「東映特撮はジャンプなんです」脚本家・高野水登が語る『キングオージャー』の原点にある“少年マンガ”的発想
「東映特撮はジャンプなんです」脚本家・高野水登が語る『キングオージャー』の原点にある“少年マンガ”的発想

『王様戦隊キングオージャー』は、特撮という枠を超えてクリエイター層の支持も集めた。高野水登はその理由を「現場の熱」にあると言う。

後編では、高野が語る“ジャンプ的発想”の原点、現場で起きていた熱量の連鎖、そして最終盤の決断――“あるキャラ”を生かすという選択に至った裏話まで。ファンへ向けた言葉と、新連載『ノウワンダー』へ繋がる現在地を聞いた(前後編の後編)。

『キングオージャー』の原点にある“少年マンガ”的発想

――『キングオージャー』は少年マンガを意識した、と様々な場で語られていますね。

高野水登(以下、高野) 『仮面ライダーゼロワン』や『仮面ライダーエグゼイド』に脚本で少し参加していた頃、スタッフさんから「東映特撮はね、少年ジャンプなんですよ」って言われたことがあるんです。

東映特撮は1年もの間、毎週新しい話を作らなきゃいけない。そういう場合は、最初から全部を決めず、伏線めいたものをバラ撒きながら、その時々の反応を見て「次はどうしよう」と考えていく。そんな週刊連載マンガみたいな作り方が適切なんですよ、という雑談でした。

僕はそれまで、映画とか1クール脚本とか短い作品が多かったから、最初から最後まで決めて書くことが多かったんです。でも1年書き続けるとなると、やり方を変えた方がいいのかもしれない。

『キングオージャー』の話をもらったときに、その時の会話を思い出したんです。僕自身、少年マンガもずっと読んでいたから、それなら参考にできるかもと思いました。

――少年マンガ的な作り方は、どこから学んだんですか?

高野 『キングオージャー』を書くよりもはるか前から、自分が好きなジャンプ作家の話は結構読んでたんです。大場つぐみ先生と小畑健先生の『バクマン。

』はもちろん、『荒木飛呂彦のマンガ術』や村田雄介先生の『ヘタッピマンガ研究所R』などを愛読していました。昔から唯一の夢が「ジャンプでマンガ描くこと」だったので(笑)。

――脚本家として、当時こだわっていたことは?

高野 合間合間に絶対“くだらないこと”を入れる。これだけは常に考えてました。思い出深いのはブーブークッションのくだりですね。

放送当時SNSでは賛否両論だったんですけど、子どもと一緒に見ている親御さんから「ブーブークッションのとこだけ何度も見せてとせがまれる」という声をたくさんもらって。やっぱり子どもは喜んでくれてるんだ、と安心しました。

「ラクレスを殺さない」――最後まで粘り切った選択

――当時を振り返って、思い入れのある回はありますか?

高野 自分の中で一番頑張ってよかったなと思うのは、終盤のラクレス回ですね。あそこはずっと書きたかったんです。何より、「ラクレスを殺さない」っていう選択ができたのは、粘り勝ちだったなと思います。

実はずっとギリギリまで、ギラのために死んで終わるのが美しいと思ってたんですよ。でも直前で「いや、これ助けた方が絶対に面白い」と思って。

スタッフの方はみんな、ここで死ぬと思っていたから、脚本を提出したら「この後ラクレスに役割あります?」って話にもなったんです。

でもそこで「ラクレスは世界の歴史を知ってる唯一の人だから、この後残り続けたら、他の王様たちの導き手になる流れが作れる」って話したら、それだったら生かす意味あるなって。

最終的にはラクレスが生き残ったおかげで、いいシーンができたし、彼が生き残らなければあの物語の展開にはなっていないから、思い返しても粘ってよかったなと思います。

――『キングオージャー』は作家やマンガ家にもファンが多い作品です。ご自身では理由をどう見ていますか?

高野 「全員めちゃくちゃ熱意を持って作ってる」ってことが伝わったからだと思います。これは現場を直接見てきたから胸を張って言えますが、ものすごい熱があった。

例えば『キングオージャー』の中でアイドルオーディション回があったんですけど、予算のことも考えなきゃいけないから、脚本では舞台を小さな控室に設定しておいたんですよ。なのに当日現場に行ってみたら、めちゃくちゃ豪華なライブ会場で撮影してた(笑)。

「こっちのほうが面白いと思ってやっちゃいました」と現場の方がアップグレードしてくださったんです。そういうことがたくさんあって、書いている僕自身が驚かされることが多い現場でした。

――キャストの方の熱意も伝わっていたと思います。

高野 嬉しかったのは、王様たちのキャスト6人が、脚本届くのを楽しみにして下さってたんですよ。最初に読んだ人がみんなのLINEグループで「自分はもう読んだよ!」って報告してくれてたらしくて。

全員が同じ熱を持って面白いもの作りたい、っていうクリエイターが心から求めてる環境が『キングオージャー』にはありました。

今だから言える「皆さんの熱量は、製作陣に伝わっていました」

――放送終了から時間が経って、ファンの方に今、伝えたいことは?

高野 今だから言いたいのは……「皆さんが応援してくれていた、あの時の熱量は制作陣にも伝わってましたよ」ということですね。視聴者の皆さんが喜んでくれてるから「びっくりさせよう、もっと凄いものを作ろう」とスタッフの誰もが取り組んでいた。

これって本当に週刊連載マンガみたいだと思います。最終話、エキストラにファンクラブの人がいっぱい来てくれたんですけど、王様の話を聞くシーンで、演技指導とかしてないのに、みんな泣いてるんですよ。映像でもその感情がそのまま伝わって、心に迫ってくるシーンになりました。

視聴者の方の反応って、作り手はみんな、皆さんが想像する以上にやりがいにしてるんです。だからこれからも、好きなものを見つけたら「好き」と言ってほしいです。

そして新作『ノウワンダー』へ。「まっすぐな少年マンガ」が、いま一番の変化球

――最後に改めて、新連載『ノウワンダー』はどんなマンガですか?

高野 まっすぐな少年マンガです。僕はずっと自分のこと、カウンターの人間だと思っていて、絡め手とか奇襲で生き残ってきたと思ってるんです(笑)。でも近年、自分が「まっすぐな少年マンガ」だと思うものが減ってきてる感覚があって。

逆にストレートなものを書いた方が変化球になる、っていう逆説で、今回はこれまでにないくらい真正面から描いています。

テーマはシンプルに「友情」。友達の話だし、ちゃんとバトルもあるし、伏線回収もいっぱいある。自分の好きなものを全部入れました。

――読者の方へのメッセージをお願いします。

高野 『キングオージャー』や僕の書いた過去の作品が好きな人にも、楽しんでもらえたらと思って描いています。これからいろんなキャラクターが出てくるので、毎週楽しみにしてくれたら嬉しいです。

文・写真/集英社オンライン編集部

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