの生徒にちょっかいをかけたり、椅子を揺らして落ち着きがなかったりといった感じらしいです」

一方、遊びのことになるとかなり集中するという。

「通信教育で使う学習用タブレットに付属しているゲームモードになると途端に熱中するんです。効果音、キラキラした演出、スコアなどに夢中になっているのか、集中力が途切れず、こちらが止めない限りずっとしています。

ゲーム機で遊ぶ時も、『もう終わり!』と叱っても、泣き出して駄々をこねるので大変ですね。ゲームと同じくらい勉強にも集中してくれたらいいのに……」

現在中学1年生の息子がいるBさん(50代・主婦)も同じくゲームにハマりすぎる息子に困っているという。

「息子にゲーム機を買い与えたのは小学3年生の時でした。

周りの友人がみんな持っているからほしいと粘り強く説得され、私が根負けして買ってあげたものの、それから“ゲーム中毒”のような状態になってしまいました。

小学校高学年の頃には、それまで通っていた学童にも行かなくなり、帰宅したら夕食の時間までずっとゲームの時間だったと思います。

いまでも夜遅くまで友人たちとオンラインゲームで交流しているみたいで、寝不足で翌朝不機嫌になって起きられない、朝食を食べるのも億劫そうな状態で、生活リズムが明らかに崩れていて困っています」

Bさんの息子も勉強時には「机に向かって15分ほどでゲーム機に手が伸びてしまっている」とその苦労を語ってくれた。

現代の若者たちが陥る「ドーパミン中毒」の危険性

ではアドレナリン中毒、ドーパミン中毒とは具体的に何なのか恩蔵氏に解説してもらった。

「アドレナリンというのは脳に強い覚醒効果をもたらす物質で、危険な状態、スリルのある状態に陥ったときに多く分泌され、心拍数や血圧が上がります。

アドレナリン中毒という言葉は実は専門用語としては使うことがないのですが、若い方の場合、興奮した状態にハマってしまうという意味でこの言葉をつかっているのではないでしょうか。

そしてドーパミンのほうは、学習機構のひとつで、なにか嬉しいことがあると、その嬉しいことが起こる前にしていた行動を強化する働きのある物質です。

例えば、数学の難しい問題に挑戦し、苦労した末に自力で答えを導き出せたら、もっと難しい問題に挑戦したくなる、といったようなことです」

現代に生きる子どもたちは特にドーパミン中毒になりやすいと恩蔵氏は言う。

「SNSが普及してから、現代の子どもたちは自分と他者を比べる生活を自然と強いられています。どれだけ“いいね”がもらえたかを気にして、“いいね”がもらえただけでドーパミンが簡単に出てしまう。

そういった環境下では、例えば数学のように、難しい問題を解いた先にある達成感、つまりドーパミン体験よりも、素早く、また手軽にドーパミンを“摂取”できるSNSやゲームといったもののほうに惹かれてしまう子どもが多いのでしょう」

そして、こうしたドーパミン中毒が続いてしまうことの危険性については、こう解説する。

「“自然の報酬”に見向きもしなくなってしまうということは深刻な問題です。日常にある小さなことで喜びを感じられなくなってしまうと、よりSNSやゲームといった過激で目まぐるしく変化するオンラインの世界に没頭するようになってしまいます。

人と比べてしまいがちになるSNSなどに没頭すると、摂食障害のリスクや、自己肯定感の低下などに影響します。

また最近では公園で遊ぶ子どもが減っているということもよく聞きますが、外遊びで身体を動かさず、オンライン上で友達と交流することをメインにしてしまうと、家に引きこもることで肥満体質になったり、夜遅くまでゲームをすることで日中の活動に支障が出たりします。

多くの情報を仕入れられるという点で、必ずしもSNSやインターネットが悪いわけではありませんが、実際に自分の身体を使って何かを感じたり、学んだりするという発達において必要なことが軽視されてしまうことは問題に感じます」

ドーパミン中毒を少しでも改善するために意識するべきことは?

ではこのドーパミン中毒の状態を改善する手立てはないのだろうか。

「“痛み”のない世界でずっと生きてしまうと、現実のなかで起こる辛いことや苦しいことに対処できなくなってしまいます。そこで、あえて“痛み”(苦労)のある選択を1個でも続けてみるといいでしょう。

例えば簡単なもので言うと、SNSから離れる時間を作る“SNS断食”をしてみたり、運動の時間を取って30分間走ってみたりするなどが効果的だと思います。

走っている間はスマホを見ることができませんので自然とスマホを手放せますし、運動による疲労や達成感によって、自分の身体を使ってなにかを感じるという、現代では忘れがちな経験を取り戻す時間にもなります」

――恩蔵氏によれば脳の発達は30代まで続くという。10代という未発達な脳にゲームやSNS、ネットの強い刺激を与え続けることは、大人になった将来、現実世界での小さな喜びに気づくといったことができなくなり、“心の成長”をも止めてしまいかねないだろう。

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio)

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