300万円前入金、暴行、泣き寝入り…改正風営法適用“外”の「女性向け風俗」でトラブル多発、女性たちが訴える無法地帯
300万円前入金、暴行、泣き寝入り…改正風営法適用“外”の「女性向け風俗」でトラブル多発、女性たちが訴える無法地帯

女性客に高額なツケを負わせた上で売春などをさせる悪質ホストクラブの問題に関連し、2024年に摘発された関係者は207人(警察庁調べ)にのぼった。こうした状況を受け、政府は2025年6月に改正風営法を施行し、「色恋営業」「勤務強要」といった行為が禁じられるようになった。

いっぽう、近年増加している「女性向け風俗店(通称、女風)」は適用対象外とされ、法整備が進んでいないのが現状だ。この状況に対して女性客からは「改正法はなぜ『女風』にも適用されないのか」との声が上がっている。

「『ランキング上位になりたいから』と頼まれて300万円を店に振り込みました」

悪質ホストクラブ問題による改正法案。女性らは「女風の悪質性はまだ世に認知されていない。現時点では民事訴訟するほかない」と訴える。女風の悪質性とは一体どんなものか。

まず話を聞いたのは都内在住の会社経営者・吉田さん(36歳、仮名)だ。

「30代前半まで仕事一筋で、仕事仲間からは『仕事の鬼』と言われてきました。恋愛とは程遠い日々で、ふと『女性扱いされたい』という思いに駆られました。

女風のサービスとはそういう女性の受け皿でもあると思い、利用してみたんです。でも結局その思いが叶うことはなく、セラピスト(男性従業員)に店のランキング争いのため利用されたんです」

ランキング争いとは、一部の大手女風店には売上などを競うランキングがあり、大々的な表彰式を行なうなど、まるでホストクラブと同じようなイベントを行なっているそうだ。

吉田さんは、そのランキングでセラピストが上位になるために利用されたというのだ。一体、どう利用されたというのか。

「予約時に前払いしたり、現地払いしたりするのが通常ですが、私はセラピストに『ランキング上位になりたい。近い将来、自分の店を持ちたい』と頼まれ、2024年5月に300万円を店に振り込みました。

そのサービスはホテルではなくセラピストの家で受けたり、『大切な存在』とか『もっと関係を深めたい』などの色恋が始まり、1年弱で1000万円近く散財しました」

しかしなぜサービスを受ける前に入金をしてしまうのかと問うと「若い子が頑張って自分を売り込むために、必死な行動をしてるので応援したい一心でした」と言う。

女性扱いされる目的でサービスを使用したのに、結局は若いセラピストの願望を叶えるためにただ金を貢いでしまう結果となった。

「後でわかったことですが、そのセラピストには彼女もいました。『いない』と騙され、お金を搾取されたんです。この2年ほど女風の女性客と交流することでわかったことですが、そうやってセラピスト達に利用されている女性はかなり多いと聞きます」

これまで集英社オンラインでも、某大手女風グループ店の男性セラピストに約500万円近く注ぎ込んだアツコさん(31歳)の事案を取り上げた。アツコさんは「不当利得返還請求の民事訴訟を起こし、セラピストに対し約120万円の支払いを命じる判決が下されました」と言う。

セラピストとのトラブルが会社や家族にまで伝わってしまった」

「私のような事案が二度と起きないようにとXで発信しているのですが、そこには数々の相談が毎日のようにきます。今まさにきている相談でとてもひどいケースがあり、本人の希望もあって私が代わりにお伝えします」

アツコさんの元にきた相談は、2人の子どもを持つ共働き夫婦の妻・芦田さん(40歳、仮名)からだった。

芦田さんは「某大手女風グループに所属する27歳のセラピストに半年で400万円ほど使い、事前に入金した60万円のうち40万円分のサービスを受けていないばかりか、払ったお金を返してもらえない」状態なのだという。さらにこのような暴行も受けたのだという。

