旧統一教会(世界平和統一家庭連合)内で日本の政界工作などを韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁に報告した「TM特別報告」と題された3212ページの文書を集英社オンラインは入手した。旧統一教会は安倍晋三氏(故人)に側近の萩生田光一氏を頼って接近し、安倍氏から教団イベント出演も取りつけていた。
教団文書が明かす安倍政権との癒着
文書の表題にある「TM」はトゥルーマザー(真のお母様)の略で、韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の教団内での呼称だ。韓総裁は尹錫悦(ユン・ソンヨル)前大統領の金建希(キム・ゴンヒ)夫人に贈賄工作をしたとして逮捕、起訴されている。
同じく起訴されている教団の尹英鎬(ユン・ヨンホ)元世界宣教本部長の資料を韓国捜査当局が確保し、これが昨年末に流出した。これを「週刊文春」が1月15日号、1月22日号で報じ話題を呼んでいる。「集英社オンライン」も同じ文書を入手した。
内容は日本教団の会長を務めた徳野英治氏と関連団体「天宙平和連合(UPF)」日本支部の議長だった梶栗正義氏が、韓総裁や尹本部長に送った「書信報告」が多くを占める。
徳野氏は1月8日、自身のSNSで「私が韓総裁に報告するために元世界本部長に送った報告が含まれているのは事実です」と表明している。
文書に報告がある2016年ごろから23年4月の間、徳野体制下の政治工作では2つの大きな成果があった。
1つは第二次安倍政権中、参議院選挙を目前にした2019年7月2日に徳野、梶栗氏らが自民党本部の応接室で安倍氏と面談したことだ。
TM特別報告には次のような記載がある。
〈私は2012年12月26日に安倍首相が二度目の首相に選出されて以来、現役首相と家庭連合会長という立場で会ったのはこれで四度目になります。安倍首相が初めての首相と二度目の首相の間に何の役職もなかった時には二度だけお会いしたことがあります。したがって、今回で合計六回目の面会となります。
(安倍氏が)推している(比例代表で出馬した)北村経夫議員を私たちの団体がどこまで応援するのかということに対する決意を聞きたかったことは明白でした。私がこれまでの票は10万票だったが今回は30万票を目標に最低20万票を死守すると言いました。(安倍氏は)それについて非常に喜び、安心している様子でした〉(当日の徳野氏報告)
徳野氏は安倍、萩生田両氏に高級ブランド品のネクタイを贈ったとも報告。4日後、梶栗氏は、自民党は教団票を10万とみているが20万~30万票を動かせば安倍首相の教団への態度は変わると見通し、
〈(選挙で)必ず勝利し安倍首相がお母様(韓総裁)に伏して拝むようにします〉
と決意を述べている。
結局北村氏は17万8000票余りを得て当選。安倍首相から萩生田氏を介して徳野氏らに謝意が伝えられたと報告にはある。
安倍氏との関係を本国に誇った徳野氏は、
〈私たちが応援した国会議員の総数は自民党だけで290名に達します〉(21年12月8日)
と報告している。
教団イベントに安倍氏がメッセージ出演した舞台裏
徳野氏は萩生田氏について、
〈われわれと安倍首相との面談を一貫して取り持ってくれた〉(20年9月11日)
と紹介。常に連絡を取れる関係にあると強い結びつきをアピールしていた。
目に見える最も大きな成果は、安倍氏が首相退任後の21年9月12日、UPFが主催したオンラインイベントに米大統領トランプ氏(当時は1期目を終え落選)とともに録画でリモート登壇したことだ。
安倍氏は、
〈朝鮮半島の平和的統⼀に向けて努⼒されてきた韓鶴⼦総裁に敬意を表します〉
と演説している。
日米の大物を登場させたイベントの翌日、梶栗氏は安倍氏の出演を取りつけた手柄を報告。そこにも萩生田氏がキーパーソンとして登場する。
〈6月11日に安倍(前)首相と会食した際、トランプ大統領が(教団イベントで)演説する際には首相も演説しなければなりませんね、と安倍首相の目を見て話すと、首相も嫌ではない様子で、ではそうしなきゃいけないですねと答えました。
私は安倍首相の側近の萩生田文科大臣と会い相談しました。トランプが演説することになった事実と出演依頼を安倍首相に伝えてほしいとお願いしました。8月24日の夜、萩生田大臣から連絡があり、安倍首相が「トランプが決まったなら私も一緒に出演して総裁を助けて大会を盛り上げる役割を果たさなければならないね」と話したと伝えられました。
9月5日午後に、7日夕方に私どもの事務所に(安倍氏が)来て(演説を)撮影をするという連絡が入り、その言葉通りにことがうまくいったのです〉
徳野氏は萩生田氏の果たした役割について、
〈安倍前首相のスピーチ実現に決定的な貢献をした〉(21年10月3日)
と絶賛した。
だが、安倍氏がこのイベントに出たことが本人と教団の運命を暗転させる。
萩生田事務所に問い合わせると…
翌22年7月8日、奈良市内で安倍氏は遊説中に銃撃され死亡。殺人罪で起訴された山上徹也被告(45)は、母親が教団に多額の献金をしたことで兄が自殺するなど家庭が崩壊したことで教団を憎み、教団イベントでの安倍氏の演説動画をSNSで見て「絶対に殺さなければならないと確信した」と供述した。
長く首相を務めた安倍氏が出ることで「(教団が)社会的に認められてしまう」と感じたという。
銃撃事件の背景が見えてくるにつれ、教団と自民党の関係が問題視されるようになる。この時期、徳野氏は国会議員らが教団との関係を正々堂々と説明せず「逃げるような反応」をしていると嘆きながら、萩生田氏については、
〈否定もせず、かといって正直に話すこともせず賢くマスコミに答えました。その背後では私たちにこっそり「私は大丈夫です、何の問題もないので心配しないでください。それよりも今、そちらの方が困難ですね、どうか耐えてください」と励ましている人物です〉(22年7月27日)
と報告している。
こうした記述の真偽などを萩生田氏に尋ねたところ、事務所は回答しなかったが萩生田氏は18日に出演したネット番組でネクタイをもらったと書かれたことについて「事実無根だ。物をもらったことはない」と否定。安倍氏との面談を取りもったとの指摘にも「私が何か紹介したことはまったくない」と主張した。
萩生田氏は週刊文春に対しても「(徳野氏に)調整・仲介・関与した事実はございません。私的に連絡を取り合う関係にはございません」と主張したという。
銃撃事件を機に教団との関係に批判を浴びた自民党は内部調査を実施。議員179人が一定の接点があったことを公表し、岸田文雄首相(当時)は教団との関係を絶つと宣言した。
だが、TM特別報告には教団と関係をもったことを当時の党の調査やメディアの取材に認めていなかった複数の議員の記述もある。記載が事実なら自民党の調査の信用性は一挙に揺らぐことになる。教団は永田町で何をしてきたのか。解散総選挙を前に自民党も問われることになる。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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