齊藤京子「元アイドルの私がやっていいのか…」映画『恋愛裁判』で“現役アイドル役”に挑んだ葛藤
齊藤京子「元アイドルの私がやっていいのか…」映画『恋愛裁判』で“現役アイドル役”に挑んだ葛藤

「推し活」という言葉がすっかり定着し、アイドルという存在がかつてないほど身近な現代。そんな中、日本独自のアイドル文化とその裏側にある暗黙のルールに鋭く切り込んだ映画『恋愛裁判』が1月23日に公開された。


本作で主演を務めるのは、2024年に日向坂46を卒業し、現在は俳優・タレントとして活動の幅を広げる齊藤京子。かつてはセンターとしてグループを牽引した経験もある彼女が「恋愛禁止条項違反」をめぐって法廷で裁かれるアイドルの役に挑んだ。本作が映画初主演となる彼女に今の気持ちを聞いた。

元アイドルが挑んだ「現役アイドル役」

──この『恋愛裁判』の台本を初めて読んだとき、率直にどんなお気持ちでしたか?

齊藤京子(以下同) かなり衝撃を受けました。しかも元アイドルの私がやっていいのかという葛藤もあって……。

──本作は齊藤さんのキャリアと大きく重なるテーマの作品ですが、アイドルという役を演じる上で、今までの作品とは違った向き合い方などはされましたか?

そうですね。この作品の物語やキャラクターを感じ取っていただくためにも、グループ(日向坂46)時代の「アイドル・齊藤京子」をなるべく連想させないようにしたいなと思って。なのでアイドル時代にやったことのない髪型だったり、この作品で初めて髪を染めてみたり、監督とも話し合いながら、自分じゃないアイドル作りをしていきました。

──深田晃司監督の作品は俳優が感情を説明しすぎない、抑制の利いた演技を見せるのが特徴的だと思うんですが、そのあたりで意識したことはありますか?

監督からは「お芝居をしている感じがしないもの」を作り上げたいと伝えていただいて、それはずっと意識していました。前半のアイドルシーンのパートは得意分野みたいなものだったんですけど、それ以降のシーンに関しては現場の空気をつかんで、「あ、こういう感情になるんだな」っていうのを体感しながら作り上げていきました。

あと、自分の悩みなどをキャッチボールをしながらしゃべるワークショップのような時間もありました。昔からワークショップや本読みがあまり得意ではなくて、実際にセットとかがあってようやく動きができるというか……。なにもないと窮屈に感じて「ああ本番やりたいな!」みたいな(笑)。

まず現場で吸収したいという気持ちがあって。でもやっぱり本読みがあってこその演技なので、そこは葛藤しつつ、日々勉強という感じです。

──今回齊藤さんは映画初主演ということで、座長として意識されたことはありましたか?

「自分が座長だ」っていう自覚や意識みたいなものはあんまりなくて。錚々たる皆さんの中で主役をやらせていただくことがすごく光栄で。ですけど、なんかこう「悪い空気」だけは出したくないというか、少しでも温かい空気をつくって撮影に臨みたいというのはありました。

「アイドルあるある」をリアルに落とし込む

──齊藤さんが演じる山岡真衣が所属するアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーとは現場でどのようなコミュニケーションを取っていましたか?

人狼ゲームが好きで「ワードウルフ」っていう人狼ゲームの派生みたいな簡単にできるゲームをメンバーでやって……そしたら5人ともすごく上手で! それからずっと撮影の合間に人狼ゲームをやっていたら自然と仲良くなりました。

他の作品の現場でも共演者の方と仲良くなることはあったんですけど、多人数でこんなに仲良くなることはなかなかなかったですし、本当のアイドルグループみたいでした。

チーフマネージャー役の唐田(えりか)さんとも人狼ゲームを通じて仲良くなりました。私と同い年なんですけど、めちゃくちゃかわいらしい方で。ハッピー☆ファンファーレのLINEグループがあるんですけど、そこに唐田さんも入ってます。

──ダンスや歌の演技をするにあたって、グループ時代のアプローチとの違いを意識した部分はありましたか?

見た目や髪型とかもそうですけど、曲や振付のテイストも、当時私がいたグループとはまたちょっと違った感じがあって。だからマイマイ(山岡真衣の愛称)として演じ切ることができました。

ライブでMCをしているときに急に照明が暗転して映像が流れて、それが終わったと思ったら今度はマネージャーさんが後ろから出てきて手紙みたいなのを渡されてサプライズ告知があるみたいなことは実際に経験がありますし、実際どのアイドルグループの方も経験されている「アイドルあるある」が作品の随所に散りばめられているのは、撮影しながら面白いなと思いました。

──昨年、カンヌ国際映画祭や釜山国際映画祭といった海外の映画祭にも出席されました。本作でも描かれる「日本独自のアイドル文化」や恋愛禁止といったテーマが海外の観客にどう受け取られたか、ご自身で実感されたところはありますか?

フランスではわりと「そうなんだ……」と新鮮なリアクションだったんですけど、韓国では共感していただいた感触がありましたね。

──やはり韓国はK-POPの文化が身近だからですね。

そうですよね。

「またアイドルとして生きさせてくれて、ありがとう」

──本作を通じて、アイドルとファンの関係性についてご自身の考え方に変化などはありましたか?

やっぱりファンの方々あってのアイドルだなと思います。私はアイドルを卒業しましたけど、それでもファンの方々がついてきてくださることがどれだけ大切なことか、幸せなことかを、卒業してより実感しました。改めてファンの方々がいてこそ、ステージで輝けているというのは強く思います。

──それこそ齊藤さんはグループを卒業されてからもイベントを開催したり、ファンの方々と親密に交流されてますよね。

ファンの方々のことを考えることが本当に好きで。最近もカレンダーの内容や特典会について毎日のように話し合いをしてるんですけど、それがすごく楽しくて。ファンの方々と楽しいことをもっとやりたいなって思ってます。

──現代の世の中は「推し活」という言葉が定着し、アイドル文化が社会現象化しています。

そんな中で齊藤さんが今活動するアイドルに向けてかけてあげたい言葉、想いみたいなものはありますか?

そうですね……。アイドルを卒業したらもうアイドルには戻れないので、だからこそ、今を本当に大切に、楽しく活動してくれたらなって思います。そして付いてきてくださるファンの方々を大切にすることが本当に一番なんじゃないかなって思います。

──役を通じて、久々にアイドルとしてステージに立ってみていかがでしたか?

グループのときも言ってたんですけど、本当に天職だなって思いました。私はアイドル活動そのものが好きで、今回も撮影というより、まるで本当のアイドルのような時間でした。すごく楽しかったですし、「またアイドルとして生きさせてくれて、ありがとう」という気持ちです。
 

取材・文/キムラ 撮影/マスダレンゾ
ヘアメイク/木戸出 香 スタイリスト/藤井エヴィ

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