テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。
テレビ界で目立つ平成番組のリメイク
「平成レトロ」「平成女児ブーム」「平成一桁ガチババア」――。近年、平成の文化を回顧する流れが目立つようになっている。
テレビ番組も同様だ。今年に入ってすでに、正月特番として『クイズ$ミリオネア』(フジテレビ系)、『爆笑レッドカーペット』(同前)、『ウンナンの気分は上々。』(TBS系)など、平成の番組のリメイクが相次いでいる。
そんなテレビにおける平成回顧を象徴するような復活が、また行なわれた。『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!!』(テレビ朝日系)、通称「炎チャレ」。挑戦者がさまざまな競技にチャレンジし、100万円獲得をめざす番組で、今回は実に25年ぶりの復活である。
復活版では、いくつか変化があった。司会はウッチャンナンチャンから、南原清隆と菊池風磨(timelesz)に変更。賞金は100万円から1000万円に上がった。それにともない、番組名も『炎のチャレンジャー これができたら1000万円!!』とリニューアル。
では、そんな復刻版の印象はどうだったのか。当時子どもだった筆者の感覚でいえば、「原典であるはずの番組が、後追いに見えてしまう」という逆転現象が起きていた。
炎チャレの代名詞である「電流イライラ棒」は、オリジナルの雰囲気をできるだけ再現しており、懐かしさも十分だった。
一方で、ほかのチャレンジは大きく改変され、結果として「別番組で見た企画」に映ってしまう。
平成版の「カラオケ歌詞を見ず一曲完璧に歌い切ったら100万円」をアレンジした「カラオケ採点10人連続チャレンジ」は、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)を連想させる。
また、「12時間耐久鬼ゴッコ 逃げ切れたら100万円」を改変した「8時間耐久ガチンコかくれんぼ」は、『逃走中』『新しいカギ』(ともにフジテレビ系)の学校かくれんぼ企画に近い。
参加者が「一般人」から「芸能人」へ
だが、本来は逆だ。カラオケ企画も、大規模なかくれんぼや鬼ごっこも、当時としては炎チャレが先駆的に試みてきた。ほかの番組が「炎チャレで見た」と言われることはあっても、炎チャレが「別番組で見た」と言われる筋合いはない。炎チャレこそが原典であり、ほかが後追いのはずだからだ。
それでも復活版を見ていると、どうしても「別番組で見た」という印象が拭えなかった
なぜか。炎チャレのおもしろさの“核心”が抜け落ちていたからだ。
誰でもできそうで、なかなかクリアできない、しかし成功したら大金が手に入る。そんなゲームに普通の人がチャレンジする番組だった。競技によってはテレビらしい大掛かりなセットもあった。
皮肉っぽく言えば、「素人」が「夢の箱」に入り、テレビごっこを体験する番組だったのだ。参加者にとっては現実体験として。視聴者にとっては仮想体験として。その体験が炎チャレのおもしろさの核であり、番組の価値だった。
しかし、今回の復活版のチャレンジャーは、すべて芸能人。炎チャレ特有の体験価値が完全に失われていた。だから「よくある番組」に見えてしまったのだ。
もちろん、テレビはすでに夢の箱ではない。また、視聴者参加番組は以前より作りづらくなっている。それこそ昨年末に復刻された『ザ・イロモネア』(TBS系)では、SNSで一般審査員に対する誹謗中傷が散見され、番組側が公式サイトで注意喚起の文書を発表する事態となった。テレビは夢の箱どころか、デジタルタトゥーの刻印機になりかねない。
そうした意味では、番組のコンセプト自体が時代に追い越されたのかもしれない。
制作費3000万円のイライラ棒は破格だが…
だが、そうであればなおさら、「なぜ炎チャレでなければならなかったのか」という疑問が残る。イライラ棒以外の企画は大きく変更され、懐かしさは弱い。一般参加者はいない。ウッチャンナンチャンもそろっていない。
こうした状況で炎チャレの看板を使う意義、視聴者にとっての意味はどこにあったのか。番組の最後まで見ていても、私にはその答えは得られなかった。
――と、いろいろ批判的めいた話をしてきたが、そんな今回の炎チャレで、個人的に平成前半を強く感じたポイントがある。
イライラ棒の制作費は3000万円。制作期間は3か月。クイズ企画の撮影期間は1か月以上。かくれんぼ企画ではスタッフの現地入りが22日間。当日のスタッフ数は200人。カメラは263台。こうした数字が随所に挟まれていた。番組進行上のセリフと思われるが、出演者のこんなコメントも聞かれた。
「正直、めちゃめちゃお金かかってます」「こういうテレビがやりたかったです」
平成前半の空気を何より感じたのは、こうした「量」の誇示だ。テレビだけバブルが続いていたようなあの空気。制作費の大きさを番組サイドが競うように前に出していた時代だったな、と。
ただ、踏襲するのがよりによってそこなのか、という違和感は残る。そして、その「量」も今や平成の比ではないことを、制作側自身がいちばんわかっているはずなのに、とも思ってしまう。
文/飲用てれび

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