高市首相“大義なき解散”のウラに年末交わした落選議員たちとの約束…中道を意識したブレブレ“消費税ゼロ政策”に身内も苦笑「選挙の争点にならない」
高市首相“大義なき解散”のウラに年末交わした落選議員たちとの約束…中道を意識したブレブレ“消費税ゼロ政策”に身内も苦笑「選挙の争点にならない」

高市早苗総理(64)は1月19日に首相官邸で記者会見し、通常国会の召集日である今月23日に衆院を解散する意向を正式に表明した。衆院選は1月27日告示、2月8日投開票の「超短期決戦」で行なわれる。

高市総理が会見で「私自身の悲願」として言及した目玉公約は、わずか約1か月前には「封印」していたはずの“あの政策”だった――。

予算の年度内成立は困難に…建前上の大義が何もない解散

「なぜ今なのか? 高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、主権者たる国民の皆様に決めていただく。 それしかない。そのように考えたからでございます」

会見の冒頭で、高市総理はやや緊張した面持ちでそう語りだした。政権発足以来、高市政権の支持率は60~70%の高水準で推移している。ただ、個別の政策イシューではなく、まずもって「高市総理の是非」を掲げたところに、今回の解散を巡る異例さが象徴されているという指摘もある。

「高市総理が会見で認めたように、いまのタイミングで衆院選を行なえば、2026年度予算の年度内成立は困難になるわけです。そうした中で、党内に慎重論がありつつも、高市総理は高支持率を背景に解散に踏み切った。

ある意味では、小泉純一郎政権が2005年に実施した郵政解散の時と、状況が似ている。ただ、あのときは、それが正しかったどうかは別にして、郵政民営化の是非を国民に問うという明確な大義があり、大旋風を巻き起こした。しかし、今回の選挙は決定的に異なる。建前上の大義が何もないのです」(自民重鎮)

選挙戦の勝敗ラインについて、高市総理は「与党で過半数」と説明する。これはかなり控えめな数字だ。

現在、衆院で自民党は196議席、維新は34議席を持っており、新たに3議席を増やすだけで、与党で過半数(233議席)には達するからだ。

「早く解散をしてほしい」「頑張ります!」

実際、本当の勝敗ラインは別にあるとの見方は根強い。高市総理は昨年12月26日に、ホテルニューオータニの中華料理店で、近しい関係にある高鳥修一元衆院議員ら、落選議員たちと会食していた。

「会食の席では、落選中の議員たちが日々の活動などについて現状を報告し、『早く解散をしてほしい』『頑張ります!』などと気勢を上げていた。“高市人気”にあやかってなんとしてでも国会に戻りたいわけですからね。

今だから明かせますが、同席していた古屋圭司選対委員長が『自民単独で衆院の過半数(233議席)を取れるタイミングで選挙はやる。日々、情勢調査を繰り返している』という話もしていました」(出席者)

とはいえ、その思惑通りにいくかどうかは、まだ不明瞭だ。「電撃解散」を受け、立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」(中道)が結党されるなど、誤算も生じているからだ。

自民党内には、水面下での選挙支援を望む声が少なくなかっただけに、衝撃は少なくない。

「公明党の連立離脱後も、地方の議会では自公の協力関係が残存していた。そういった義理やつながりを捨てることになるわけだからね・・・」(自民党幹部)

選挙結果への影響も懸念されている。共同通信社は、公明支持層の票が自民候補から立憲候補に回った場合、2024年の前回衆院選で自民候補が立民候補に勝利した88選挙区の半数にあたる44で選挙結果が逆転するという試算を報じている。

「自民党の政党支持率は低調といわれていますが、1月のNHK調査でも、32.2%は維持しており、立憲(7.0%)や公明(2.6%)よりは高い。

現時点では中道が“ブーム”を巻き起こすとの見方は低いとみられている。

ただ、中道が基本政策に食料品の消費税ゼロを掲げたことは、高市総理を焦らせた面は否めない。中道側は『恒久的にゼロにしていきたい』といっていますが、これは高市総理が一度は撤回した政策だったからです」(自民党関係者)

ブレブレ…「高市さんがここにきて、野党と同じことを言い出した」

高市総理は昨年5月に、「国の品格として食料品の消費税率は0%にするべき」と発言していた。しかし、同年9月の自民党総裁選の出馬会見では、消費減税について、実施に時間がかかることから「物価高対策に即効性はない」とトーンダウンし、総裁選期間中の議論においてもほとんど“封印”していた。

昨年12月23日に行なわれた日経新聞のインタビューでも、「(食料品の消費税ゼロは)選択肢としては排除しないが、物価高対策としては即効性がないと判断をした」と明言していた。

ところが––––。

「物価高に苦しんでおられる中所得低所得の皆様の負担を減らす上でも、現在、軽減税率が適用されている飲食料品については、2年間に限り、消費税の対象としないこと。これは昨年10月20日に私が署名した連立政権合意書に書いた政策でもあり、私自身の悲願でもありました」

1月19日の会見で高市総理はそう語り、2年間に限ったものではあるが、目玉公約の一つとして飲食料品の消費減税を打ち出したのだ。消費減税のための財源は5兆円かかるといわれているが、高市総理は「歳出・歳入全般の見直しが考えられる」と説明するにとどめた。

日経新聞のインタビューで後ろ向きな発言をしてから1か月も経たないうちに、「悲願」と言い出したのだ。無論、あえての“争点つぶし”という側面もあるだろうが、こうした高市総理の“ブレブレ”の姿勢について、自民党のベテラン衆院議員は「なんでもありの話になっちゃうし、選挙の争点がよりみえにくくなる」と苦笑する。

「ただでさえ、この短期間のうちに総選挙をやるということで、国民は何を基準に選んだらいいのかと考えている。

その上、高市さんがここにきて、恒久的なものと2年限定という違いはあるにしても、野党とほとんど同じことを言い出した。これじゃあ全然選挙の争点にならなくなっちゃう。笑っちゃうようなところもある」

“中道”の結党について、「国民不在、選挙目当ての政治、永田町の論理に終止符を打たないといけない」と批判した高市総理。だが、今回の解散をめぐり、「大義なし、争点が曖昧」という声が高まっているのも確かである。

取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班

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