12粒で27万円のイチゴは誰が買う? “高級すぎるフルーツ”が生まれる日本特有の背景
12粒で27万円のイチゴは誰が買う? “高級すぎるフルーツ”が生まれる日本特有の背景

大分県産ブランドのイチゴ「ベリーツ」が、昨年12月5日のセリで、1箱(12粒入り)27万円という高値で競り落とされた。日本では一房で約100万円のブドウなど、庶民には手の届かないほど高級なフルーツが多々あるが、なぜ日本のフルーツはこんなにも高いのか。

その背景にある事情について、果樹を専門に研究する岡山大学教授の福田文夫氏に聞いた。

1箱27万円のイチゴが話題 なぜこんなに高い?

今回話題となった「ベリーツ」は1箱(12粒)で27万円と、イチゴとしては高すぎると感じてしまうほど高価格だ。なぜこんなにも高いのだろうか。

「一般に市場では“ご祝儀相場"というものがありますが、これは年明けの初競りや季節物の初荷につく高値相場のことです。今回の大分の『ベリーツ』の場合は、大分市公設地方卸売市場で、旬入り宣言の時に行われたJA(日本農業協同組合)のイベントにあわせてセリ売りがなされたようなので、ご祝儀相場で高値がついたと思われます」

福田氏が解説するように果物の市場では、新年の縁起物として願いを込めて、また宣伝の意味などを込めて、通常の市場価格を大幅に上回る高値で取引されることが慣習的に存在している。

ではこうして競り落とされた高級フルーツはどのような需要があるのか。

「『ベリーツ』の場合は、桐箱入りの超高級仕様で選別されたものですので、もともと高価格帯の商材として売り出される予定のものだと推測できます。こうした高級フルーツは常に高く売れるかどうかは市場の動向次第ですが、例えば産地内の高級果実専門店や百貨店などで、クリスマスプレゼントやお歳暮ギフトなどの需要があるのではないでしょうか。高級な果物はきれいで形のよい果実ですが、ケーキ用などでは、ケーキ自体の価格が跳ね上がってしまうため、低価格なものが使われます」

フルーツが高値になりやすい日本ならではの理由

今回の「ベリーツ」のようにあえて高値で売り出すことで、産地にとってはこんなメリットがあると福田氏は言う。

「高級品はあくまで選別された果実の一部で、我々が手に取る一般市場には日常使いのものが出回ります。とある高級フルーツが話題になれば、同じ産地の同じ果物についても、『日常使いのものも十分うまいだろう』と、一般消費者からのイメージはポジティブなものに変わり、その産地の果物全体が高値に向かって推移するんです。

売る側(産地)にとってはこの仕組みが重要で、だからこそブランディングや他産地との差別化を図るために高値で売り出すことがよくあるのです」

また、そもそも果物自体が高級品として成立しやすい背景もあると言う。

「日本において果物は、食生活にプラスαを与えるようなもので、食卓に必須のものだという意識はあまりないかと思います。果物の多くは生で食べることが前提であるため、購入してから食べるまでに出来上がる食感がかなり重要です。

消費者に届いた段階でやわらかく可食の状態になっている、さらにその後の日持ちもしないので、そもそも果物はプレミアムなものなんです。

さらに日本には独特の贈答文化があり、訪問時やお見舞い時に、季節の贈答品として何を贈るかが重要になってきます。そして、それはその人のセンスや財力の判断材料になります。この際、日常的によく食べるものが贈答に使われることはなく、普通は少しリッチなものを贈りますよね。

そういった背景もあり、果物はお中元やお歳暮などの重要なタイミングで“いい贈り物”として重宝されるんです。贈答品となれば、生産できる季節が限られたフルーツの中でも、選別された果実が多いですので当然高価格になるわけです」

物価高進むなか、高級フルーツの需要は今後どうなる?

世界的に物価高が進み、節約志向が高まっているが、今後高級フルーツの需要はどうなるのだろうか。

「国内においての需要は一定数残ると思います。より真新しい味や形の果物を求めて品種開発も行なわれるでしょうし、引き続き他産地との差別化も続くでしょう。逆に言えばこれらがなくなってしまうと果物生産は衰退してしまいます。現在、若年層を中心に“果物離れ”は確実に進んでいますので、中価格域の商材と若年層の需要に見合う果物を充実させることが課題かもしれません。

海外については、日本と同様の高品質で栽培するとなると、大規模生産はできなくなり、メリットに乏しいですから、海外産の高級フルーツはなかなか生まれないでしょう。一方で日本から海外への輸出については、今後も継続され、海外での需要は今より増えるのではないかと思います。

いまインバウンド客が増えています。海外の方が日本に来た時に、高品質な果物を食べて気に入れば、自分たちが住んでいる国でも食べたいとなり、需要が増える可能性はありますね」

――なかなか手の届かない高級フルーツは、日本ならではの贈答文化や産地の競合による特別な価格形成が可能な背景があった。世界に誇る日本のフルーツ文化が今後どう成長していくのか注目していきたい。

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio)

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