「芦田さんから聞いた話によれば、今年10月にセラピストと1泊の旅行に行ったそうです。

芦田さんが宿泊費や交通費も含めてすべて支払った上の旅行のようですが、夕食時にお酒を飲んでる際にちょっとした口喧嘩になり、殴る蹴るの凄まじい暴行を受け、首を絞められ気絶させられたそうです。さらに庭に引きずり出されて『飲め!』と怒鳴りながら顔に放尿されたというのです」

暴行によって顔は腫れ上がり、さすがにひどいと思った芦田さんは旅行から帰った当日に近隣の警察署に駆け込み相談。その場で写真を撮られ、事情聴取を受けたという。今後、管轄署に被害届を出す状況なのだとか。アツコさんは続ける。

「芦田さんは今後、弁護士に相談しながら訴訟するかどうかを検討しているようです。でも何より悲惨だと思ったのは、今回の一連の出来事が店と芦田さんだけの秘密にとどまらず、相手セラピストが他の女性客などに吹聴したことからネットなどにもさらされ、その一部が芦田さんの会社やご家庭にまで伝わってしまったということです。

女風は秘密厳守で受けられるサービスのはずなのに、その約束が守られなかったのはひどいと思います」

だが、芦田さんがなによりも傷ついたのは、そのセラピストから「母親なのに『女』になるのってキモいね」と言われたことだという。

「芦田さんは夫婦仲が悪いわけではないものの、たまには夫とは違う男性に『女性扱いされたい』という思いから女風を利用しました。店側もそう打ち出しているのに、この言葉はあんまりだと思います。芦田さんはこの暴行事件以降、心療内科に通っているそうです」

『騙されるなんてちょろいな』などと暴言を吐かれ…

最後に話を聞いたのは接客業の真美子さん(35歳)だ。自身も「私がお客様を大事に扱うように私自身も大事に扱ってもらいたくて女風を利用した」そうだ。

「今年4月から大手グループ店のセラピスト(27歳)を利用するようになり、利用して3回目くらいで『つき合おう』と言われました。

私は誰かとつき合いたくて利用したわけじゃないので保留にしていると『信じてほしい』などと言われて、交際するようになりました。でも彼がウチに来る時は必ず私が予約を入れてお金を払う状態でした。“つき合って”いるのに」

真美子さんはセラピストと韓国旅行などにも行ったという。その際は旅行中の時間代だけは支払い、航空券や宿泊費などはセラピスト持ちだったそうだ。

「旅行は2泊なので総額68万円ほどを入金しました。10月20日にはペアリングをもらったんですけど、その日の夕方に呼び出されて『色恋営業だった』『騙されるなんてちょろいな』などと暴言を吐かれました。

彼には総額600万円ほど使いました。私は普段、接客業をしているからこそ、お客様にこんな態度を取ったら絶対に次はないことを知っています。同じ業種だからこそ、彼のひどい行ないが許せません…」

真美子さんもまた、吉田さんや芦田さんのように前入金をしていた。

「200万円ほどですかね。まだ消化されてない金額があります。

お店に尋ねても『彼と直接やりとりして』と言われるのですが、その彼は私をブロックしているため連絡の取りようがありません。警察に相談すると『事件性がない』と言われ、弁護士からも『立証面で難しい可能性もある』と言われてはいるものの善処していただけそうです」

前出のアツコさんの元にはこれ以外にも「自身が性病にかかっていることを知りながら営業しているセラピストに一生治らない重篤性の高い性病をうつされた女性」や、やはり「ランキング争いで前入金をせがまれた女性」など、さまざまな相談を受けるという。アツコさんは最後にこう言う。

「女風はホストクラブよりも単価は安いかもしれませんが、体の接触があるサービスのため、ホストクラブ以上に女性客側の恋愛感情を利用されやすいです。とくに芦田さんのように『セラピストへの情や応援したい気持ち』を悪用してくるので、構図としては悪質ホストクラブと同じなんです。

女風も風営法改正の対象に入ってほしいと思います。法が変わらないなら集団告訴を起こすしかない。今の女風業界では、大手グループ店の一部は無法地帯のようになっています」

女風店と客のトラブルは、水面下で今後も発生しそうだ。

取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

編集部おすすめ