松本人志BS出演で地上波復帰への糸口見えるか? ダウンタウンプラス月商5億円の大成功で変化したテレビとの関係性
松本人志BS出演で地上波復帰への糸口見えるか? ダウンタウンプラス月商5億円の大成功で変化したテレビとの関係性

ダウンタウン松本人志が、大みそかにBSでテレビ出演する。地上波ではなく、あくまでBS。

それでもこの動きが「地上波復帰への糸口になるのではないか」と受け止められているのは、松本という存在が、いまテレビとまったく違う位置に立っているからだ。

松本人志のBS出演はテレビ復帰の糸口?

松本の出演先は地上波ではなく、BS、それも「BSよしもと」だ。12月31日午後3時30分から放送される特番「大晦日の超緊急特番!今、話題のダウンタウンプラスを徹底解剖スペシャル」で、その名前が出演者欄に記された。

番組の内容は、松本が関わる有料配信サービス「DOWNTOWN+」について、どんなコンテンツが配信されているのか、どんな見どころがあるのかを紹介する“解説番組”だ。

松本がテレビに向けて挨拶をするわけでも、スタジオでトークを繰り広げるわけでもない。もちろん、このために新規収録に臨むわけでもなく、出演はあくまでDOWNTOWN+内の映像に限られるという。

それでも、この発表は一部メディアで「松本人志がテレビに復帰」と報じられ、瞬く間に話題となった。地上波ではなく、本人がスタジオに立つわけでもないBS番組の出演が、なぜここまで大きな意味を持って受け止められたのか。

理由は単純だ。2024年1月から活動を休止して以降、松本はテレビの画面からほぼ姿を消してきた。その松本が「テレビに出る」という行為そのものが、「これからテレビに戻るのかどうか」を占う材料として見られているからだ。

だが、ここで一度立ち止まる必要がある。松本は、そもそも本当にテレビに復帰するつもりがあるのだろうか。

かつてテレビは、芸人にとって唯一無二の舞台だった。どれだけ売れようと、最終的に「テレビに出られるかどうか」が評価軸であり、出演できること自体が成功の証。特にお笑いの世界では、テレビは中心であり、ゴールであり、そこから外れた存在は、第一線から退いたものとして扱われてきた。

松本ほどの存在でさえ、基本構造としては「テレビに出させてもらっている側」だったと言っていい。もちろん、彼ほどの大物ならばテレビ局側が「出てもらっている」という関係ではあるのだが、それでも企画、時間帯、スポンサー、世論といった枠組みの中で活動していたのは確か。

だからこそ、結局はトラブルひとつでテレビから距離を置き、仕事の形を大きく変えざるを得なかった。

松本人志は「テレビに戻る」選択をするのか?

松本自身はDOWNTOWN+の中で、活動休止期間を振り返り、「月収が15万円のときもあった」と語っていた。スターであり続けた存在ですら、テレビによって生かされている現実をまざまざと突きつける発言だった。

しかし重要なのは、その状況を経たうえで、松本が再び「テレビに戻ること」を唯一の選択肢にしなかった点だ。DOWNTOWN+は視聴者課金型のサービスで、広告主は存在しない。登録者数は50万人規模とされ、課金額から逆算すれば、月商は約5億円にのぼる計算になる。

少なくとも、テレビに依存せずとも成立するだけの収益構造を、松本はすでに手にしたのだ。

この時点で、立場は明確に変わった。松本にとってテレビは、「戻らなければならない場所」ではない。数ある収益源、表現の場のひとつとして、「選ぶ場所」になったと言っていい。

テレビ以外に、これだけの規模で稼げる場所を持ち、そのうえでテレビ出演を検討する立場は、ある意味で“文化人”に近い。仕事量ではなく、内容や意味、納得感で出演を決める立ち位置だ。

最近のDOWNTOWN+を見ていると、その方向性もハッキリしてきた。12月17日から配信が始まったオリジナル番組「松本人志と〇〇したい!」は、その象徴的な例だ。ゲストが「松本人志とやりたかったこと」を持ち込み、それを実現するというシンプルな企画で、第1回には千原ジュニアが登場。テーマだけを決めたアドリブコントに挑んだ。

これまで松本の番組は、後輩芸人に無茶ぶりをして、その対応力を試す構図が多かった。しかしこの企画では、松本自身が前に立ち、汗をかき、お笑いの瞬発力を試される側に回っている。

収録後には本人も「しんどい」と語っていたが、その“しんどさ”こそが、ファンにとっては待ち望んでいた“プレイヤー松本”の姿だったとも言えるし、松本自身がやりたかったことでもあるだろう。

いままでどことなく地上波の延長線上にある企画が続いていた中で、ここにきてようやく「ダウンタウン」の名前がついていい、「松本人志」の名前が前に出ていい企画が生まれた。DOWNTOWN+は今後、さらにディープに、松本がやりたいことを試す場になっていくはずだ。

月商5億円規模の配信サービスを軸に活動を再開した松本にとって、テレビはもはや「帰るべき場所」ではない。今回のBS出演という一手が来年以降、地上波復帰への糸口になるのかどうか──。

注目されているのは、復帰そのものよりも、主導権を握った側が次にどこへ足を踏み出すのかという点なのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部

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