〈首都圏の中古戸建、成約「49%増」〉高市円安で中古戸建ブーム加速か…“選ばれる家”が逆転した理由
〈首都圏の中古戸建、成約「49%増」〉高市円安で中古戸建ブーム加速か…“選ばれる家”が逆転した理由

新築戸建て市場が低迷している。国土交通省の2025年11月「新設住宅着工戸数」でハウスメーカーに依頼して建てる持家、いわゆる注文住宅は9.5%減少した。

2025年1月から11月までの平均で7.9%減っている。建売住宅も4.8%の減少だ。

住宅の平均価格はエリアによっては1割程度上昇しており、背景には建築資材の高騰がありそうだ。木材自給率が4割の日本は多くを輸入に頼っている。高市政権の積極財政による円安の加速で、新築戸建ては庶民の遠い夢で終わる日も、そう遠くはなさそうだ。

円安の進行と足並みをそろえる建築資材の高騰

自民党の鈴木俊一幹事長は1月14日の会見で、衆院解散に「責任ある積極財政」について国民の信を問う考えを示した。仮に自民党が支持されて積極財政路線が加速した場合、円安がさらに進行する可能性が高い。

読売新聞が衆院解散の報道をした1月9日の夜以来、円安が進行して13日には一時1ドル159円まで下落。160円台が視野に入ってきた。解散報道前の9日夕方も157円台で推移していた。

しかも、新党の中道改革連合が食品消費税の恒久的ゼロを打ち出したことを受け、自民党も食品消費税ゼロを検討したとも報じられている。選挙戦を機に大盤振る舞いが目立つようになれば、円安が一段と進む懸念もあるのだ。

円が力を失うと、輸入品の価格は相対的に上昇する。

建築資材もその一つだ。

日本とアメリカの金利差によって円安が急速に進行し始めたのは2022年だった。この年の年初は1ドル114円台で推移していたが、10月には一時150円台を突破した。

一般財団法人建設物価調査会による建設資材(木造品)物価指数において、2021年1月を100とした指数は、2023年1月に140を超えている。2025年11月には145を超えた。建築費は円安の進行とともに高騰しているのだ。

住宅メーカーの足取りもやや鈍くなってきた。2025年度上期における日本最大級の総合ハウスメーカー、大和ハウス工業の国内戸建住宅契約棟数は前年同期間比で0.7%の増加と横ばい。住友林業は、2025年度の通期注文住宅受注棟数が前年度比0.1%のマイナスとなる見込みだ。

同様に飯田グループホールディングスの今期上期の建売販売数はおよそ1万7000棟で、1割近く減少した。

こうした数字を見ると、住宅メーカーへの価格高騰の影響は決して小さくない。

10年前は1割以下だった中古戸建の割合は2割を超える水準に

さらに住宅ローンを借りる人たちからは厳しい懐事情が見えてくる。

最長35年の全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の住宅金融支援機構によると、2024年度の融資区分が「注文住宅」だった割合は11.9%。

2022年は14.4%、2023年は15.1%だった。

「土地付注文住宅」は2020年から2022年までは30%を超えていたにもかかわらず、2024年度は23.0%まで落ち込んでいる。

そうした中で、急増しているのが「中古戸建」だ。2024年度は20.5%。2023年の15.3%から大きく数字を伸ばしている。なお、10年前の中古戸建の割合はわずか7.6%だったため、全体の1割以下だったものが、今や2割を超えているのである。

全国宅地建物取引業協会連合会不動産総合研究所によると、2025年6月の首都圏における中古戸建の成約件数は前年同月比49.2%の増加。上半期の月平均が49.7%増という脅威的なペースで伸びている。近畿圏でも2025年は6月まですべての月で2桁増だ。

「フラット35」の融資金においては、中古戸建が2208万円で、注文住宅は3080万円だ。900万円近い差が生じている。この調査は住宅の取得にかかる金額だ。

従って、中古住宅を買う多くの世帯がリフォームを行なうはずである。住宅リフォーム推進協議会による調査では、一戸建てのリフォーム費用は100~300万円未満がボリュームゾーンだ。注文住宅のトータル金額よりも安く済む。

そして、平均住宅面積は「中古戸建」が115.2㎡であり、新築の土地付注文住宅や建売住宅よりも広い。つまり、今の時代に中古戸建はコストパフォーマンスが優れ、時代に合っているといえる。

中古戸建は流通量が多くなっており、消費者の選択肢が増えている点も魅力的だ。注文住宅と違い、現物を見て購入することもできる。また、木造住宅の耐震基準が見直された2000年6月以降に建築確認がされた建物は高い耐震基準が用いられてもいる。

日本人には長らく新築一戸建て至上主義が定着していたが、そのトレンドは今後大きく変わりそうだ。

地方格差の拡大か? ビジネスチャンスの到来か?

家具販売大手ニトリグループの傘下にあるカチタスは、中古住宅をリノベーションして「再生住宅」として販売している。同社の業績が堅調だ。

2025年度上期の販売件数は4064で、前年同期間比で10.5%増加。

13.8%の増収だった。

カチタスは地方都市や郊外の物件に強みを持っている。同社によると、地方エリアにおける2025年の新築住宅と中古住宅の価格差は2020年比で352万円開いたという。建築資材高騰を背景に新築と中古の乖離が大きくなれば、さらに売りやすくなるはずだ。

東京23区では1億円を超えるタワマンの需要が衰えていない。いっぽう、地方ではインフレを起点として中古住宅への人気が高まった。これは地方格差が広がっていると見えなくもないが、中古住宅は地方都市で社会問題化していた空き家を再活用するという社会貢献の側面も持つ。

地方都市や郊外が主戦場となって起業家が増えれば、地方創生を軸とした産業の活性化にもつながる。中古住宅のトレンドは、負の側面ばかりではないのかもしれない。

取材・文/不破聡 写真/shutterstock

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