「元○○商事部長」の名刺はもう捨てよう…定年後に立派な会社の「肩書」ではなく「人」として幸せに生き直すために必要なこと
「元○○商事部長」の名刺はもう捨てよう…定年後に立派な会社の「肩書」ではなく「人」として幸せに生き直すために必要なこと

定年後の人生を考えようとすると、「何がやりたいかわからない」と立ち止まってしまう──。
その原因は、能力不足でも情熱不足でもない。

長年しみついた「会社人間」思考こそが、未来のビジョンをぼんやりさせているのだ。

新刊『定年5年前からの「やってはいけない」』より一部抜粋・再構成してお届けする。

「自分探し」の落とし穴にはまるな!

50代半ば。定年を見すえ、その後の人生を考えようにも「何がやりたいか」「何ができるか」が曖昧な人も少なくありません。まず「会社人間」の自分をデトックスすることから始めましょう。

映画『ショーシャンクの空に』でモーガン・フリーマン演じるレッドが出所し、仕事に就いたスーパーマーケットでのワンシーン。「トイレに行ってもいいですか?」と許可を求めたレッドに、上司が「そんなこといちいち聞かなくていい。自由に行ってくれ」と答えるやりとりがあります。このレッドの思考は、日本の「会社人間」「組織人間」に重なって見えないでしょうか?

「大事なことは上が決める」「上司の指示に従う」「各役職ごとに責任範囲と決裁権限が決められている」「決められた業務フローの中で仕事を進める」「自己判断で勝手に仕事を進めてはいけない」といった会社や組織の仕事習慣に長年どっぷり浸かるうちに、あなたの〝自己決定の回路〟は錆びついてしまっています。

その結果、お金儲けをする発想がなく、いつまでも誰かの指示待ちをする癖が抜けません。

しかも、「やりたいこと」が特になく、「できること」も曖昧では、定年後や役職定年後の人生設計が進まず、空転してしまいます。

そこに「自分探し」という言葉がピッタリはまってしまうのが怖いですが、定年5年前からは「自分探し」という発想はしないで、「自分のやりたかったこと」「好きだったこと」「得意だったこと」「できること」くらいに小分けして考えないと、納得できる答えは見つからないと思います。

これまでしみついた「会社人間」的思考習慣は、定年5年前になったら、いったん自ら破壊してもらったほうがいいかもしれません。



定年後は組織もありませんし、上司もいません。上司の承認も調整も必要ありません。他の人がやらかしたことで責任を問われる心配もありません。

当然、どうすればいいか、誰も指示してくれません。ただ、失敗しても迷惑をかける範囲はたかが知れています。

つまり、自分が中心の自由な世界が始まるのです。それにワクワクし、楽しみだと思える人もいれば、自由にあまり慣れていない人は、どうしていいか不安でドキドキし、思考停止に陥りがちです。

過去の肩書のオリジナル名刺は自分を殺す

かつて「会社人間」「組織人間」だった諸先輩の中には、会社や組織という拠り所がない状況にいたたまれず、「元○○商事部長」とか「元○○新聞論説委員」といった名刺を作り、立派な会社や組織に所属していた過去に執着する人もいます。

自己承認欲求か、名刺の威力が忘れられないのかはわかりませんが、この名刺を受け取った人の多くには「ん?」と滑稽に思われることでしょう。

それで心が健全に保たれるなら、周囲の人が何を思おうが気にせず、「元○○名刺」を配り続ければいいでしょう。ただし、それによって「会社人間」「組織人間」思考が温存されるのは問題です。

会社や組織の威光にすがるタイプは時代の変化に取り残されます。「会社人間」「組織人間」である自分を脱ぎ捨ててしまったほうが案外、豊かな世界や可能性が広がるように思えます。



私がそう言えるのは、現役時代は現役時代、定年後は定年後とスパッと分け、「会社人間」「組織人間」思考を清々しく断ち切った人のほうが幸せそうに生きているのを見ているからです。

それだけではありません。

日本を代表する企業の元役員や元部長が退任後、公共施設の管理人や警備員をしたり、観光施設の売店で働く話をたくさん聞いてきました。そこで気づいたのは、周囲の人たちにその人が〝人として記憶されている〟ことです。

たとえば、家電メーカーで65歳まで定年延長で働いていた後閑さんはその後、ホームセンターで働くことになりました。

やたら道具やその使い方に詳しく、親切で人当たりのいい性格はすぐにパートの女性陣から頼りにされるようになり、「後閑さん、〇〇は、××に使える?」とかのお客様からの専門的な質問の問い合わせ窓口のようになりました。

それだけでなく、休憩時には「後閑さん、コーヒーいれたよー」とか「後閑さん、これおすそ分け」と野菜をもらったりもするようになりました。

その時、必ず、「後閑さん」「後閑さん」と個人名で呼ばれることで「ここにいてもいい仲間」と認めてもらえただけでなく、周りから頼りにされていることが実感できて、会社勤めの最後には実感できなかった「やりがい」を取り戻したそうです。

60代後半になって、毎朝、職場に通うのが楽しいとのはうらやましことです。

一方、「元○○名刺」の人は、元の肩書は記憶されても、人物そのものを覚えてもらえません。

あなたにはどちらがしっくりきますか?

定年5年前になったら、自分の中の「会社人間」「組織人間」も反面教師にしたいものです。

定年後の未来がぼんやりとしかイメージできないのは、あなたが「会社人間」「組織人間」のままだからです。

いったんデトックスしましょう。

文/大塚寿

『定年5年前からの「やってはいけない」』(PHP研究所)

大塚 寿
「元○○商事部長」の名刺はもう捨てよう…定年後に立派な会社の「肩書」ではなく「人」として幸せに生き直すために必要なこと
『定年5年前からの「やってはいけない」』(PHP研究所)
2026年2月2日1,210円(税込)256ページISBN: 978-4569860459会社に与えられるまま将来に繋がらない仕事は避けよ!  定年後は月50万円を目指せ!  50代の悩みを吹き飛ばす一発逆転の働き方。
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