〈大田区・社長密室殺人〉「二人は親友だった」逮捕された部下は酒にだらしなく「ちゃんとしろよ」「会社の評判にも関わる」と被害者の社長から心配されていた
〈大田区・社長密室殺人〉「二人は親友だった」逮捕された部下は酒にだらしなく「ちゃんとしろよ」「会社の評判にも関わる」と被害者の社長から心配されていた

被害者と加害者は親友だった。1月8日朝、東京都大田区の自宅マンションで音響会社社長・河嶋明宏さん(44)が密室状態の部屋で血まみれの遺体で見つかった事件。

警視庁が殺人容疑で逮捕した同社営業部長の山中正裕容疑者(45)の母親は「二人は親友だった」と絞り出すようにつぶやいた。

同じ高校で机を並べた二人は、成人して飲みながら愚痴をこぼし合う間柄になり、不惑を過ぎると「社長と部下」という関係に激変した。それが最悪の結果を招き寄せたのか。

行きつけのバーで挙動不審だった山中容疑者

帰宅した河嶋さんが襲撃されたとみられる1月7日から1週間が経とうとする13日夜、山中容疑者の自宅では年老いた母親が心細い夜を過ごしていた。

「河嶋さんと(息子は)高校時代から仲良くしていて、私も会ったことがありました。二人は親友だったと思います。事件については私は何もわかりませんし、大変申し訳ありませんが警察から報道陣と接触しないようにと言われておりますので…」

山中容疑者は7日夜に河嶋さんを殺害した後、地元の行きつけの飲食店をはしごして飲み歩いていたとみられる。知人が取材に対しこう明かした。

「河嶋さんが遺体で見つかる前日、山中は蒲田駅西口の飲み屋街で何軒かはしごして夜遅くまで飲んでいた。ただ、行きつけのバーで山中があまりにも挙動不審だったらしく、河嶋さんの事件をニュースで知った飲食店の従業員が『あいつがやったんじゃないか』と周囲に漏らしていた。

あの二人を7年前から知ってる私からしても、喧嘩してるところなんて見たこともないし、ましてや山中は人を殺せるような性格じゃないと思ってました。でも、それから山中とは誰も連絡が取れなくなって、案の定ということになってしまった」

「酔って会計を忘れてそのまま帰ってしまったことがあったそうです」

二人と10年以上付き合いがあるという飲食店経営者は、山中容疑者が河嶋さんの会社に転職した経緯も知っていた。

「二人が蒲田界隈で飲み歩き出したのはもう15年も前のことだと思いますよ。『まー』『あきちゃん』と呼び合っていて、本当にコンビとか相棒っていう感じでした。

高校から一緒でずっと友達として仲良くて、旅行なんかもよく一緒に行っていたし、河嶋さんは山中さんの結婚式にも出てましたよ。

最近はやらなくなってたけど、昔はよくダーツを一緒にやってましたね。当時山中さんはアパレルの会社に勤めていたのですが、『給料があまり上がらない』と愚痴をこぼしていて、それを心配した河嶋さんが『ウチで働かないか』と声をかけたんです」

それが4年ほど前のこと。親友同士の関係が大きく変わるきっかけとなった。

「それ以降も二人で一緒に飲みに来ることは最近までありましたよ。二人とも大人なんで仕事とプライベートは切り分けていましたけど、山中さんは部下としてストレスが溜まっていた部分はあると思います。

河嶋さんが経営者として山中さんに『ちゃんとしろよ』と注意することもあったので、ケンカというほどじゃないけどそれがもつれていくというか、山中さんが『何でそんなこと言われないといけないんだよ』と応戦するような雰囲気になったことはありました。

それに二人とも週5日レベルで飲み歩く人たちで、ウチの店じゃないけど山中さんは酔って会計を忘れてそのまま帰ってしまったことがあったそうです。もちろん後日きちんと払いに来ていたそうですが、そういったことを河嶋さんは『会社の評判にも関わるようなことにならないか』と心配していました」

「経営者と部下という関係の中で積もり積もったものがあったのでは…」

酒乱というほどではないが、酒がらみでだらしなく振る舞う山中容疑者は、「経営者」である河嶋さんからすると、「部下」として心許ない存在に変わっていったのかもしれない。

「山中さんは酔って暴れたり、泥酔してその辺で寝てるようなこともなかったし、『あの人酒癖悪いよね』と評判になるようなこともなかったです。ただ、それでも河嶋さんは会社の看板という意味で気にしていました。結局そういうことがボーナスの件に繋がるんだとは思いますけど。

とはいえ、山中さんが警察で供述している、『ボーナスが1.5ヶ月から1ヶ月に減ったこと』だけが犯行の動機とは思えません。河嶋さんが社長然として山中さんに偉そうに物を言うというのは見たことありませんでしたが、経営者と部下という関係の中で積もり積もったものがあったのではないでしょうか。

友達付き合いでは言わなくてもいいことを仕事上では言わなきゃいけないことってありますし、友達同士(のまま)で一緒に働かなければ良かったってよく言うじゃないですか。本当そんな感じだったんじゃないかって思います。二人を見ていてさすがに今回の事件のようなことになるとは思いませんでしたが……。

報道を見ると着替えを用意したりと計画的だったと言われていますが、もうその頃には冷静に見れなくなっていたんじゃないかなって思います。山中さんについても普段は本当に気のいい人でしたし、こんなことをするような雰囲気はありませんでしたから……」

「上司」に対して芽生えた殺意を押しとどめられなかった「部下」。父から引き継いだ会社を守ろうと気を配った末に、河嶋さんは刃を向けられることになった。その相手が30年来の「親友」だったというのは悲劇というしかない。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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